昨夜、町はずれのオスタルに着いた時は気力の欠片も残っていなかった。
夕食さえ覚えがない。
K子さんは、朝、不機嫌だった。
「夕べ、若い男女が数人、食事をしてたんやけど…
嫌な予感が的中してもた。夜中まで、隣りの部屋で乱痴気騒ぎや。」
私が、知らずに朝まで眠ったことが、
全く信じられないといった表情だ。
「元気な人は、元気な人で、苦労があるんやね」
「そりゃ、そうや」
素早く、頭の切り替えをしたK子さんが、
私の見ていた地図を覗き込んだ。
「今日が、ラスト・ランになるかもね」
昨日、何かに憑かれたように、山路を、60km近く、
ぶっ飛ばした私は、まだ半ば腑抜けていた。
「うん。夢のようだわ」
元気を出して、腰を上げた。