しかし、釈明している経営者は仮に100歩譲ってそうだったとしても組織としては『過失』や『行き過ぎ』により問題は発生したとは言い切れなさそうな事実が多く出てきている。
例えば、メタンガスによる爆発事故を起こした渋谷松涛の温泉施設シエスパは、シエスパの建設に関する地域住民への説明会で「ガス濃度の検査」は必ず実施することを約束していたという。
つまりシエスパを運営している「ユニマットビューティアンドスパ」では温泉掘削による副産物であるメタンガスの発生と地下施設におけるガスの危険性を認識していたのだ。
しかし、外部からヘッドハンティングされた宮田社長やシエスパ支配人はガスの危険性は熟知していなかったようだし、組織として危険性を管理した状態にもなっていなかった。
「施設設計会社」、「ビル管理会社(日立ビルシステム→サングー)」に業務を依頼するときの仕様書(メンテナンス契約書)に「メタンガス濃度の管理」はユニマット側から出されていたのだろうか?と考えてしまう。
また、苫小牧のミートホープ社の食肉偽装事件を見ていると1996年に公開された伊丹十三監督の名作「スーパーの女」を思い出す。
この映画では、スーパーの精肉部門で
○入れ残りの食品をリパックして賞味期限を更新して売る
○変色した肉を赤い蛍光灯でごまかして陳列する
○輸入牛を和牛として売る
○肉の仕入れ担当が業者と結託して肉を横流ししてリベートを受け取る
などの手口が紹介されていた。
ミートホープ社の真相が次々と明らかになるたびに、この映画を思い出すし、この会社の偽装は「完全な確信犯」ということがわかってしまい、口をあんぐりするしかない。
しかも不正競争防止法の強制捜査の中で「被害者」と思われていた北海道加ト吉の工場長も社内規定違反で半端加工品をミートホープ社に横流ししていた事実が明らかになってしまった。
ミートホープの田中社長が開き直り発言をし始めたが、
○ミンチ(ひき肉)には何を混ぜても取引先や消費者にはバレない
○消費者はブランドと安さばかりを求めているから表示(賞味期限や産地、メーカー)を変えればいい
と完全に消費者や取引先をなめていたのだ。
田中社長は、中卒で食肉業の叩き上げだから肉の事情に精通していたわけであり、「過失」「出来心」とは言い訳できないし、そういったエキスパートの犯行だから「食に対する信頼感の低下」に対する罪は重い。
牛肉を偽装して補助金を得ていた雪印食品は、市場から退場して行った。
ミートホープ社も経営陣を一層しない限り取引先は大手ばかりだから取引再開はまずないだろう。
それにしても、ミートホープ社と取引のあった加ト吉以外の20社近くの全国的食品メーカーは、取引(購買)するときおよび取引継続中に定期的に製品が購買仕様書(契約書)と合致しているかどうかの衛生面以外の科学的な検査(例:DNA鑑定など公的機関の分析データの提出など)をしていなかったのかと思う。
企業の不祥事が明らかになると「法整備」「罰則強化」など「国や自治体の対策」がすぐ話題にあがる。
確かにそれも重要な改善点ではあるが、消費者、ユーザーサイドから見れば温泉施設でいえば「温泉施設、施設設計会社、メンテナンス会社、メンテナンス下請け会社」、食肉でいえば「食肉卸・加工業者、メーカー、スーパーなど販売会社」がそれぞれ組織が違っても「ひとつのシステム」であり、その「ひとつのシステム」の中での内部チェック機能(内部統制)の改善が一番の関心事だ。
オーナー企業や一部社員の暴走は「1社だけの内部統制の枠組み」では意味がないし、チェックできないのかもしれない。
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