噂話がサピエンスを進化させた?

人類史について本を読んだり、関連動画を観たりするのが好きなLobyです。
今、ユヴァル・ノア・ハラリ著の『人類史ー文明の構造と人類の幸福』のポルトガル語版を読んでいます。

『サピエンス全史』(原題: Sapiens: A Brief History of Humankind)は、ユヴァル・ノア・ハラリ著の壮大な人類史で、「認知革命(虚構を語る力)」、「農業革命(定住と人口増加)」、「科学革命(現代社会の基盤)」という3つの革命を通じて、ホモ・サピエンスが地球の支配者になるまでの道のりを、生物学、歴史学、人類学の視点から解き明かし、現代社会の根底にある「神話」や「虚構」の力、そして幸福とは何かを問いかける物語です
著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏はイスラエル生まれで、ヘブライ大学、英国のオックスフォード大学で中世史、軍事史を学び、2002年に博士号取得。 現在、ヘブライ大学教授、英ケンブリッジ大学特別研究員を務めている。 「サピエンス全史」は世界60カ国以上で出版され、2500万部以上(2024年時点)売れたと言われる大ベストセラーです。
日本語版が欲しかったのですが、どうも新本は(発行されてからかなり経つからか)ないようなのであきらめ、ポルトガル語版を購入することにしました。
『サピエンス全史』の日本語版は入手できませんでしたが、代わりに『人類の起源: 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』をサンパウロ市の本屋さんに注文しました。
『人類の起源:古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」』は、古代DNA解析技術の進歩を背景に、アフリカで誕生したホモ・サピエンスが世界に拡散した過程と、その過程でネアンデルタール人やデニソワ人といった旧人との交流があった事実を、最新の研究成果に基づいて解き明かす物語です。著者の篠田謙一氏が、人類学の第一人者として、遺伝情報(ゲノム)を手がかりに「私たちはどこから来て、何者で、どこへ行くのか」という根源的な問いに迫る内容で、特にアジア集団の多様性や日本列島集団のルーツ、そして新大陸への到達など、具体的な「大いなる旅」の軌跡を辿ります。
『人類の起源~』と著者で国立科学博物館の館長を務める篠田謙一氏

Lobyは、このような学問にも興味があり、左のような本も以前購入したことがあり、この本も大へん興味深い内容でした。
『DNAでたどる日本人10万年の歴史』は2008年に刊行された本で、日本列島の類まれな遺伝的多様性が、アフリカから出た人類が縄文人として定住し、その後大陸から渡来した弥生人(東アジア系)**と混血することで形成された、という人類の移動と文化の歴史を、DNA分析(Y染色体など)、考古学、言語学の知見を統合して解き明かすものです。日本列島は多様な集団が共存し、豊かな文化を生み出し、現代にまでその多様性が受け継がれている意義を問いかけ、その過程で「縄文度」の高い地域(沖縄、東北など)の存在も示唆されます。(アマゾンの紹介文より)
著者の崎谷満(さきたに みつる、1954年-)。京都大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。長崎大学、京都大学での研究を経て、1997年にCCC研究所を設立し、所長に就任。以後、分子生物学がもたらすヒト集団の成立史の客観的分析に中心をおき、遺伝子のみならず言語学、考古学を統合して学際的解明に取り組んでいる方です。
Lobyが人類史に興味を持つ理由は、アフリカに誕生した初期の人類(猿人)は、原人→旧人(ネアンデルタール人など)→ホモ・サピエンスに進化し、世界中に拡散し、文明を築き上げてきたわけですが、どのようにしてホモ・サピエンスだけが、ほかのヒト属を圧倒して生き残ったのかを、生物学的・文化・社会的な視点から解き明かしてくれるからです。
今呼んでいる『サピエンス全史』の最初の方に「ホモ・サピエンスの何が、ほかのヒト属であるネアンデルタール人、デニソワ人、ホビットとして知られるホモ・フローレシエンシスなどより優れていたのか?」と問いかけ―
従来は、その理由として、①直立二足歩行による環境適応、②脳の大型化、③そして高度な言語能力や認知能力の獲得、④石器技術、⑤複雑な社会性、⑥道具の改良、交易・交流による知識の共有などが複合的に作用したためなどと言われて来ましたが、①から④までは、ネアンデルタール人やデニソワ人もほぼホモ・サピエンスと同じ能力&技術を持っていたと言われています。
ハラリ氏は、本著の中でその答えとして二つの仮説を挙げ、その一つがホモ・サピエンスは優れたコミュニケーション能力を持っていたことが、他のヒト属を凌いで唯一生き残ったヒト属となったとしているものです。
類人猿などは、多種類の音(声)を出して、危険を仲間に知らせたり、食べ物のある場所を教えたりしますが、これは類人猿やヒト属の専売特許ではなく、ミツバチもダンスで仲間に蜜源(蜜や花粉)の場所を教えるし、イルカやゾウなども高度なコミュニケーション能力を持っていることが知られています。
そして二つ目の仮説として挙げているのが、ホモ・サピエンスの発達したコミュニケーション能力は、それによって“世界で起こっていることの情報”を仲間と共有できたからだと言うものです。
そして、その“世界で起こっていることの情報”は、恐ろしい大型肉食獣の情報ではなく、人の情報だったというのです。

この仮説によると、ホモ・サピエンスの言語能力が発達・進化した原因は、こうした仲間内の間で起こんばわれていた噂話―人と人との間の情報交換ーだとしています。この仮説はホモ・サピエンスの本質を社会的動物と定義し、社会的協調性はホモ・サピエンスの存続と子孫を残すために必要不可欠なものだったというのです。
ホモ・サピエンスの集団の中での会話は、脅威であるライオンの居場所や食料となるバイソンの居場所だけでなく、仲間の中で誰が誰を嫌い、誰が誰と寝ているか(男女の関係)、誰が正直者で誰がウソつきかなどの情報が交換されたのです。
この噂話によって、みんなから嫌われる者や見境なく誰とでも寝る者、仲間に損をあたえるウソつきなどは集団から追い出され、共同生活を尊重し、仲間との関係を尊重し、獲物を仲間と正直に分けることができる者だけが集団で暮らすことを許され、それにより集団はさらに団結し、力を持ち、噂話をしなかった(であろう)ネアンデルタール人やデニソワ人より、生存率を高め、狩猟・採集エリアの争奪戦でもネアンデルタール人やデニソワ人たちに勝ち、彼らを滅亡に追いやったというのです。
新石器時代のホモ・サピエンスの集団生活の様子。食料生産を学び、定住地を築き始めた時代である。

この説は、Lobyにとってまさに目から鱗でしたね。
ネアンデルタール人、デニソワ人の身体能力はホモ・サピエンスより優れ、脳もネアンデルタール人やデニソワ人の方が大きかったと言われています...
だけど、ネアンデルタール人もデニソワ人も、遺伝子の数パーセントを現生人類に残したまま消滅してしまっています。
主要な混合は、およそ 4万年から6万年年前に、初期のホモ・サピエンスがアフリカの外でネアンデルタール人と遭遇したときに発生したとされており。一部の研究では、大規模なイベントは約 4万7,000 年前に発生したと指摘されています。
カリフォルニア大学バークレー校の分子細胞生物学の研究では、ヨーロッパとアジアの古代現代人(ホモ・サピエンス)のDNAを新たに分析した結果、ネアンデルタール人が現代人と交配していた期間が、これまで以上に正確に判明した。交配期間はおよそ5万500年前に始まり、ネアンデルタール人が絶滅し始めるまでの約7000年間続いた。(UC Berkeley News)
ハラリ氏の『サピエンス全史』初版発行が発刊されたの2011年なので、現在の遺伝子研究の進歩から見て、10年経てばさらに大きく進歩し、上述の研究結果のような新たな発見も続々とされているので、今後さらにこれまでの定説が塗り替えられるかも知れません。
カリフォルニア大学バークレー校の研究結果を見て、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は、訳7000年間というけっこう長い期間― 約700万年前に出現した猿人や20万年前に誕生したホモ・サピエンスの歴史ー から見ると非常に短いかも知れないけれど、共存した時期があったというのを知って、Lobyも少しほっとしました。

なぜなら、ハラリ氏の『サピエンス全史』を読んでいて、ホモ・サピエンスは(現代人と同じく)好戦的で、生存競争相手のネアンデルタール人やデニソワ人を戦いで滅ぼしたかのようにイメージしていたからです。(地域的、単発的には争いが起こったかも知れませんが)
今年は投稿も少なく、みなさまのブログもロクに訪問しませんでしたが、来年はもう少し頑張って投稿&訪問をしたいと思っております。
今回の投稿は今年最後となります。

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