再会 | 京都府長岡京市大人のための音楽教室サロンパーチェ・声楽・ヴォイストレーニング(西向日)

京都府長岡京市大人のための音楽教室サロンパーチェ・声楽・ヴォイストレーニング(西向日)

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今から〇十年前、

15歳だった私は今は亡き小幡和代先生と出会いました。

 

音楽に厳しく、真剣で

「全身全霊」というご自身のお言葉通りに

歌に向き合っておられる人でした。

 

生徒たちへの指導も大変厳しく

レッスンでは泣き出す子もいました。

でも、そこには一人ひとりへの深い愛情があることを

みんな肌身で感じて知っていたので

誰ひとり、投げ出す者はいませんでした。

 

私のことをとてもとても大切に育ててくださった先生。

いつも私に寄り添い

共に喜び、共に泣いてくださった。

 

大学を卒業して教職に就いた私は

仕事に全力を尽くして

自分が歌うことをやめました。

喉をいため、ガラガラ声にもなりました。

 

だから、

先生に会いにいけなかったのです。

「ちょっと歌ってみて」

と言われるのが怖かったのです。

 

叱責されるのが怖かったのではなく

先生を落胆させるのが怖かった。

あれほど一生懸命に教えてくださったのに

声楽家になることができず

満足に歌うことすらできなくなってしまった、

そんな私が先生の前に顔を出すことなど

到底できなかったのです。

 

心の中ではずっと会いたかった。

しかし、

卒業後、二度と会うことがないまま

先生のご逝去の知らせを友人から聞くことになります。

 

再び歌うようになった時

先生は褒めてくださるだろうか

先生なら、なんと言ってくださるだろうか

はじめにそう思ったものです。

それから6年

 

滋賀県大津市の「奏美ホール」で歌う機会があり

そのホールのオーナー、

声楽家の影山先生とお話しして

驚く事実がありました。

 

なんと、今から70年前に

小幡先生と影山先生はともに

ドイツの偉大な歌手、ヘッサルトのレッスンを受けるために

東京へ通っておられたのです。

 

「まあ、小幡さん!!」

 

私が先生の弟子であったことを話すと

影山先生の顔が見るみるほころんで

とても懐かしそうに、嬉しそうに

当時のことを話してくださいました。

 

「小幡さんは私の先輩で

本当に熱心で、真面目で、一生懸命な方だったわ。

戦後間もない東京に片道8時間かけて通ったの。

六本木にあるベニヤで作ったような喫茶店に入って

互いを励まし合っていたんですよ。

素晴らしい方だったわ。

そうなの、小幡さんに習われたのね。

それは幸せなことでしたね。

 

今、あなたが同じように東京へ通い

勉強を続けて

こうやって歌い続けておられることは

とても素晴らしいことです。

幸せなことです。」

 

 

そんな言葉をお聞きして

胸が熱くなりました。

 

若き日の先生を想像して思い浮かべ

私を厳しく優しく温かく指導してくださったことを思い出し

久しぶりに先生を身近に感じることができました。

 

影山先生と小幡先生に見守られながら

その日、私は歌うことができました。

ただただ感謝の気持ちです。

 

 

 

グノー(Charles Gounod)ファウスト
第三幕アリア“Le jardin de Marguerite”「宝石の歌」

 

ドニゼッティ シャモニーのリンダ

"O luce di quest'anima" from Donizetti's Linda di Chamounix.

「この心の光」