『花子とアン』感想文 その3 醍醐さん、朝市、そして伝助 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

 ご機嫌よう。

 『花子とアン』には、架空の人物も出てきます。醍醐さんと朝市もその一人。そして、蓮様の再婚相手であった炭鉱王伝助は、悪役として登場した…筈でした。

 ところが、この3人。ネットでは『花子とアン』の登場人物の中ですっかり人気者になってしまい、多くのファンを獲得するに至りました。

 はなの幼馴染の朝市。隣に住む心優しい男の子です。学校で、はなに石板で頭を殴られるなど、散々な目に遭わされながらも、何故かはなが好き。教会の図書室に無断侵入して、捕まりそうになった時は、はなだけを逃がすという、少年ながらも男気あふれる子。

 大人になっても、彼ははな一筋。ももちゃんに好かれて告白されても、彼の心は揺るがない。はなが先生になってから繰り広げる失敗の数々も、いつも彼がフォローしてきました。が、はなは恐るべき鈍感さで、朝市の気持ちに気づきません(笑)。まさに、彼はオスカルに影のように付き添うアンドレのよう。さらには、彼はギルバート役の男性です。アンを愛する人々に、好かれないわけがありません。

 というわけで、朝市ファンは急増。ギルバートなのに、アンと結ばれないとわかっている故に、さらに人気が上がったのでしょうね。遂に彼を主人公にしたスピンオフも作られることになりました。

 はなが女学校に入ったその日に、貧しい着物を着ていたはなに、大きな可愛いおりぼんをあげたのが、同室の醍醐さん。お金持ちのお嬢様で、とても美人なのに、優しく明るい人柄で、はなの女学校生活の友になります。彼女も、どういうわけだか、はなが好き。はなとは親友と言ってもいい間柄だったのに、そこに蓮子さんが現れ、はながすりすりすり寄って、突然に腹心の友になってしまうので、置き去りにされてしまいます。

 しかし、彼女はアンの腹心の友ダイアナ役の人です。アンのファンがこれまた許すわけがありません。それからも醍醐さんとはなとの関係は深く、いつも側にいたのに、大切な友人という栄誉は得たものの、何だか友情が報われず……。でも、とうとう最後にはなに「ふたりの腹心の友」と言わせるのです。「ふたり?え。わたくし?」と綺麗なドレスに身を包んだ醍醐さんのつぶやきは、ダイアナファンの喝采を得たことでしょう。

 私だったら、友達になるなら、心優しい醍醐さんだけれどなあ。はなが女学校に入った時のあの格好を見たら、深窓の令嬢だったら、引いて当たり前なんですけれど、仲良くなりましょうね、ですものね。思えば、醍醐さんは、女学校を卒業したら、医師と結婚することが決まり、その時点でうんと出番が少なくなる予定だったのかも、なんて勘ぐってしまいます。しかし、醍醐さん人気がそれを許さず、婚約破棄して、出版社へ?それからも、はなの人生に寄り添い、吉太郎さんと結ばれることになったのでしょうか。脚本家に聞いてみたい部分です。

 そして、蓮子さんの再婚相手、炭鉱王嘉納伝助。大きな声が魅力の、九州男です。成り上がり者で自分を金で買った、だの、教養がない、だの、蓮子さんに散々なことを言われ、思われ、それでも、蓮子さんを愛しています。東京中を走り回ってティアラを買ってきたときの、蓮子さんの態度ときたら、腹が立ちます。

 本当だったら、伝助は憎まれキャラなんです。蓮子さんをお金で買ったという役柄なんですから。ところが、蓮子さんの態度があんまりなことや、頼りない青二才と不倫を始め、遂には駆け落ちまでしたことなどから、何故か伝助人気が沸騰。蓮子さんの駆け落ちで、本来なら、もうドラマの出番は終わっていたのに、大きな人気ゆえに、急遽出番が伸びたという逸話つきです。

 あの男気には、私も惹かれました。そして、最後に再会した蓮子さんの顔(額でした?)にキス。いやあ、痺れましたね。

 ということで、ヒロインもヒロインの夫も霞んでしまうほど、すっかり人気者になった3人衆でした。

 ご機嫌よう。さようなら。

 
                 まだしつこく、つづく。