よく言われることであるが「段取りのいい人は次に起こり得ることを予想して行動している」と思う。
「い~や、それじゃ不十分だよ、次の次の次ぐらいを読んで行動しなくっちゃ」という人もいると思う。
将棋の世界では一流のプロ棋士になると、100手ぐらい先まで読んで指しているらしいから確かに「次に起こり得る」ことぐらいでは不十分な世界もあるのだろう。
ただ、日常生活の中ではあまりにも「次の次の次」を読んで行動したり、議論を進めると、周りがその論理展開についてこれなくなり、その行動や発言が「浮く」恐れが高い。
ともかく、「動きが早い」、「テキパキとした行動をする」と感じる人を観察していると、動作レベルで「その次に何をすべきか」を読んでいると思う。
例えば、職場の同僚数人(仮に4人とする)と昼食に行くとする。
たばこを吸う人と吸わない人がいると、段取りのいい人は、
・混雑時に「喫煙お断り」があるお店を避ける
・吸気口に近い方に喫煙者を不快感がないように座らせる
などの行動を取る。
また、その同僚の中に左利きの人がいれば、座席に着くときに
・左利きの人は右側に座らせないよう不快感なく誘導している
さらに、
・料理が運ばれてきたら箸や調味料を中央に移動させるかさっと差し出している
なぜなら、左利きを右側に、右利きを左側に座らせると、箸を持つ手の肘がぶつかり合って食べにくいし、4人掛けテーブルに座ると通常、箸としょう油などの調味料の置場はテーブルの隅っこにあるから離れた席にいる人には手が届かないからだ。
私は飛行機から鉄道への乗り換え、会社が違う鉄道の乗換えがスムーズにできるように動作している。
これは動作の効率化によって時間が短縮される効果があるし、「ゲーム感覚」で日常のさまざまな「ムダな動作」を減らすことを思考するのは結構面白いと思う。
具体的にはどうするかというと、
「前の行動をしているときに次の行動の仕込をする」
これだけである。
つまり、例えば、飛行機や鉄道に乗っているときに次の鉄道の乗車カードや小銭を用意しておくのである。
聞けば、「なんだそれだけか」であるが、案外出来ていない人が世の中多い。
先日も座席指定ができる鉄道の自動券売機で私の前2人のお客さんがそれぞれもたもたしていた。
一人は、「タッチパネルの操作に不慣れ」で「買い終わった後もお財布に入れるまで券売機の前を離れない」もたもたタイプで、もう一人は「そのもたもたを見ている間に財布を用意しない」もたもたタイプだった。
一人目のもたもたタイプである「タッチパネルの操作に不慣れ」なのはまだ仕方がないにしても、「お釣りをお財布にしまう」動作は改善の余地がある。
またもう一人のもたもたタイプは、タッチパネルを操作して最終的にはお金を払わないと発券されないのだから、座席指定後に支払いがすぐできるように財布を取り出しておけば、時短できるはずだ。
この2人合計でおそらく30秒以上はロスしていたと思う。
業務改善を体系的に考える際にはIE(インダストリアルエンジニアリング)の知識と活用が有効だと思う。
つまり、作業を標準化して無駄な動作を一つ一つ排除して行くのだ。
難しい話は省略するが、繰り返しの動作が必要な作業をする場合は、例えば「ネジを部品に取り付ける」という作業を考えてると「ネジの置場と部品取り付け作業をする高さを工夫する⇒標準作業時間の短縮」といったささいなことの積み重ねが工程全体の大きな業務改善につながる。
ちなみに、IEの世界で動作分析する場合「移動中の動作はゼロ」と考える事になっている。
先ほどの券売機の例で言えば、「券売機の前で財布を出す」は「券売機にたどり着くまでに財布を出しておく」を標準動作としておけば、「無駄な動き」となる。
もちろん、私は「マイペースで行動できる範疇」は動作に無駄があってもそれはそれでいいことだと思う。
ぼーっとしている時に新たな発想がわく事もあるからだ。
ただ、日常の行動の中で「動作の無駄」を常日頃から考えることは「行動が俊敏になる」だけでなく「先を読む力」を身につけるトレーニングになっていると思う。