依頼人(25)偽物の免罪符 | IGOSHI・WALKER’s THIS IS ME =小説家・井越歩夢は書く語る=

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井越歩夢(IGOSHI・WALKER)

ライトノベル作家・ブログ小説家・AI生成イラスト・AI生成文書技師

そんなこの私のつらつらと思うまま徒然なるままに何か何かを書く語る場所である


霊カウンセラー

黄泉野カレンは悪気を捌く
依頼人(25)偽物の免罪符

 

免罪符。元々はローマ・カトリック教会が罪の償いが免除されるとして発行した証書。

現代では、この言葉は比喩的に使われることが多く、特定の行為を正当化するための「言い訳」や「逃れ道」としての意味合いで用いられることがある。

 

私は、何かどこかで聞いた「自称健常者」と呼ばれる人々の使う所謂「普通」という言葉をとても苦手にしている。

 

それは「証明できない普通」を正当化するため「普通こうである」という言葉を使う。そう、自己を正当化するための言い訳や逃れ道として「普通」という言葉を用いる。

 

そしてそれを使うことで自称健常者たちは、自らを「普通の人」と認識し自身を安心させているのだ。

 

私は世間一般大多数と同じであるという安心を。

 

私は黄泉野カレン。某国某都某市駅前でヨミノカウンセリング室を営む心理カウンセラーだ。

木曜日の朝、私はいつものように朝食を取りながら趣味の新聞を読んでいた。

これを、新聞を世の中で起きている物事を知るためのものとは思ってはいない。そう思って見ては、読んではいない。

以前にも語った通り、私にとって新聞は「エンタメ」。そこに書かれている物語を読んで楽しむ。言ってしまえば架空の物語と同じ目線で読んでいる。

そして考える。「この記事の広まりはいったい誰のためになるものなのか、この記事の広がりでいったい誰が得をするのか」を。

 

 

そしてなぜか今日は、ここ数年のこの紙面に記された物語たちのことを、ここ数年分過去にさかのぼり思い出し、そして考察し、考察し、考察した。

 

結論は、「社会は優しいのだが、人は社会を厳しくしている、厳しくなるよう作り変えている。」だ。

そしてそれを行っているのは、私は普通であると自称する者たち。所謂私の苦手な者たち、「自称健常者」たちだ。

彼らの中には、自らの言葉に世間一般大多数の意見であるという「普通はこうする」を付け加え、いかにもそれを世間一般大多数の意見であると、そうであるという言葉を、偽装を、彼らは上手に使っている。

そしてそれがいかにも世間一般大多数の意見であるかのように、印象付け、印象付け、印象を付けて、そして時間を使って本当にそれを世間一般大多数の意見であることにしてしまう。

こうして自称健常者たちは「安心」を得る。そして厄介なことに、彼らは安心を得ると今度は別の不安を探し、そしてそれを繰り返すのだ。

 

そして社会は、厳しくなっていく。

 

思い返すと昔、時代は大らかだったなと。長いこと様々な悩みや不安、そういった話を聞いてきた私なのだが、昔は今ほど相談を受ける数も少なく、私は別の仕事を持つことで生計を立てて過ごしていたほどのそんな時代もあった。

今はこの仕事、カウンセラーという仕事だけで十分生計をたてられている。だがしかしそれはそれだけ今という社会には多くの悩みを抱え、悪気に取りつかれている人々というそれが多くなっているということなのだと、まあ確信に近い推測を私はしている。

 

免罪符。現代では、この言葉は比喩的に使われることが多く、特定の行為を正当化するための「言い訳」や「逃れ道」としての意味合いで用いられることがある。

自称健常者たちはこれを使って、自らの主張する世間一般大多数という統計に基づかない、明らかでない、不確かな幻想を正当化する。

そして優しい社会はどんどん厳しい社会へと、社会ではなく人間の手でそれを厳しい方向へと梶切りし、進んでいく。

 

こうなってしまうと、もう、ねぇ。

 

まあ、私に関係のある小さくも大きなことと言えば、気楽に煙草を吸える場所、少なくなったなというところなのかな。

まあまあ、その経緯については承知の上ではある。だがしかし、なんというか、これも世間一般大多数、煙草を吸わなくなるという流れを作られてそして長い時間をかけて、それが本当にそうなった、その例の一つだろう。

 

そして自称健常者たちの次のターゲットは「酒」らしいという話をどこかで私は聞いている。

 

これから彼ら自称健常者たちは長い時間をかけて、酒を規制する世論を作っていくことだろう。

 

なんというか、一部の言う世間一般大多数という幻想のために私の楽しみ、週末の酒という楽しみに影響を及ぼすことになったときは・・・その時は、地元に帰ろうかな。

 

そして、元の会社に復帰することもそれはそれで悪くないのかもしれない。

私の思うそれを、元職場ではできないと判断し、その思いのために独立を決意して、この世で過ごしている中、私は思った。

 

この世にも抵抗しきれない世相の流れは確かに存在するのだと。

 

ただ、そんな時が来るまでに私にはやらなければならないことがある。

 

このあと何年か先、私のすべてを打ち明け、彼女が私の後継者になれることを確信できるその日まで。

 

だから、それまでこの某市駅前という土地で今というこの時間を楽しめばいいのだ。

そして事実、私はこの某氏駅前という土地をとても気に入っているのだ。

 

ん?メールが入っている。これは、ミコトから?

 

「件名:海に行きませんか」

 

その内容を読み終わった私は、ほっと一つ溜息を吐いた。

そうね、知らない場所に行って息抜きすることも大切だとこの間教わったことだし、この誘い、乗りましょう。

それとせっかくだ、アイラにも声をかけてみよう。

 

私はミコトからのメールに、「いいよ」と「友達を連れていく」と返信した。

 

「海かぁ・・・」

何年ぶりになるのだろう。そして、ミコトの地元、伊勢に行くのも何年ぶりだろう。

 

モヤモヤした思いを払拭し、久しぶりの海に触れる機会を楽しみにしつつ、私は今日の仕事の準備に向かった。

 

さあ、今日もかかってきなさい、この世に巣食う「悪気」たち。

 

 

 

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某都某市駅前

13時〜20時(メールにて要予約)

定休日 毎週月曜火曜

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