今年3月下旬に日立製作所が製造したエレベーターに取り付けられている5本のワイヤーロープのうち1本が破断していたという。
このエレベーターが取り付けられていたのは23階建ての住友生命ビル(札幌市中央区)。
ビルにはホテルや事務所が入居しているが、ホテル従業員が「異常音がする」とこのエレベーターの保守管理を実施している日立ビルシステムに連絡し、調査した結果、破断が判明した。

エレベーターのワイヤーロープの銅線束はストランドと呼ばれ、JISの検査基準ではストランドの素線15本のうち5本以上に切断や伸びが見つかった場合は交換することになっているが、昨年5月の定期検査では異常がなかったと言う。

この結果を受けて国土交通省は「定期検査などで劣化を見落としていた可能性が高い」として、日立ビルシステムが保守点検する全国の約15万基について緊急点検するよう、都道府県などに通知するそうだ。
ただ、この国土交通省の対応は、「定期検査がいい加減だった」という予測に基づいている。
1)エレベーターのこの機種の設計
2)同時期に製造されたエレベーター
3)同等レベルの使用頻度があるエレベーター
の問題、あるいは
4)法廷点検の頻度の適切性
については言及していないようだ。

もちろん、1)~3)に関しては日立製作所のことだから、この結果を受けて「設計面」「製造面」「使用段階の状況」などを中心に独自の予防処置は実施していると思うが、国土交通省の対応は「保守点検がいい加減・有名無実」とほぼ現段階では断定した予測だ。
まじめに保守点検してきているエレベーターメンテナンスマンにとっては屈辱的な想いだろう。

この4月に六本木ヒルズ・森タワーで起きたエレベーター火災の原因が、切れたワイヤロープのストランドが滑車に接触し、散った火花が原因と分かり、保守点検を請け負っていたオーチスが保守管理するエレベーター4万8953基を緊急点検したら76基がJIS検査基準に適合していなかったと言う。(ロープ破損が61、伸びが15)
不適合エレベーターの割合は約0.16%になるわけで、すべてを「定期検査がずさん」と言えるのであろうか。
法定検査で定められている検査をやっていても必ずしも検査で不良は見つからない、と言うことを指しているのではないかと思う。

住友生命ビルの件に話を戻すと、ホテル従業員の連絡を受けてストランドの破断がわかったのが3月25日で札幌市に報告があったのが約2ヶ月遅れの5月。
報告が遅れた理由を日立ビルシステムは「人身事故以外は行政に報告する義務がないから」と答えたそうだ。
コンプライアンスを「社会的要請に適応すること」と捉えるとこの回答はまったく責任感もモラルもない。

「お上が作ったルールだけを守るのが企業の責務」ではない。
また「お上」も「お上が作ったルールの実情に合わせた見直し」が必要なのだ。
だから、ルール制定時とは違った想定外の結果が出てくるようであれば法定検査やJIS検査基準の見直しが必要だから「法規制を運用している企業からの情報」を温かく吸い上げる体制が必要なのだ。
企業側にも、お上に法規制で決まっていない人身事故以外の問題情報を上げると行政が“検査がずさんだったのではないか”と疑いやぶへびになることを恐れたのだと思う。
「問題情報を受け取った側」が情報を適切に扱うことをわかっていないと、有益な情報は集まらないし、解析もされないのである。

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