『怒りの荒野』 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

銀幕と緑のピッチとインクの匂い

映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

怒りの荒野 スペシャル・エディション [DVD]/エスピーオー

¥3,990
Amazon.co.jp

怒りの荒野 HDリマスター スペシャル・エディション Blu-ray/TCエンタテインメント

¥4,104
Amazon.co.jp


I GIORNI DELL'IRA
1967年イタリア・ドイツ映画 カラー 115分
監督 トニーノ・ヴァレリ
出演 ジュリアーノ・ジェンマ リー・ヴァン・クリフ アンドレア・ボシック ワルター・リラ イヴォンヌ・サンソン


 娼婦の息子としてクリフトンの町でさげすまれてきた青年スコット(ジュリアーノ・ジェンマ)。ある日、町に強面、凄腕のガンマン、フランク・タルビー(リー・ヴァン・クリフ)が現れる。町を去ったタルビーをスコットは追って、弟子入り志願する。タルビーは、ガンマンの10か条の心得を教えていく。ボウイという町で、タルビーはワイルド・ジャックに会う。ジャックには5万ドルの貸しがあったのだ。ジャックは、クリフトンの町民たちに騙されて、お金は全部盗られたと言う。タルビーは、クリフトンに戻り、復讐を始める。



 ジュリアーノ・ジェンマが容姿は端麗ながら、町中でさげすまされている、人が嫌がる底辺の仕事ばかりをさせられる青年として登場します。それは、彼には父親がいないから。彼の責任ではないことなのに、彼は町の中で最下層人物として扱われ続けてきました。嫌な話です。立派ないじめです。本人もそれしか生きていく道がないので、黙々と言われたことをする毎日。ところが、彼の前に凄腕の中年のガンマンが現れたことから、彼は教えを請うて一流のガンマンになりたいという夢を抱くのです。

 アメリカンドリームならぬガンマンドリームの物語です。実は私は西部劇は大好きなのですが、マカロニウエスタンはちょっと苦手なんです。残酷シーンが多いので……。ただ、これは魅力的なキャストなので、見てしまいました。


 リー・ヴァン・クリフに弟子入りしたジェンマは、早速ガンマンの心得10か条を少しずつ教えられます。これが、物語の進行に生きてきます。「人に頼み事をするな」「人を信用するな」など、クリフは実地体験で教えていくのです。すっかり、クリフ師匠に夢中なジェンマは、とうとう自分を苛めぬいた町に帰ってくるのです。滅法強い師匠と、すっかり上達した自分自身の銃の腕と共に。

 この映画は、中年凄腕ガンマン、リー・ヴァン・クリフの圧倒的な存在感に持っていかれてしまいます。ジェンマは、彼の前では若造に過ぎない。クリフの手の腕で踊っている人形でしかないんですね。

 それと共に、生まれた時から父親を知らないジェンマは、クリフに父親の面影を求めていたのかもしれない、とも思います。優しいわけでもない、寡黙で、ぶっきらぼうで、不敵な笑みを浮かべるとんでもない奴なんですが、男の子(という年でもないけれど)が憧れそうなキャラクターですよね。

 銃を通じて結びついたふたりが、どうなっていくのか。心理描写などに荒い展開もありましたが、西部劇ならこうはならないでしょうね。やっぱり、マカロニウエスタンです。


トレイラーです。