それでは「暗黙の要求事項」や「義務、ニーズ若しくは期待」を満たしていないとはどういうものか、具体例を挙げてみる。
誰もが知っている最近の実例で言えば、
○渋谷松涛温泉シエスパの天然ガス爆発事故
○政治家の事務所費疑惑(政治資金規正法)
がある。
【渋谷松涛温泉シエスパ】
渋谷松涛温泉シエスパの天然ガス爆発は6月19日に発生した。
この事故について現在、施設運営会社、温泉掘削会社、施設設計事務所、施設建設会社、メンテナンス会社など関係各社の警察による事情聴取や捜査が行われているそうだ。
事故の真相はここでは置いておくとして、施設利用者や地域住民の立場で考えれば『なぜ、ガス検知器またはガス濃度計が施設には設置されていなかったのか』という疑問がまず沸く。
しかし、関連法規制である「温泉法」では、「温泉掘削時にガス濃度の測定義務」は規定されているが、「施設完成後のガス濃度の測定義務」は規定されていないのである。
つまり「関連する法規制上は業務上の違反がなかった」のである。
しかしこの状況は明らかに『利害関係者の暗黙の要求事項や組織の義務、あるいはニーズ』を満たした状態ではない。
【故松岡利勝氏、赤城徳彦氏など政治家の政治資金収支報告書虚偽記載疑惑】
政治資金規正法の中で、政治資金収支報告書には「1件5万円以上の支出(事務所費、人件費等の経常的な経費を除く)があった場合、その支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日を記載すること」「1件5万円以上の支出(事務所費、人件費等の経常的な経費を除く)については、原則として領収書の写し等を添付しなければならない」と規定されている。
疑惑があるとされた故松岡氏の場合、政治資金管理団体の主たる住所を経費の掛からない議員会館に置いているのに、光熱水費だけで2003年は400万円超、2004年には500万円超を計上していた。
しかし、故松岡氏は「ナントカ還元水」発言に代表されるように「法令に沿って報告をしている」の一点張りであった。
確かに規定に従えば、『経常的な経費は領収書の添付が要らない』ことに法令ではなっているから「法令違反」ではない。
だが、このことは国民(利害関係者、顧客)への説明責任という『義務、ニーズ若しくは期待』を満たしていたとはいえないだろう。
以上、2つの事例を挙げてみたが、このように「要求事項」を「明文化された法令、社内規定、規格など」に限定して内部監査を実施し「規定どおり実施され、記録が取られている」ことのみを確認しても十分な監査とはいえないことが理解できるだろう。
(つづく)
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