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この映画も、映画音楽のカテゴリーで、曲を何曲も紹介しているのですが、映画自体のレビューを書いていませんでした。今更ですが、載せます。
WEST SIDE STORY
1961年アメリカ映画 UA カラー 152分
監督 ロバート・ワイズ ジェローム・ロビンス
出演 ナタリー・ウッド リチャード・ベイマー ジョージ・チャキリス リタ・モレノ ラス・タンブリン タッカー・スミス
ニューヨークのウエストサイドでは、イタリア系の青年たちで構成されるジェット団と、プエルトリコ系で構成されるシャーク団との抗争が続いていた。ジェット団のボスであるリフ(ラス・タンブリン)のいとこのトニー(リチャード・ベイマー)はおとなしい青年で、そんな抗争に巻き込まれることを嫌っていた。ある日のパーティで知り合ったマリア(ナタリー・ウッド)という美しい女性に一目惚れしたトニーは、夜にマリアの元を訪れて愛を語り合う。しかし、マリアはシャーク団のボスのベルナルド(ジョージ・チャキリス)の妹だった。対立するグループの相手を愛してしまった2人は悩むが、愛の力は強かった。2人が愛を貫こうとしたその時、大きな対立が起き、ラスが刺し殺される。怒りに我を忘れたトニーは、ベルナルドにナイフを向けてしまう。マリアとトニーの許されぬ愛は悲劇のどん底に落ちていく……。
いわゆるハリウッド3大ミュージカルの1つです。そのスケール、70ミリの大画面、圧倒的なダンスシーンにレナード・バーンスタインの名曲など、3大ミュージカルの名にふさわしい傑作です。後の2本は『マイ・フェア・レディ
』と『サウンド・オブ・ミュージック
』。60年代を飾ったスケールの大きな大作ミュージカル3本です。ミュージカルの金字塔であったのと同時に、この時代を過ぎるとミュージカルの衰退が始まるのでもありました。
ストーリーのベースは『ロミオとジュリエット』です。対立する2つのグループの中に生まれた恋人同士。でも、それは許されぬ愛でした。それでもその愛を貫こうとする2人に、運命は過酷な試練を用意するのです。この映画は愛の強さと同時に、ただ人種の違いから来ているというだけの対立の無意味さ、くだらなさをも描いています。
冒頭、ニューヨークを上から映していくシーンでジェット団とシャーク団のメンバーがそれぞれスローモーションで踊り出します。映画史上に残る冒頭です。それはそれまでの映画の常識を覆した幕開けでした。ロバート・ワイズのこの技法は、次の『サウンド・オブ・ミュージック』の、アルプスを上から映し出す冒頭でもスケールアップして発揮されます。スチール写真でも有名な、ジョージ・チャキリスと仲間たちが足を高く挙げて踊っているシーンは、実は何度も真似をしたものでした(笑)。一瞬だけのジョージ・チャキリス気分で終わりましたが……。
レナード・バーンスタインによる音楽も大変素晴らしいです。リチャード・ベイマーとナタリー・ウッドが愛を語る「トゥナイト」。その美しいメロディにはうっとりします。「私が今まで聞いた中で最も美しい名前~」と歌い出す「マリア」。シャーク団の女性たちがパワフルに踊り歌う「アメリカ」。移民の彼女たちが豊かなアメリカに描いている夢を率直に描いた歌です。大抗争に発展しそうになる直前、「♪クール、クール、クレイジーボーイ」と指を鳴らして平静を取り戻すように歌う「クール
」。これを歌ったタッカー・スミスは格好良かったです。そして、クライマックスの「トゥナイト」が4重奏になって奏でられる圧倒的な迫力。この映画の成功にこの素晴らしい音楽が占めた割合の大きさは言葉では表せません。
それから、ダンス。それまでのミュージカルといえばタップダンスかバレエの要素を大いに取り込んだダンスが主流でした。しかし、この映画では集団によるダイナミックでエネルギッシュなダンスシーンの連続。この迫力と斬新さが当時の映画ファンを虜にしたのもうなずけます。ジョージ・チャキリス、ラス・タンブリン(『掠奪された7人の花嫁
』で7人兄弟の末っ子役でやはり見事なダンスを披露していた)の2人のダンサーの力量によるものが大きいでしょう。
この映画にはきらびやかなドレスも華麗な群舞も出てきません。粋な紳士にシルクハットも、ショウビジネスの世界も無縁です。ニューヨークのストリートに生きるごく普通の、むしろ生活的には恵まれなくて鬱憤を抱えている若者たちの、日常生活の話です。ミュージカル=美しく華やかな物、という概念を抱き続けてきたファンの中には受け入れるのが難しかった方もいるかもしれませんが、このダイナミックさは、この後のミュージカルに限らない色々な映画に多大な影響を与えたことは間違いありません。
トレイラーです。