寒かったり温かかったり!日は伸び始めていますね。
直近の感想はマストドンでもよろしくです。
「185頭と一人」
不要とされた牛の殺処分を良しとせず
経済動物としては価値のない畜産牛の寿命まで
飼いきる活動をしている農家のドキュメンタリー
すごく良かったので本とかにして残して欲しいです
一回見て終わる映像で終わらせるのはもったいない
言葉としてはよくある事しか言ってないけど
いいことを言ってる
途中酷いこともたくさん言われたんだろうなあと窺える語りも。
でも作中では寿命に面した牛をどうするかで揉めてたけど
意思疎通がうまく言語化できてなくて行き違ってるのを感じた
男性は「一頭ずつにいちいち入れ込んでたら身とメンタルが持たない」という
自己や人間の感傷の話だと解釈したことを言ってるんだけど
女性は「もう死ぬからそれが自然な摂理だからって
苦しんでいる一介の命をただ放置して死なせて良いのか」という
牛とその臨終に対する苦痛緩和やターミナルケアの話をしていたと思う
牛医さんを呼べるのかとか苦痛緩和の薬とか資金面もあるかもだし、
命の死にできる限り向き合うことと、
その後で自分のメンタル面にどう向き合うかは別な段階の問題かなと
そのうえで
「一頭ずつ向き合ってたら自分はしんどいからいっそ全然やらないと割り切る」とか「それはそれとして眼の前の命の苦痛緩和する」とか
割り切りのラインの違いというか……
「自分の辛さを生み出さないか
他の苦痛を取り除くか」ともいえるけど、
だからって冷酷なわけじゃなくて最後まで寄り添ってはいるんですよね。
自分の苦でないの範囲での行動に、
牛がどう感じているかはそれぞれの牛にしかわからないわけで。
むしろずっと寄り添っているプロの感覚のほうが大事なのではあります。
殺処分を通告された牛に関しては
決定初期にせめてと逃がした農家もいたんだけど、
山や自然に慣れていない牧畜牛がすぐそこの小川に何匹もはまって死んでたり
と言うエピソードのある関連漫画作品を読んだことあるので
畜舎でつながれたまま餓死して骨になるかどちらが良かったかも
またその命にしかわからないのであります。
それから、作品内では出てきませんでしたが
実際にその決定のために絶望して、
「殺された」と檄文をその場に大書し自殺した農家が実際に当時いたことも
忘れてはなりません。
むしろその縊死事件自体はわりと報道されてたんだけど、
このドキュメンタリーで
経済動物でもあり、同時に命でもある牛たちに相対している人の感覚を知り、
ただ「絶望」の一言では知りえない部分を身につまされました。