また、全体の3割以上になる43施設(53基)では遊具の設置以来、一度も探傷検査を実施しておらず、31施設(50基)では「数年に1回」だけ探傷検査を実施していたそうだ。
記事では、遊具の探傷検査をJISの基準にしたがって実施していなかった施設の主なコメントが以下のように掲載されていた。
○探傷検査に法的義務はないと考えていた(みさき公園・大阪府岬町)
○必要と知らず業者任せだった(ファミリー愛ランドYOU・北海道湧別町)
○2~3年に1度のオーバーホール(分解検査)でよいと考えていた(富山市ファミリーパーク)
これら施設のコメントをどう捉えるかは、「昇降機検査資格を有する施設の経営層が回答したのか」、「昇降機検査資格がない経営層が回答したのか」、「施設管理部門責任者(昇降機検査資格者)が回答したのか」など『どういう立場の人が回答したのか』によって状況は変わってくる。
仮にコメントは「昇降機検査資格の有資格者」が回答したもので、額面どおりの認識だったとするとかなり驚きである。
それは「コースター型遊具の金属疲労と安全管理の技術的知識」である。
昇降機検査資格は、
-昇降機検査資格者試験-
1.昇降機・遊戯施設定期検査制度総論
2.昇降機に関する建築基準法令等
3.建築学概論
4.昇降機・遊戯施設に関する機械工学
5.昇降機・遊戯施設に関する電気工学
6.昇降機概論
7.昇降機の検査標準
8.遊戯施設概論
9.遊戯施設に関する建築基準法令等
10.遊戯施設の検査標準
11.昇降機・遊戯施設に関する維持保全
12.修了考査
の内容で実施されるそうだ。
つまり、資格を得るためにはJISの検査標準の内容だけでなく遊戯施設の機械工学等も学習しなければ取得できない。
要は昇降機検査資格者は「JIS検査標準が法令の義務だろうが、そうでなかろうが探傷検査を1年に1回は実施しないと遊具の安全性は担保できない」と認識していなければおかしいのだ。
JIS標準どおりの探傷検査を実施しなかった理由について施設側に、
○認識はあったが探傷検査の費用が捻出できずに実施しなかった
という理由であれば、法令で建築基準法の検査基準が不明確な部分をJIS検査標準との整合性をはかり明確にし、かつ、点検を専門業者に外注するとしても施設を保有する組織と監督自治体がその結果報告を確実に確認する仕組みの再構築が必要になる。
しかし、昇降機検査資格者に
○分解検査や日常の目視検査、8年に1回(例:エキスポランドの遊具についてメーカーが定めた車軸交換頻度の基準)の定期交換のみで問題ないと認識していた
ということであると、国家資格である「昇降機検査資格」を有するための講習会および取得者の実力は、現行制度のなかで適切なものなのか怪しくなる。
まさか、「機械工学、金属工学など技術的な裏付けデータがあったので必ずしも1年に1回の探傷検査を実施するとは社内規定で規定していなかったし、かつ、JIS検査標準は建築基準法上の明確な検査基準ではないから法令違反にも当たらず実施しなかった」という明確な主張がある施設があるとも思えない。
おそらく今回の遊戯施設の安全管理の問題は、管轄省庁が違う国家が規定したものとして「建築基準法」と「JIS検査標準」が存在するが、「遊戯施設の安全管理」という点を重視した場合、整合性が図られていなかった、という点が大きな問題だったと思う。
ただ、考え方として施設にはその遊具の使用頻度や使用状況、日常の点検・維持管理状況によってなんでもかんでも法令で「これなら絶対に大丈夫」という安全管理基準を設けるわけにはいかない。
そんなことをしたら、施設の状況によっては「過剰管理」になり世の中の経済活動が成り立たなくなる。
だから、遊具施設管理のスペシャリストである「昇降機検査資格」という国家資格が存在するのだ。
しかし、そのスペシャリストが「JIS検査標準が規定する検査内容は知っていたけど、その検査の技術的な必要性を認識していなくても取得できる資格」であったとしたらどうだろう。
もしそうであるならば、資格者講習会や能力考査の方法にも改善の余地があるのだろう。
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