ーAIを活かせる人、活かせない人
本書を流れる一貫したテーマ。

AI時代に必要なこと、それは「知性を磨く」ことに集約される。
では知性とは一体何なのか。
『イミテーション・ゲーム』というトップクラスに好きな映画があるが、主人公のアラン・チューリングは人間とコンピューターの境目を研究する「チューリングテスト」を行っていたことで知られている。現代において、生成AIの急速な発達により、境目がどんどん曖昧になってきている。
古くて新しい問い。
他の誰でもない、樺沢先生の見解が聞きたい。

「学びを結果に変える力」
樺沢先生はアウトプット大全の知見をベースにいえば、と前置きした上でこう答えている。
ただ、私から見ると目的的思考がかなり強いものがある。
樺沢先生の長所はすぐに実践しやすい形で落とし込んでくださるところであるが、その反動として目的的思考が強くなりすぎてしまっているところが出ているのかもしれない。
結果が出せないと知性とはいえない、となってしまうと、自己修養など行為そのものが目的としている方々や一代では結果が出せない大規模なプロジェクトを行っている方々は知性がない、ということになってしまう。それとは逆に、悪いことを学習して大金を稼いだ人が知性のある人になりかねないので、一般的には違和感がある。
私が知性を感じるのは、知的誠実さーファクトに向き合い、論理性を重んじるーこういったことである。たとえば、ニュートンがりんごが木から落ちるのを見たときー私ならりんごがもったいないと思うくらいだがーりんごが落ちたというファクトに常軌を逸した真摯さで向き合い、自己に培われた極めて高度な論理性を発揮して万有引力の法則を発見するーこのような形で見られるものである。樺沢先生は『チ。』がお好きだが、命を賭して地動説を採る姿勢も知的誠実さの表れであり、そういった面からも樺沢先生の深い共感が得られたのではないだろうか。また、冒頭にある「AIを信用するな」という強いメッセージも、ファクトそのものに向き合わずにまずAIの意見を採用してしまうという点で大きな問題がある。リアルな社会に生きている自分自身というファクトに向き合ってこそ、本書に後述されている、「知性サイクル」を回すことや美意識を磨くことができる。

本書には、樺沢先生のお家芸である数々の実践しやすいワザが載っているが、中でも特に、AIに対する指示をゴルフのアプローチに喩えているところが、とても秀逸だった。少しずつゴールに寄せていくことによって、複雑なプロンプトを考えなくて済む。初心者でも使いやすい上に、成果物も期待ができるものが作れる。樺沢先生はとてもわかりやすく話されるので凄さがわかりにくくなってしまう傾向があるが、本当に画期的なワザだと思う。

最後に、
ー短所外注、長所集中ー
ほとんどの日本人ビジネスパーソンは、大なり小なり組織で仕事をしている。
組織で仕事をする意味は、長所を最大限に発揮し、短所を無意味なものにすることにある。これがAIによってより小規模な組織でできるという技術的なブレイクスルーが起こった。変化は最大のチャンス。より行動量を増やし、チャンスを掴んでいくべきである。
成果を出す方法論とその基礎となるマインドセット。こういった背景からこれらを兼ね備えている樺沢先生の著書からより深く学んでいきたい。