札幌市で販売された中国製の土鍋から調理中に鉛やカドミウムが漏洩していたというニュースがあった。

記事のポイントを整理してみると、
1)土鍋を販売していたのはインテリア販売のニトリ(東証1部上場、札証上場)
2)土鍋を輸入していたのはホリシン(新潟県の陶磁器会社)
3)土鍋は2004年から2007年2月までに2万2千個輸入されていた
4)輸入元のホリシンにあった在庫300個は、問題発覚後に自主回収した
5)クレームは、土鍋をニトリ新道店(札幌)で購入した男性が1月に2度に渡り自宅で調理を実施し、土鍋の内側に灰色の付着物(主に鉛)が付着したことからニトリに連絡
(調理方法は1度目が湯豆腐、2度目が鶏肉を約1時間煮込む)
6)ニトリはクレームに基づき検査を実施したところ「煮沸した土鍋から鉛やカドミウムは検出され、食品衛生法に基づく告示基準の17マイクログラム(容器面積1平方センチあたり)を上回る43マイクログラムだったが、未使用の土鍋による再検査では基準値を下回った」と検査結果を回答
7)6)の結果よりニトリは販売に問題はなく、自主回収もしない旨を男性に回答
8)クレームを付けた男性はこの回答に納得がなく、2月に道立消費者センターに調査を依頼
9)道立消費者センターが同じ中国製土鍋を取り寄せて1日約4時間、2日間にわたって水を沸騰させたところ、土鍋の縁のうわぐすりを塗った部分から灰色の付着物が流出した
10)土鍋の縁を蛍光X線検査したところ、付着物表面の約40%が鉛と確認された
11)道立消費者センターは10)の結果を輸入元のホリシンがある新潟県三条保健所に通報
12)三条保健所は、酢酸4%水溶液を同じ中国製土鍋に満たして24時間置き、溶け出た鉛の量を調べる法定検査を実施したところ、水溶液1ミリリットルあたり1.3マイクログラムであり、食品衛生法で定められた2.5マイクログラムを下回るので土鍋に問題はないと回答
13)ホリシンは12)の結果より「基準は満たしているので販売した土鍋の自主回収は考えていない」と回答(在庫のみ自主回収)
14)5月25日に問題が大きくなってきたことより輸入元のホリシンと販売元のニトリは販売された土鍋(IH:電磁調理対応土鍋24センチ:2490円と同28センチ:3490円)の回収を決定

上記より、まず問題の本質ではないがこのクレームを出した男性の行動には感服する。
たいていは、購入したニトリに文句を言って、「購入代金を返金してもらう」、「別のタイプの土鍋と交換してもらう」などで終わりだろう。
つまり、男性がクレームをニトリにあげただけで道立消費者センターに届けなければ、ホリシンが在庫を自主回収することも、その後、ホリシンとニトリが販売された土鍋を自主回収することもなかったし、ましてニュースになることもなかっただろう。

次のニトリとホリシンの対応を考えてみる。
明らかに「責任回避」している。
つまり「食品衛生法で定められた検査を実施する限り基準値以下なので問題がない」という主張だ。
しかし、現実には「自宅で土鍋を使用して調理する条件」では基準値を上回った鉛が検出」されているのだ。
この時点で、消費者に事実をアナウンスする必要があったと思う。

3点目に「三条保健所」の検査方法を考えてみる。
「酢酸4%水溶液を土鍋にいれ、24時間放置して溶け出た鉛を測定」であるが、この方法はあくまでも「法律が定めた検査方法」である。
三条保健所の検査方法(手続き)は、法律の定めどおりではあるが、土鍋の通常の使用条件に近い状態を作って検査しなければ全く検査結果・結論には実質的な妥当性がない。
「市民の健康や衛生を管理する保健所」がこのレベルでは情けない。
その点、道立消費者センターの検査方法は、限りなく通常の調理条件に近く妥当性がある。

コンプライアンスを「法令順守」と訳してしまうと、「法令を満たしていれば問題なし」と責任主体は判断する。
この問題の場合の責任主体は、輸入元のホリシン、販売元のニトリ、公的検査を実施した三条保健所である。
コンプライアンスを郷原信郎先生(桐蔭横浜法科大学院教授)が定義する「社会的要請に適応すること」と捉えるならば、各責任主体は実態を踏まえた対応を取るべきであったと思う。

本来ベストなのは、中国の製造元の製造工程の規定や製造実態を確認してからホリシンやニトリは輸入・販売を決定するべきであったのだろう。
ただ、輸入した土鍋が2タイプあったので仮に平均3000円として、3年間の輸入件数が2万2千個だから売り上げベースで6,600万円になる。
輸入開始当初は売り上げが計画できないだろうから、なかなか現地に出向いて製造工程を確認する費用は捻出できないと思う。
しかし、「購入者が使用する実際の条件下」でのチェックは自主基準として設定してやるべきだったのだろう。
再発防止の観点から、ホリシンやニトリの輸入品を扱う際のルールが見直されたのか気になるのである。

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