近くの映画館でパーフェクトデイズが上映されていたので、見に行ってきました。


(写真は関係なく、ピークディストリクトで撮ったもの)


パーフェクトデイズは2023年に上映開始されて、現在はAmazon Primeで見ることができるようですが、悩みに悩んだ結果、映画館で見ることにしました。

周りのいろんな人が素敵な映画だったと言っていたので、どうせなら集中できる環境の映画館でと思って、シェフィールドのショールームシネマと言う少しニッチな映画を扱っているような映画館に初めて行ってみました。



10年前、カーディフに留学していた時は、学生料金で3ポンドで映画が見れていたのに、今はもう大人料金で12.5ポンドもしました。インフレ!!!


パーフェクトデイズはドイツの映画監督Wim Wenders、主演役所広司で日独共作で、映画を見ると日本人が見落としがちな、日本ならではの些細な日常が、きちんと切り取られて、しかもさりげなく散りばめられていて、そのシーンひとつひとつが美しいなと思いましたが、それはドイツとの共作だったからなのかなと思います。


以下やんわりネタバレ含みます↓


まず映画全体の感想として、とても良かったです。特に役所広司さんの演技がとにかく上手で引きつけられました。


おそらく開始10分ぐらいまでは、一言もしゃべらず、無言な男性の役なので、その所作、演技だけで話が進んでいくのですが、それも飽きずにどんどん引き込まれていくのが面白かったです。


シェフィールドの映画館で見たので、もちろん周りはイギリス人の人が多かったです。おそらく1人で家でAmazon Primeで見ていたら、完全に自分だけの視点で映画を見ていたのですが、映画館にいると周りの人がどんなふうにその映画を見ているのかなというのも自然と気になりました。


映画館の空気感としては、みんな集中して見ていたんですが、ほぼ無言なのでリアクションをしているところがあまりありませんでした。というのも、一昨日、Wickedを見に行ったのですが、もちろんいつもイギリス人は結構映画館ではオーバーリアクションで笑ったりよくしているんですが、この映画は全体的に静かなので、あまり笑う箇所というのもなく、みんな真剣に見ている感じでした。その中でも音楽が流れるシーンは結構体を揺らして楽しんでいる人が多かったのと、後から見ていて思いました。というのも音楽だけは9割方洋楽が流れていたからかなと思います。


大体ドライブをしている時に音楽が流れていたのですが、それと同時に運転中に見える車からの景色、東京の街並みとか人々の生活とかが切り取られていてで、特に日本の文化、ほうきで落ち葉を掃いている姿とか、人力車とか、自動販売機とか、ETCとか、そういう小さな小細工が散りばめられてて、日本でもし見ていたらあまり新鮮味はなかったんですが、イギリスで観るとイギリス人にとっては新鮮な風景なのかなぁと思いながら見ると自分にとっても新鮮に感じられました。


それから少しだけ笑えるような場面もあったんですが、笑うツボがちょっとずれてるなぁと周りと感じる部分がいくつかあって、これはあくまで私の所感なのですが、私がイギリスのドラマを見る時、笑いのツボがイギリス人と違うと感じることが多いのですが、今回は逆に日本の映画を観てる時、イギリス人の笑いのツボが違うんだなっていうのも感じました。ただ私のツボが違うだけかもしれませんが…

例えば、役所広司さんと三浦友和さんが影を合わせて濃くなるかって言うようなシーンがあって最初笑ってるんですが、ちょっと表情が変わって少し真剣になって行くんですが、その真剣なセリフの時も笑っていて、あまり伝わってないのか細かなニュアンスや顔の表情がわかりにくかったのかなぁと思いました。


映画としては展開が少しスローで全体的に静かですし、特に衝撃的な出来事が起こるわけではない。ただただ日々の生活を綴っていくと言う映画なので、私、個人的には事前に映画の内容を知っていたし、そういう映画も好きなので、飽きたりはしなかったのですが、映画館の中には少し途中で飽きてきたのかなあと思う人、携帯をチラチラ見てる人が何人かいたりしました。アクションが好きな人とかは苦手なのかなと、人それぞれだなと思いました。


個人的には大きな美術館を1部屋1部屋回って、アート作品を見ているような感覚になりました。かなり見ごたえのある映画でした。陽の光木や植物にフォーカスいるシーンがいくつかあったりしたのも、アートっぽくてとても良かったなと思いました。


それからさらに非常に個人的な感想なのですが、最近話すことに対して、ものすごくストレスを個人的に抱いていてと言うのも周りのイギリス人がものすごくChattyで、社交的で、その環境があまり自分に合っていないなと感じていて、というのも、自分自身が話すのが苦手で、さらに誰から言われたわけではないんですが、社会全体として社交的ではないといけないみたいなプレッシャーを日々職場で感じていて、しんどいなぁと最近感じていました。


日本語ならば、まだ話も理解できるんですが、イギリスだとどうしてもテレビドラマの話とか、昔の幼い頃の話とかそもそもその話の背景がわからなくて、話に入っていけなかったり、アクセント聞き取れなくて何度も聞き返してぎこちなくなったりすることが日常的に起きて、それが積み重なってストレスになっているのもあると思います。


さらに今在宅ワークで週3回は家で働いていて、特に誰とも話さないので、日本語も英語も上達しないような環境にて話すのがものすごく下手になっているなというのを感じています。


そんな中、この映画の中の主人公はものすごく口数が少ないんですが、それでも日々の生活が成り立っていて、あーこういう人もいていいんだと言う気持ちにさせてくれました。


もちろん仕事上テクニカルな話し方をしなければいけないし、もっと磨いていかないといけないんですが最近30になってもおっとりとした話し方しかできないし、話の構成がものすごく下手で、話していて相手が退屈しているなと感じることがあったり、相手に努力させないと自分の話が伝わらないようなシチュエーションがあったりして話すこと自体嫌になることが多々あるんですが、この映画自体ゆっくりしていて、日本人の中には結構ゆったりした人、特に田舎出身とか多いのではないかなぁと思いました。日本人はやっぱり表情とか空気を読んで会話してるんだなぁっていうのも改めて映画を見ながら思いました。


特にそう思ったシーンは、神社で、主人公が木の苗を見つけて、神主さんに持って帰っていいかと言うのを聞く場面あるんですが、そこは全く言語による会話がなくて仕草でコミュニケーションもとっていて、日本らしいなぁと思いました。


一瞬の慰めにしかなりませんが、そんなことを感じた映画でした。※なんだかネガティブな書き方になってしまいましたが映画のおかげでいたってポジティブです。


以上