(つづき)
「内部監査に立ち会って内部監査員を指導して欲しい」という依頼がたまにある。
監査慣れしていない時に犯してしまう過ちには、
○監査計画したプログラムを時間通り実施できない
○監査ではなく指導会になってしまっている
○文書と記録の確認に終始している
などがあるが、恐らくこれが過ちベスト3ではないかと思う。

「被監査部門のここ最近の業務状態を事前にチェックして、想定されるマネジメントの状況を想像して監査にストーリー性を持たせてマネジメントシステムをチェックする」という芸当は相当監査慣れしないと出来ない技(わざ)である。
「被監査部門の雰囲気を和ませる」、「上からの目線で質問しない」、「通常業務の妨げにならないように配慮して監査する」、「密室だけでなく業務の現場に赴いてインタビューを行う」程度は、意識的に行えばなんとかぎこちないのは仕方がないにしても最初から出来ると思う。

「監査での過ちベスト3」に話を戻すと、「文書や記録の確認に終始する」は実は大事なことを見逃す可能性があることに気が付いて欲しい。
何を言いたいのかというと、極論を言えば「存在する記録をサンプリングで確認することは、すでにその時点で、存在しない記録を除外して存在する記録の中からシステムを確認していることになっている」ということなのだ。
「えっ?どういうこと?」とか「何を馬鹿なことを!」という方がいるかもしれないが、「存在する記録」というのは「記入することになんら疑いの余地もない状況に置かれていた業務の記録」なのである。
別の言い方をすれば「仕事が平常心で遂行できる通常状態で動いている時の記録」なのである。
わかりやすい例で言えば、仕事が立て込んでいるときにクレームらしき電話を受けたとする。時間に余裕のあるときであれば、丁寧に対処するかもしれない。しかし、忙しいときに「クレームらしきもの(クレームのようなそうでないような問い合わせ)」を受けたらたいていの人はどうするか。緊急を要さないクレームらしきものはまず、後回しの処理になる。
さらにいえば、そのクレームらしきものは記録もされないかもしれないし、その後、すっかり他の業務に忙殺されて思い出されることもなく処理自体がされないかもしれない。

だから、存在する記録をただ丹念にチェックすることは「通常状態で仕事がなされたときに規定どおりの運用がされていることを担保する監査」にはなるかもしれないが、そうでない場合の運用を担保する監査にはなっていないのである。

最近の例で言えば、「ミートホープ社が偽装肉製造の疑いがあることを告発した情報が農林水産省北海道農政事務所に入り、農政事務所は道庁にその調査を委ねたが道庁にはそのような事実はない」というニュースがあった。
おそらく、この件で存在する記録のみを確認して内部監査としていては、「外部からの情報が適切に処理されるシステムになっていることの確認がなされた監査」とはいえないだろう。
(つづく)

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