依頼人(26)神と仏、神も仏も | IGOSHI・WALKER’s THIS IS ME =井越歩夢は書く語る=

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井越歩夢(IGOSHI・WALKER)

ライトノベル作家・ブログ小説家・AI生成イラスト・AI生成文書技師

そんなこの私のつらつらと思うまま徒然なるままに何か何かを書く語る場所である


霊カウンセラー

黄泉野カレンは悪気を捌く
依頼人(26)神と仏、神も仏も

 

2024年、その海水浴場の海開きから3日目の月曜日。

快晴。とても快晴。何を言いたいか?

 

とても暑い。

 

当然と言えば当然だ。だがしかし、普段自分の進んでしていない新しい体験をすることで、新しい物事を知ることで、そうすることで私自身の世界を見る目に変化は生まれる。

そして、その体験は経験となり私に新しい気付きをもたらしてくれる。

 

それにしても暑い。それは当然だ。

 

季節は夏、そして今私のいる場所は「夏の海」。私は今、友人である梛木ミコトと原アイラの2人と一緒に、ミコトの地元である三重県伊勢市の海水浴場にいる。

ミコトの「海に行きませんか」というメールを見て、海か、暑いし海水のベタベタするあの感覚はあまり好きではないと思いながらも、ミコトの地元である伊勢市、そして太平洋側の夏の海を体験したことのない私には、知らない場所を知るということの有意義さに先日気付いた私には断るという思考は浮かばなかった。

 

そして今である。

 

私は黄泉野カレン。G県N市駅前でヨミノカウンセリング室を営む心理カウンセラーだ。

今日は友人、梛木ミコトの誘いで彼女の地元である三重県伊勢市の海水浴場に来ている。G県の友人、原アイラも一緒だ。

 

それはそれとして、まあまあ覚悟をしてはいたのだが私の予想以上に想像以上に暑く、そしてこれでもかという快晴といううれしくも悲しいこの状況は、この暑さを感覚だけではなく、視覚的にも強調することになっていた。

 

あまりにも暑いため、最初は砂浜にいた私たちだったのだが、今は波打ち際から離れた堤防付近の松の木陰に場所を取り、各々のアウトドアチェアに座ってそしてそこで打ち寄せる波をぼーっと眺めていた。

アイラの持ってきた大きなクーラーボックスの中に入ったたくさんのビールと飲み物。その減り具合はまあまあ早い。

 

当然だ。暑いから。

 

だが日陰に移動した後、30分ほど時間の経過した頃から少しではあるが柔らかな風も出てき始め、暑い中にもまあまあそれなりに快適といえば、それなりに快適には過ごせているのではないかと今は感じられてきたところだ。

 

とにかく暑いという強烈な感覚から、少し解放されたことで私はやっと海にいるというこの状況を感覚的に理解し楽しめる、そんな気持ちになってきていた。

暑いを強烈に感じていた間は気付けなかった海風の、海の空気の持っている独特の香り、あまりに暑くて一度は海に入ったのだが、ここの海水は私の過去の経験、記憶に反しとてもサラサラとした感触、肌触りで不快な感覚は全くなかった。

 

「いい場所ね。」

 

海に向かって右からアイラ、私、ミコトと3人並んで、ぼーっと海を、波を、砂浜を眺めていた私たち。

そんな中最初に言葉を発したのは私だった。

 

「こんなに暑くなるとは思っていませんでしたけど、そう言っていただけてうれしいです。カレンさん。」

 

「近くなら、もっと遊びにきたいところだなぁ。日陰じゃないと暑いけど何というか、すごく気に入ったよ。ミコトさん。」

 

「アイラさん、海の中にいるとき、楽しそうでしたものね。」

 

「無茶苦茶気持ちよかったよ、カレンについてきてよかったぜ。」

 

そんな会話を交わしながら、私はビールを飲み、ミコトは本を読み、そしてアイラはまた海に入ると駆けていく。とまあ、3人3様に今の状況を、松の木の木陰で少し涼しさを感じながら、海の香りとそよ風と海水浴を楽しんでいた。

 

昼も過ぎ、日も西に傾き始めた頃。

 

私たちはまた3人そろって、打ち寄せる波を、海を、海岸線をぼーっと眺めていた。

そこに言葉はなく、ただこの時はぼーっと私たちはただただ海を眺めていた。

 

平和だ。なんて優しい時間なんだ。

 

2024年も後半入りとなる7月。ここまで思い返してみると、また様々な依頼者の話を聞き、新しい気付きや、知らない場所を知る楽しみ、法則化して克服した苦手なもの、元同僚への怒りと一転した和解。6か月の間、いろいろあった。それは私の周りで起こったこと。

そしてミコトも、アイラもそれぞれ私の知らない2024年1月1日から6月31日を持っている。

何と言う前触れもなく、私たちはお互いの2024年上半期の出来事を語り合い始めていた。

 

そんな流れの中、私たちの話はどういう訳か「今をどう見ているか」という話に、思わぬ方向へと飛躍しそして続いていくこととなった。

 

その会話の内容というのは、結論を言ってしまうと「世の中、なかなか良くは変わらないね。」という話だった。

 

本当に、どうしてこんな話に飛躍したのか、その流れを追うのは余計にこの話題の深みにはまってしまいそうに思い、その点については私は考えるのを止めることにした。

 

だが、今私たち3人の間の話は、明らかに今ここで話す話題なのか?ということだ。

 

何故私たちは、海水浴場で、水着で、ビールを飲みながら、「昨今の世界の政治、経済論」を語り合っているのだろう・・・

 

確かに、私の依頼人から聞いている話の根源にあるそれは今の社会の難しさとは思う。

まあまあ新聞を読むことを趣味としている私なのだが、まあまあ様々な問題、問題、問題を目にしそしてこの記事に隠された「誰得」を考察すると、まあまあ嫌な話、嫌な話、嫌な話に辿りつく。正直、何か大きな変化の波と言うそれがあったとしても、世の中は何も変わらない。そんな中で私たちは、現代を生きる人々はどう生きていくか。

 

とりあえず一つ私は、これは確実に言えそうだなと思っていることがあった。

 

それは、今と言う時代は、組織に属したとしても、また組織に属さないとしても、個人個人が何らかの生きる術を持たなければならない社会である、ということだ。

 

ただ、ここに私は一つの憂いを感じている。良い意味であっていい人と人とのつながり。今まででもそれは徐々に、そして時に急な勢いで薄れつつあると私は感じている。

 

そしてそれを思わず二人の前で言葉にしてしまった。

 

「神も仏もない世の中ね。」

 

そう、静かにボソッと出たその言葉は、2人の様子を2.3379秒ほど固まらせていた。

 

そして、二人から私は軽く冗談めいたお叱りの言葉をもらうことになった。

 

「お前が言うなよ、カレン。」

 

「ほんとですね、アイラさん。」

 

「だよなー、ミコトさん。」

 

まあ、2人にそう言われて当然か。

 

何故なら私たちの本当の仕事は、心理カウンセラーでも、探偵でも、巫女でもなく・・・いや、まだそれを明かすには早いか。

 

それからまた時は経ち、着替えを済ませた私たちは帰る準備を済ませ、最後に再び海を見に砂浜まで降りてきた。

 

 

太平洋側の海。海に沈む日を見ることは出来ないのだが、なにかこの風景に、今見ている夕暮れの海に私は何か少し、なんだろう、多分文字にするなら吸い込まれそう、そんな気持ちになっていた。

 

「今日は誘ってくれてありがとう、ミコト。」

 

「いえいえ。お二人こそ、遠いところまで来てくれてありがとうございます。アイラさんも今日は運転ありがとうございました。」

 

「大丈夫、俺運転好きだし。今度はミコトさん、N市に来るとかどう?なあ、カレン。」

 

「そうね、ミコトにはアオイさん、シンジュさんにも会ってほしいし。私の部屋に泊まってもらっても大丈夫だから。」

 

「ふふ、そうしましたら、忙しくなる年末前にお邪魔させていただこうと思います。その時はまたよろしくお願いしますね。カレンさん、アイラさん。」

 

「もちろん、ミコト。」

 

「待ってるぜ、ミコトさん」

 

そんな会話を交わし、そして私たちは駐車場に止めてあるアイラの車、フォードクラウンビクトリアに乗って帰路に就くことになった。

ミコトを自宅まで送り、そして伊勢自動車道に乗って伊勢湾岸自動車道、刈谷ハイウェイオアシスで夕食を取り、そこからG県N市へとアイラの運転する車は「いいペース」で走って行った。

 

車の中でのアイラとの何気ない会話。

今日という一日の終わり。夜の始まり。

そして、夜を超えまた明日はやってくる。

 

これといって良く変わらない世の中の変化に、少しだけでも良い変化の進むことに期待を持ちながら、私は、いや、私も、アイラも、ミコトも。アオイさん、シンジュさん、レイア、そして私の跡を継いでくれそうなあの子。

 

私たちはこの世でお互いのできることを出来る範囲でやっていく。

 

いずれ来るその時まで、それは続いていくことだろう。

 

願わくば、その未来に希望があることを祈ろう。

 

 

 

ヨミノカウンセリング室

某都某市駅前

13時〜20時(メールにて要予約)

定休日 毎週月曜火曜

カウンセラー 黄泉野カレン

 


 

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