こんにちは、ジロ(ジロ/Jiro)です!
久しぶりの投稿となりましたが、
皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
今回は、増え続ける「廃校」という社会課題に対し、
その空間を地域の資産へと再生させた事例をご紹介します。
韓国では、少子化と学齢人口の減少により、
学校の統廃合や廃校が年々増え続けています。
2016年に約867万人だった学齢人口は、
2025年には約698万人まで減少し、
わずか9年で169万人以上が減りました。
2025年3月時点で、全国の廃校数は4,008校。
さらに2025年だけでも、49校が新たに廃校となる予定です。
特に地方では、学齢人口減少に加えて首都圏集中の影響も重なり、
廃校の数が顕著に多くなっています。
こうした廃校が活用されないまま放置されると、
地域の安全や景観に悪影響を及ぼす恐れもあります。
そのため、教育当局も廃校の売却・賃貸など、
活用に向けた取り組みを進めています。
そんな中、韓国・昌原(チャンウォン)市で誕生したのが、
廃校を活用した複合文化型図書館
「マサン 知恵の海図書館」です。
この図書館は、年間70万人以上が訪れ、
市の人口の約7割に相当する来館者を集める、
まさに地域再生の象徴的な存在となっています。
今回は、その運営を支える
尹成和(ユン・ソンファ)主務官にお話を伺いました。
マサン「知恵の海図書館」外観
Q1. 廃校を活用して図書館をつくることになったきっかけは?
A:
数年前まで、現在の「マサン知恵の海図書館」がある場所には学校がありました。
2016年に九岩中学校と九岩女子中学校の統合計画が策定され、2017年3月に統合が実施されたことで、旧・九岩中学校の施設が廃校として残ることになりました。
残された校舎と体育館をどのように活用するか検討した結果、
慶尚南道教育庁は、校舎を昌原芸術学校・昌原自由学校・幸福村学校として活用し、
体育館を「知恵の海」として再生することを決定しました。
海に面した地域特性にちなみ、
「無限の知恵をたたえた海」をコンセプトに、
空いていた体育館を地域住民にとって最も価値ある空間へと生まれ変わらせ、
2018年4月に開館しました。
Q2. 前例の少ない試みだったと思いますが、苦労はありませんでしたか?
A:
体育館を活用した図書館という点で、
天井が高く、広くて何もない空間を自由にデザインできたことは大きなメリットでした。
パジュ出版都市の「知恵の森」や、COEXの「スターフィールド図書館」などを参考に空間を構成しました。
一方で、それが課題でもありました。
建物自体が本の重さを想定して設計されていなかったため、
本棚を壁面に沿って配置する形でインテリアを設計しました。
結果的には、それが当館ならではの魅力的なポイントになったと感じています。
[講演の様子(写真提供:マサン知恵の海図書館)]
Q3. 多様なプログラムが行われていますが、図書館としての理念は?
A:
現代の急速に変化する社会においても、
図書館が必要とされ続けている理由は、
単なる知識の保管庫ではなく、
地域住民が集い、交流する文化空間だからだと思います。
放課後の子どもたち、
心のリフレッシュを求める社会人、
それぞれ異なる夢を持つ受験生たちが、
同じ空間に集える場所が図書館です。
図書館のプログラムは、
本・講演・公演など手段は異なっても、
最終的には利用者の人生を豊かにし、
社会の一員として必要な力を育むことを目的としています。

ヒーリングルーム
Q4. 地域コミュニティへの効果はありましたか?
A:
月に一度以上、定期的に人文学講座を開催することで、
共通の関心を持つ利用者が自然と集まり、
利用者同士のつながりが生まれやすくなっています。
人文学講座だけでなく、読書会でも同様の効果が見られます。
一冊の本を共に読み、感想を共有し、
日常の会話を交わす中で、関係性が築かれていきます。
このように、
図書館の講演や読書会は、
知識習得を超えて、
地域住民の定期的な交流と共同体意識を育む役割を果たしています。

マサン「知恵の海図書館」外観
公演の様子
Q5. 地域の芸術家や団体との連携について教えてください。
A:
当館では、定期的に公演プログラムを実施しています。
出演者は主に昌原市および慶尚南道地域の芸術家で、
芸術家の方から直接ご連絡をいただくことも多いです。
こうした舞台提供を通じて、
地域の文化芸術エコシステムの活性化に、
少しでも貢献できていればと考えています。
また、利用者や地域住民が参加する
「広報サポーター制度」も運営しています。
イベント参加やレポート執筆、
プログラム募集時の広報など、
利用者と職員の架け橋として活躍してくださっています。
書架ビュー
Q6. 他地域からも人を惹きつける魅力は何でしょうか?
A:
SNSでは、当館が
「昌原のユニークなデートスポット」
「昌原で訪れたい場所」として紹介されることが多いです。
特に頻繁に投稿されるのが、
3階から2階を見下ろしたときに広がる圧倒的な書架ビューです。
壁一面を囲む書架と天井まで並ぶ本が、
まるで“本の海”のような景観をつくり出しています。
また、一定の生活音を許容した、
従来より自由な雰囲気の図書館であることも特徴です。
カフェを併設しており、
家族連れでも気軽に過ごしていただけます。

こんな雰囲気でしょうか〜?
左から、ウェブトゥーンルーム、ボードゲームルーム、創作空間「オンナ」
Q7. 静かな図書館と複合文化空間のバランスは?
A:
「知恵の海」は、
慶尚南道教育庁の都市再生プロジェクトの一環として始まりました。
従来の公共図書館の枠を超え、
カフェ、展示、講演、公演が共存する
未来型の読書文化空間を目指しました。
1階はテーマ型の空間、
2階は公演と資料閲覧が共存するエリア、
3階は集中読書・学習に適したテラス型閲覧席として、
用途ごとに明確にゾーニングしています。
3階フロアの全景
Q8. 地域活性化への影響をどう感じていますか?
A:
かつては人の往来が少なかった地域ですが、
図書館の誕生により、
人が一日中滞在する場所へと変わりました。
その結果、
周辺商圏にも自然と活気が生まれ、
近隣市場や商店街の活性化にもつながっています。

書架ビュー
Q9. 金海の2号館との違いや連携は?
A:
金海「知恵の海」も、
廃校を活用するという基本方針は同じですが、
こちらは校舎全体を活用している点が異なります。
今年は両館合同で
「夜の海ブックバカンス」というプログラムを実施し、
今後も連携事業を予定しています。
Q10. 他地域へのアドバイスは?
A:
複合文化空間型であっても、
図書館の中心はあくまで「本」と「情報」であるべきです。
設計段階から、
静かな読書空間とコミュニティ空間の動線分離、
防音対策を行うことも重要だと思います。
Q11. 今後のビジョンを教えてください。
開館から7年以上経った今も、
「廃校再生」「旧市街再生」の成功事例として
多くの地域から注目されています。
これからも、
常に新しさと驚きを提供する空間として、
地域の誇りとなる図書館を目指していきたいです。
最後に。
かつては人の足が途絶えた廃校が、
今では一日中人が集い、滞在し、
地域に新たな活気をもたらす場所へと生まれ変わりました。
「知恵の海図書館」は、
単なる図書館を超えた、
地域の誇りであり、コミュニティの拠点です。
今後、他の地域でも
廃校や地域資源を生かした
新たな地域活性化の拠点が生まれることを願いながら、
また次の取材でお会いしましょう。






