ドーナツの穴 | 風の吹くまま

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怪談を語り、ウクレレ漫談で世相を切り、落語を演じる・・・実は「聴き屋」です。

「言の葉」シリーズ続きます。

 

私は全くの無宗教で、お葬式仏教くらいしかわからないのですが、

ほぼ毎朝、向和尚の唱える「摩訶般若波羅蜜多心経」(般若心経)を聞いています。

 

般若心経の訳はいろいろありますが、

その中に出てくる「色即是空」「空即是色」という言葉について、

永さん(永六輔さん)が生前、こんな風に説明してくださいました。

 

 「『色』(しき)というのは、『在る』ということ。

 『空』(くう)というのは、『無い』ということ。

 『色即ち空なり』『空即ち色なり』。

 

 つまり、『在る』ということは『無い』ということで、

 『無い』ということは『在る』ということ。」

 

すごく仏教的というか、哲学的というか、難しいのですが、

永さんは「つまり『ドーナツの穴』」だと。

 

 

ドーナツの穴は、存在としては「在る」けど、それは「無」

 

若い頃にこの説明を聞いて、なるほど、と思ったのでした。

永さんはお寺の子だったので、こういう話をよくされてましたね。

 

余談ですが、村上さん(村上春樹さん)は、こんな風に書いています。

 

 「ドーナツの穴を空白として捉えるか、あるいは存在として捉えるかは

 あくまで形而上的な問題であって、

 それでドーナツの味が少しなりとも変るわけではないのだ。」

 (「羊をめぐる冒険」)

 

確かに。では、いただきます。