早期胃ガンだって告知された時、もちろんショックだった。

でも、それよりもじわじわとボディブローのようにダメージがあったのは手術してガンと胃を切除した後の生活。

胃を切除するとどうなるのか。
全然知らなかった。

脂っこいものとかがダメになるくらいだと思ってた。
焼き肉やラーメンが食べられなくなるのかな、なんて思ってた。

そうじゃなかった。

人間、面白いもので「食べると体を壊す物」はすぐ嫌いになる。

チョコ、スナック菓子、焼き肉。

大好きだったので、何度か食べた。
食べたら体が負けた。
今はもうあまり食べたい。
食べたいと思わなくなったから。

今まで当たり前にできていたことができなくなる。

予測してなかったことが自分の体に起きるようになった。

水分取らずに歩きまわると両足がつる。
血糖値が下がりすぎると頭痛や冷や汗、ひどい時は錯乱状態に。

でも。
それでも。

なぜそうなるか。
胃ガンができて、それと一緒に胃を切って、いま胃の4分の1しかないから、こうなってるんだ。

そうわかる。
そして、他人にもそう言えばすんなり受け取ってもらえる。

「胃ガンってなに?」
「どうして胃ガンになるの?」
「親のしつけが悪くて胃ガンになったの?」
「えー、胃ガンには見えない」
「ほんとに胃ガンなの?」
「胃ガンだからって甘えるの良くないと思う」

こんなこと聞かれないし、言われない。

いちいち自分の体に何が起こってるのか説明しなくても流してくれる。

私自身も。

胃の大部分を切除したことはすんなり受け入れられたのに、脳の神経伝達に不具合があるだろうってことをなかなか受け入れられなかった。

受け入れるのにずいぶん時間がかかった。

なぜか。

日本でのADHDグレースタイルの生活がどういうものか、全然わからなかったから。

じゃあ、自分で作ろう。

そう思った途端、スパークした。
ドーーーン!と大爆発。

色んな夢や願望が後から後から溢れだした。
ライフオーガナイザーとしての活動も、バキッと進むべきビジョンが見えた。
クリアに、強烈に、輝くビジョン。
ああ、楽しそう。
これだ!
これだよ!

興奮した。
大興奮だった。

そして。

その反動で、

落ちた。

いつもそうだ。

アクセル全開にすると、ものすごく強いブレーキがかかる。
この自分を止めようとするブレーキをゆっくりとゆるめる。

しんどかったわ~。

なんかこう「今までやってきたことが無駄だった」って思っちゃったんだよね。

やっと最近落ちついた。

自分がADHDグレーだと認めることは、今までのやり方全部を捨てることじゃない。
使えるやり方は使っていこう。
でもって、より自分に合ったやり方を身につけよう。

そう思えるようになった。

私は今日も子供のような好奇心に集中力、老人のような忘れっぽさと記憶力で、成年としての役割をこなしている。