各社が配信しているニュースを要約すると、この顛末はこうだ。
《乳酸菌飲料最王手の「ヤクルト本社」の販売子会社で最大の売り上げ(昨年度は130億円)を誇る「中央東京ヤクルト販売」が昨年7~10月にいったん食料品店などの店頭に並べられ、賞味期限が3~4日後に迫った商品(ヤクルト各商品の賞味期限は14~21日)を回収して短期間で売れるパチンコ店などに再納品していた。
中央東京ヤクルト販売では、昨年より「他勘定」となる賞味期限が迫った古い商品の削減に取り組む活動をしていた。
他勘定の削減は社内損失の削減、廃棄物の削減につながることから、中央東京ヤクルト販売城南支社の発案で社内が一丸となって取り組んでいた。
その証拠に、賞味期限が迫った食料品店や駄菓子店に納品されている商品を販売員が回収し、納品先が商品に張った値札ラベルをはがしてパチンコ店などに再納品する「回収・再納品のやり方」が手順書として規定されていた。
この手順書には、値札ラベルを水に浸してきれいにはがす方法や、はがすことに失敗した場合に「他勘定」とする手順がフローチャートになっていた。
この他勘定削減、廃棄物削減の「成果」を社内発表会(中央東京ヤクルト販売)で報告したところ「お客さまへのサービスとしていい方法ではない」と指摘された。
ヤクルト本社に中央東京ヤクルト販売から報告があったのは5月上旬だった》
顧客の立場で考えた場合、一度別の店舗に納品された商品が回収され「再納品」されていたとなると気分のいいものではない。
例えばレストランで、一度お客さんに配膳した商品が注文ミスであることがわかり、いったん厨房に戻され、直後に私がその商品を注文し配膳されたとなると、なんだかだまされた気分になる。
ただ、この場合、
・衛生的・品質的には問題ない
・注文ミスで他のお客さんに配膳した事実が伝えられている
・値段や飲み物などなんらかのサービスを加えてくれる
などが確実に管理・対応されていればどうかと考えれば、たいていのお客さんは不満足にならないと思う。
お店側に強要されると嬉しくないけど、お客さんが自主的に「廃棄物が減って環境にもやさしい」と考えられるならば、社会貢献した気にもなる。
ヤクルト本社は上場企業だから、「コンプライアンス」の管理手順があり、この事実を販売子会社から伝えられれば、「一般消費者への情報公開」を直ちに行い、「二度と起きないようにしたい」と発表せざるを得ないだろう。
ただ、不二家の件もそうであるが、問題発生以降、現実的には品質に影響がない原材料までもが「賞味期限切れ」扱いされると一斉に廃棄されている。
これはマスメディアや消費者が「賞味期限」という言葉に敏感だからだ。
実際は、品質上の適確な確認をすれば問題は全くないものもあるのである。
話しは少しずれるが、ペットボトルは資源ごみとして回収され多大なエネルギーを使って別の製品に生まれ変わる。
実際は、ビン容器のようにペットボトルも洗浄し、再利用ができる。
その方が技術的にもコスト的にも資源ごみとして回収し、再生製品を作るよりもメリットがあるそうだ。
しかし、それを困難にしているのが「日本人の清潔」に対する意識。
ペットボトルを回収し再利用すると、ペットボトルに傷やきばみが生じるが清潔好きの日本人はこれが感覚的に無理なのだ。
欧米人は合理的だから「雑菌処理されて品質上問題が無い」と理解できれば抵抗感が無い。
話題をヤクルトに戻すが、食料品店のような小売店とパチンコ店など施設内の販売では販売サイクルがもともと違う。
「顧客の心理・感覚」を無視すれば、賞味期限が最長確保されていないと売れ残る場所(例:食料品店)と数日間確保されていれば売れる場所(例:パチンコ店)は販売特性としてあるので「販売管理」、「廃棄物管理」の観点からすれば中央東京ヤクルト販売城南支店の取り組みは画期的なアイディアだし、合理性がある。
問題は、
○日本人の感覚を考慮した顧客満足の視点
○再納品される顧客に対するそのシステムの了解・合意
○回収・再納品時の衛生・品質管理の徹底
などであったと思う。
それにしても「顧客満足」は商売をする上で最も重要な要素ではあるが、日本人の心理・清潔感に対する感覚も徐々に変えていかなければ、大量消費・廃棄社会からの真の脱却は難しいのかもしれない。
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