ペコちゃんポコちゃんのキャラクターで有名な洋菓子の不二家が衛生上の問題が2006年11月にあったのに消費者への公表を遅らせていた問題でゆれている。
衛生上の問題は毎日新聞の報道によると2006年9月に洋菓子事業の再建に向けて設立した構造改革チーム「2010推進プロジェクト」の調査で分かったという。

この不二家の内部調査で明らかになった問題は、
①シュークリーム/約1万6,000個/期限1日切れの牛乳使用
②アップルパイ/約500個/期限最大4日切れのリンゴ加工品使用
③シューロール/113個/社内基準100倍の細菌検出
④プリン/数10個/消費期限を社内基準より1日長く表示
だ。

まず考えてみたいのは、これらのミスは製造段階での知らずに犯した過失なのか、知っていたのに犯した確信犯なのか、である。
新聞報道をもとに調べてみる。

『期限切れの原料(牛乳)を使っていた問題』
1)原料作業の基準を定めた管理マニュアルはあった
2)原料(牛乳)をチェックしていたのは再雇用したベテラン60代男性パート職員
3)原料(牛乳)をチェックする作業は1人作業
4)原料はにおいなどで判断し、問題ないと判断
5)原料(牛乳)を廃棄すると怒られると思った
6)牛乳が余ることは想定しておらず、廃棄方法を規定していなかった
⇒2)人件費のコストダウンよりベテランを再雇用していたのも一般的には妥当な措置
⇒3)作業工程の効率上の問題より1人作業は仕方がない
⇒1)、4)、5)、6)は検証の必要があると思う。

検証のポイントは、「原料作業の管理マニュアルはあったのに、なぜにおいなどで判断したのか」である。
その時の状況を想像してみると、
・ベテラン職員は1日程度の期限切れは製品に問題がないと思っている
・ベテラン職員は社内で決めた管理マニュアルを守る重要性を認識していない
・ベテラン職員は消費者が以前より消費期限の管理に敏感になっているという認識がない
・廃棄すると原料(牛乳)の在庫管理ミスを指摘されて怒られる
などではないだろうか。
まさにKKD(勘、経験、度胸)の仕事のやり方がまだ残っていた。
この辺の状況に関連する仕事の仕組みを改善しなければ、問題が再発してしまうかだろう。

次になぜ公表が遅れたのか?である。
これは、不二家の経営陣による記者会見にもあったように、
・法律に触れる問題ではない
・消費者に発覚すれば雪印乳業の二の舞になる
・稼ぎ頭のクリスマス、年末商戦に影響を与えたくない
などの理由であろう。
しかし、損得勘定で言えば、公表を遅らせてこうして問題が大きくなることよりも、社内調査で問題のあった商品を2006年11月に回収・交換する措置の方が、「不二家は対応が素早い」と消費者から評価されたのではないだろうか。
経営陣の決断力が問題を大きく報道される事態になってしまったと思う。

最後に顧客(消費者)に企業の仕事のやり方や仕組みがきちんとしていると証明する制度についてチェックしておきたい。
顧客に安心感を与える制度としては、ISO9001や14001が有名である。
不二家についてこの制度を統括しているJAB(財団法人日本適合性認定協会)のホームページを調べてみる。

【品質マネジメントシステム(ISO9001)】
・不二家サンヨー株式会社
・株式会社不二家 菓子事業本部、品質保証部、調達部

【環境マネジメントシステム(ISO14001)】
・株式会社不二家 湘南工場
・株式会社不二家 野木工場
・株式会社不二家 埼玉工場
・株式会社不二家 泉佐野工場

2006年6月に細菌が基準値を超えた問題のあった埼玉工場も含めて不二家関連の6事業所が登録されていた。
これらのマネジメントシステムを傍から想像すると、消費者に公表するべき事実が内部で検出された場合に経営陣まで上がる仕組みがあったのかな、と思う。
上がる仕組みがなかったのであれば、マネジメントシステムの構築単位が適切でないのかもしれない。
これらを審査した審査登録機関は、法規制やその他の規範に逸脱した行為を知りえた場合、何らかの処置(問題の大きさにもよるが、通常は不定期監査の実施)を取る必要がある。

世間の多くの人は、1ヶ月もすれば忘れてしまう出来事かもしれない。
しかし、今後の不二家の動向に注目してみたいと思った。