訪問介護最大手のコムスンの複数の事業所が開設申請する際に、勤務実態の無い介護福祉士をサービス提供責任者として虚偽登録し、介護報酬を不正請求したとして青森や兵庫などで指定取り消し処分を受けた。それらを受けて厚生労働省は2008年4月~2011年12月までの間、事業所の新規指定や現在ある事業所の指定更新を認めないなどの処分をコムスンに下した。

この処置に関し、「ルール違反をしたら退場していただく。そういうことです」と厚労省の古都賢一・老健局振興課長は会見で説明したという。
加えて「訪問介護サービスには多様な事業者が参入しているが、全体の質を上げていかないといけない。法令順守は大前提」と強調したそうだ。このことは「法令を順守しない企業は業界大手と言えども退場してもらうよ」という強い国の考えがあることがわかる。

確かにコムスンは勤務実態のない介護福祉士を責任者として登録し届け出るなど法令違反の事実があったし、自治体の監査が入った途中や後で「指定取り消し処分」を受ける前に「廃止届け」を提出して「取り消し処分」逃れをしていた。
しかし、法令を違反してまで虚偽の登録をしていたのは「単に企業の儲け主義の結果」と断罪できない。背景には、 

○介護保険制度の発足後はサービス量を確保するため、国は民間の介護事業者の参入を強く促した。
○介護サービス利用者に対して、介護保険請求の高い過剰なサービス提供をする実態が次々と発覚した。
○厚労省は2006年の介護保険法改正で、介護の必要度の認定区分を細かく分けた。
○2006年の法改正は給付費抑制を目的としており、介護サービスが実質受けられない人が増え介護事業者の経営環境を圧迫した
○介護事業者は採算を度外視して経営せざるをえない状況になった

などがある。
つまり、そもそも国が決めた介護保険制度の制度設計にも問題があると思えるのだ。介護事業者が適正に事業を運営しようとしても、民間では事業が成り立たない制度と化しているという面もあるように思える。
したがって、厚労省はコムスンに対して下した「法令違反に対する処置」以外にも介護保険制度自体の抜本的な見直しが必要だと思う。

コムスンは24時間365日体制の老人介護サービス」を開発し、業界のパイオニアかつ功労者ではある。ただ、法令でケアマネージャー(介護支援専門員)の標準担当件数が決められているのにトップ自らケアマネージャーに対して「新規3件獲得」というノルマを化していて「業務の効率化のみを優先した社内体制」と批判される部分はもちろんある。
このように状況を考えていくと、「介護保険制度を作りサービスを急激に拡大させて、給付額が高騰したら実情を考えずに制度をいじくる国」と「効率優先の誤った民間介護事業者の経営感覚」はどっちもどっちだな、と思う。

制度を作るときは、民間の企業努力ももちろん必要ではあるが、例えば、

『事業所の設置に必要な「ケアマネージャー」は国や自治体が管理して介護事業者に派遣する制度にする』

など民間の不正を未然に防止し、かつ、労働者が適正な事業環境規模で競える制度設計をしなければならない。2006年の法改正の際に介護事業者現場の声が反映されて改正されたのかな、と思うのである。

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