2025年9月16日付のABCニュースが、

『【速報】万博・大屋根リングは「北東200m部分」を保存、周辺を市営公園として整備検討』

と題した記事を報じていました。

 

当初の計画では、万博終了後は、大屋根リングは、跡形もなく解体されると聞いていたので、一部が保存され、公園になるのは、個人的には歓迎です。

1970年開催のExposition Osaka 1970の会場は「万博記念公園」として整備され、私は開催から20年後に会場を訪れることができました。

しかし、当初は解体予定の大屋根リングですから、維持管理を含めた耐用性などは、あまり考慮されて設計されていないでしょうから、ランニングコスト面は大丈夫なのだろうか?と素人的には感じます。

以下にこの記事を引用し、オオヤンリングの一部保存整備に関する期待と課題を考察しました。

 

《記事の引用》

万博会場の大屋根リングについて、2025年9月16日、北東200メートル部分を人がのぼれる形で残した上、リングとその周辺を市営公園として大阪市が整備する検討をしていることがわかりました。

 

これまで万博協会や大阪府・市などは大阪・関西万博の大屋根リングについて、閉幕後、跡地開発の事業者の費用負担で一部を保存したい考えを示していました。

 

ただ、9月16日に開かれた「大屋根リング検討会」では跡地開発の優秀提案に選ばれた事業者らから、人がのぼれる形で保存するには木材の傷み具合などを調査する必要があり、調査は閉幕後にしか実施できないことから「リングの解体期限までに事業者を決定することが困難」という意見が出ました。

 

その結果、市が大屋根リング約200メートルを引き継ぎ、「公園・緑地」としての整備を検討することになったということです。

 

整備や管理の費用は数十億円と見込まれ、大阪市は財源として、万博の運営費が黒字になった場合の剰余金の活用や府・市の予算、経済界への協力を含めて協議を続けるとしています。

(引用、ここまで)

 

《筆者の考察》

<万博大屋根リング一部保存をめぐる動きと背景>

2025年9月16日、大阪市が大阪・関西万博の象徴である大屋根リングの北東約200メートル部分を、人が登れる形で保存する方針を検討していることが明らかになりました。閉幕後は跡地開発事業者の費用負担で一部保存を進める案が以前からありましたが、木材の劣化や構造調査が閉幕後でなければできないことが判明し、期限内に事業者決定が困難であるとの意見が出されました。その結果、市が引き継ぎ、公園として整備する案が浮上したものです。

 

整備・管理費は数十億円規模と見込まれており、財源確保には万博運営費の黒字分や大阪府・市予算、さらには経済界からの協力も視野に協議が続けられています。市営公園として整備する場合、万博閉幕後も市民が訪れやすい公共空間としての活用が期待されます。

 

<期待される効果>

1)レガシーとしての象徴性維持

大屋根リングは万博のシンボルであり、全体を解体すると記憶が急速に風化する恐れがあります。
一部保存することで、1970年大阪万博の太陽の塔のように「次世代に万博の記憶を伝える存在」として機能する可能性があります。

観光資源としても活用が期待でき、将来的には国内外からの来訪者を呼び込むランドマークとしての価値が見込まれます。

 

2)周辺地域の活性化

保存部分を公園化することで、夢洲エリアの再開発や港湾ビジネスへの波及効果が期待されます。

イベントや展示会と連動させることで、継続的な集客を促進できれば、経済効果も生まれるでしょう。

 

3)市民参加型のまちづくり

公園整備は市民が直接利用できる施設であり、維持管理を市民団体や企業と協力して行うことで「市民が育てる万博レガシー」という新しいモデルケースを提示できる可能性があります。

 

<課題と懸念点>

1)高額な維持費と財源問題

恒久利用を前提としていない構造物を残すには莫大な補強費用と継続的な管理費が必要です。

木材はすでに劣化が進行しており、海風や台風など自然条件にさらされる中で安全性を保つためのメンテナンスコストは膨らみ続けると予想されます。

費用負担を大阪市のみが担うのか、国費や関西広域自治体が分担するのかという点も議論を呼ぶでしょう。

 

2)安全性確保の難しさ

集成材で構成されたリングは、本来6か月間の万博期間限定を前提に設計されています。

人が登ることを想定していないため、構造補強や耐久性確保が必須です。

事故が発生した場合、万博そのものの評価を大きく損なうリスクがあります。

 

3)観光資源としての魅力不足

部分的に残しても「巨大な木造オブジェ」に過ぎず、来場者を長期的に惹きつけるコンテンツとして弱いという指摘があります。

太陽の塔のような圧倒的な芸術性や文化的象徴性が欠けるため、将来的には閑散とした施設になる可能性も否定できません。

 

4)長期的な運営モデルの不透明さ

愛・地球博跡地がジブリパークなどで収益化した例があるものの、大屋根リングは単独で集客力を持つわけではなく、維持費を賄う収益源が見えません。

結果として税金負担が拡大し、市民から反発を招く懸念があります。

 

<展望と提言>

大屋根リングの一部保存は、「記憶を残す」か「負の遺産化するか」の分岐点にあります。

実現には以下のポイントが鍵となるでしょう。

 

1)デジタル技術の活用

VRやARを活用してリング全体をデジタルで保存・体験可能にすることで、物理的な維持費を抑えつつ記憶を伝える方法も有効です。

 

2)段階的な費用試算と公開

長期維持費を透明化し、市民が納得できる形で費用負担を議論することが不可欠です。

特に、補強工事や台風対策などの具体的なコストを示す必要があります。

 

3)周辺再開発との一体運営

万博跡地が単なる「公園」に終わらないよう、周辺施設と連携した集客イベントや企業連携を進めるべきです。

例えばポケモンパーク誘致など、強力なコンテンツとの統合が望まれます。

 

<結論>

大屋根リングの一部保存は、市民や観光客にとって魅力的なレガシーとなる可能性を秘めていますが、現時点では安全性・費用・収益性の課題が山積しています。
記憶を残すことと財政負担のバランスを慎重に見極め、物理保存とデジタル保存を組み合わせた新たなレガシーモデルを模索することが求められます。

 

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