ケニー・ロフトン
色々なスポーツを観る私ですが、1番好きな選手は?と問われたら迷わず彼の名前を答えます。
1988年の日米野球でメジャーリーグに興味をもち、映画「メジャーリーグ」の舞台になったクリーブランド・インディアンスが何となく気になり、映画の中でウェズリー・スナイプスが演じたウィリー・メイズ・ヘイズ(快速、センター、細身、ムードメーカー)にそっくりな選手がインディアンスにいる!と知った1993年。
トレーディングカードでしかほとんど観ることができないながらも、リアル・ウィリー・メイズ・ヘイズがいたっ!という驚きで1発で好きになってしまったのです。
ケニー・ロフトン
1967年5月31日生まれ。
アリゾナ大学時代は3年生になるまではバスケットボールに専念。4年生の時には後にNBAで活躍するスティーブ・カーとショーン・エリオットと共にチームをファイナル・フォーに導いています。ロフトンはシックスマンでした。
その為野球での評価は高くなく、1988年のドラフト17巡・全体428位でのプロ入りでした。
メジャーデビューは3年後の1991年の9月。24才の時です。そのオフにインディアンスに移籍し、翌1992年から本格的にレギュラーとして活躍を始めます。
タイトル
盗塁王5回(1992年~1996年)
ゴールドグラブ4回(1993年~1996年)
オールスター6回(1994年~1999年)
ポストシーズン通算盗塁歴代1位 34
通算盗塁622 歴代15位
野茂英雄が先発したオールスターゲームで、見事に三振を取った時の映像で登場します。三振してるのがロフトンです。
90年代のベストリードオフマン。それがケニー・ロフトンです。ちなみに80年代はリッキー・ヘンダーソン。00年代はイチローでしょうか。
ちなみに当時のベケット紙ではロフトンは堂々のListed Starでした。
ロフトンのキャリアの最初のつまずきは1997年。アトランタ・ブレーブスへの移籍でした。
しかし以来怪我がちなシーズンを送り、2001年インディアンスとの契約を終えると、そこからジャーニーマンになります。2002年から毎年チームを変え、2007年に引退するまでに6年間で9チームでプレーしました。
と、書くと30代半ばで衰えが顕著になるよくいるアスリートのようですが、ロフトンは違います。引退するまでほぼ全てのシーズンでレギュラーとしてプレーし、プレイオフにも2005年以外出場しているのです。
2002年CWS→SF WS出場
2003年PIT→CHC NLCS出場(カブスがWS目前で破れた伝説の年。レフトのファウルフライをファンが邪魔したやつです)
2004年NYY ALCS出場(ボストンに3連勝から4連敗した伝説の年)
2005年PHI NL東地区2位
2006年LAD NLDS
2007年TEX→CLE ALCS出場
毎年違うチームに移籍しながらも、ほぼ毎年プレイオフに出場。こんな選手なかなかいません。キャリアを通しても、主力として活躍するようになってから92年、93年、00年、05年の4年しか、プレイオフに出なかった年は無いのです。(94年はストのためポストシーズン無し。しかし中断までは地区1位)
そんなロフトン。40才で引退。

2013年の殿堂入り投票の結果を楽しみにしていた私は愕然とします。
3.2%
1年目で殿堂入りしないことは覚悟してましたが、まさか1年目で資格を失うことは予想していませんでした。
前置きが長くなりましたが、ロフトンがいかに殿堂入りにふさわしい選手だったかを、ロフトンに都合の良い数字をもとに考察してみたいと思います。
ロフトンが殿堂入りできるかどうかを考えていたとき、目安になるのはTim Rainesが選ばれるかどうか、これが1番の目安でした。ヒット数、盗塁等の数値、プレースタイルが近いからです。Rainesはラストチャンスの10年目に殿堂入りを果たしたのです。
また同じ年代で活躍した巧打の選手、Craig Biggio、Roberto Alomarは殿堂入り、長きに渡りチームメイトだったOmar Visquelは年々得票数を上げてます。そして昨年引退したイチローは殿堂入りを確実視されています。
実は彼らと比較しても遜色無い成績を残しているにも関わらず、殿堂入りとは無縁なのです。
まずはセイバーメトリクスのWAR(Baseball Reference)から。
ロフトンは実働17年ながら計68.4、年平均は4を超えます。これはアロマー、ビジオ、を凌駕するだけでなく、イチローをも大きく上回る数字なのです。
こちらはオーソドックスなスタッツです。
ロフトンは前述のとおり大卒、ドラフトも下位だった為、メジャー定着が25歳と遅かったのです。そのため試合数、ヒット数といった「積み上げ」の数値が弱いのが評価が低い要因と考えます。
しかしすぐ下段のイチローと比較すると、ヒット数はかなわないものの、2B、3B、HR、打点、得点の項目でロフトンが上回っています。
もちろんアロマー、ビスケル、ビジオは負担の多い二遊間の選手であることも殿堂入りにプラス材料になっているとは思います。
マネーボール的な観点でも見てみましょう。
ロフトンは打率はイチロー、アロマーに次いで3位ですが、注目すべきは出塁率。レインズに次いで2位なのです。1番バッターとして敬遠がほぼない状況で、この出塁率は非常に評価すべきポイントです。
他長打率、OPSもほぼ遜色ないことがわかります。
盗塁です。総数、成功率、はレインズがずば抜けています。レインズが殿堂入り5%の最初のハードルを越えられたのは、この圧倒的な数値が下支えしていたことと、選手の評価の基準が新しくなり、改めて好選手だったことが数値として明確化してきたことが要因だと思います。しかし意外にもゴールドグラブには一度も選出されていません。
アロマーもセカンドを守り続け、ゴールドグラブ10回、アベレージと長打力(けしてホームランバッターではないが)を稼げる好打者という観点で殿堂入りは文句のつけようがありません。
ビスケルはショートで11回のゴールドグラブは特筆すべきです。しかし、その他のスタッツでは図抜けた数値はありません。なのでビスケルが殿堂入り表彰で52%まであがり、ロフトンが3%なのが納得いっていないわけです。
下記は40歳の時の成績です。
アロマーはすでに引退。ビジオの21HRが目立ちます。ロフトンはヒット数、得点で断トツの数値をたたき出します。
打率、出塁率、OPS、盗塁で断トツです。前述しましたがロフトンは40歳になる年でも主力として契約し、しっかり結果を出し試合に出続けていたのです。
さすがのイチローもヤンキースでの最終年の時で、主力というより、守備固め(40歳で守備固めというのもそれはそれですごいけど)やターンオーバー要因でしたので試合数は多いけど、打席数は減っています。
上記の数値からもロフトンが40歳で引退しなければ、もっと数字を積み上げられたのは明白です。ロフトンはジャーニーマンでしたが、2月やキャンプイン間近に契約がやっとまとまるということはなく、年内、もしくは年明け早々には所属チームが決まっている状況でした。この2017年のオフは残念ながらまとまらず、ずるずる交渉するよりはと、すっぱり交渉を打ち切ってしまったと当時の記事で読んだ記憶があります。
下記は162試合フル出場したらこの数字になるというものです。
殿堂入り選手と比較しても遜色ないのです。
ロフトンのポストシーズンでの通算成績です。
前述のとおり毎年のようにプレイオフに出るチームに請われていたからこその数値です。
イチローが語られるときにマイナスポイントなのが、プレイオフに出るようなチームに在籍していなかったことと、新しい指標での数値が決してよくないことが挙げられことがあります。ただ私はイチロー嫌いなわけじゃないですよ。念のため。大好きです。あんな日本人選手たぶん二度と出てきません。
ただ殿堂入り確実のイチローと比べて、こんなにも優れている選手だったんだぞということが言いたいわけです。
WAR値でロフトンの68.4に近い数値の選手と同時期にプレーした選手です。
そして今年の殿堂入り投票のランキングです。
この選手たちが残っていて、ロフトンが残っていない不条理さ。上にはクレメンスや、ボンズがいます。当時は私も、純粋に超人たちのベースボールを楽しんでいました。でもそんなステロイド時代ど真ん中で、クリーンに戦い続けたロフトンが評価されないのはまったくもっておかしいと。
ベテランズ委員会がいつの日か選出してくれることを切に願っているのです。最近、べインズや、トランメルといった80年台の名選手たちが選出されていることが、一つの光明であることは間違いありません。