父と一緒に楽しく遊んだ記憶が無い。
キャッチボールをするとつまらなそうにしてるし、買ってもらったトランシーバーで遊ぼうとして父に渡すと、使い方が分からずボタンを力任せに押すものだから、壊れて一回も通話しないで終わったり。
そもそも物心がついて初めての父との記憶が、私に言うことを聞かせようとして力任せにつねられている場面なのだから、こちらも父を拒絶していたからなのか。
私が小学5年生の頃、社会の授業か何かで電車を調べることになった。それがなぜか父の耳に入り、二人で最寄りの西金沢駅に自転車で向かった。
正直父と二人では会話が弾むはずもなく、まして私から話しかけることなんてしなかった。
ひととおり駅や電車を見たあとで父が駅前のスーパーに行こうと言った。
なんの用事かも分からず着いて行くと
「何でも好きなお菓子買いまっし」
と言った。
当時、おやつを買ってもらえるのは一大イベントで、駄菓子屋ではなかなか買えない高額商品(50円以上)を選べることに舞い上がったのだが、父に気持ちを伝えることに慣れていない五年生のボクは色んな感情がないまぜになり頭の中がグワングワンした。
とりわけ好きだったお菓子が今もロングセラー中のジャイアントカプリコ。
ソフトクリームのコーンに詰まった、気泡がたっぷりのチョコの食感が大好きだった。
父に好物を伝える気恥ずかしさと、買ってもらう行為に対しての甘えてしまう感情に若干の受け入れにくさを内包しつつ「これ」と指をさして父に伝えた。
すると父はそれを手に取り、それだけを持ってレジで会計を済ませた。
あっ 自分の為だけに父が行動してくれたんだ。
それに気付いたボクだったが、気恥ずかしくてありがとうは言えずじまいだった。
あれから何十年も経ち、今度は自分の子供におやつを買ってあげるようになったが、父もこんな気持ちでボクにおやつを買ってくれたのかなと、たまに思い出す西金沢の出来事だった。
父に買ってもらったジャイアントカプリコは今でも大好きです

