追悼　トニー・カーティス

　ハリウッドの黄金時代を彩った名優がまた一人星になりました。トニー・カーティスが逝去しました。享年８５歳。

　海軍除隊後、俳優業を目指し、オフブロードウェイデビュー。４９年に、映画デビューした『裏切りの街角』で人気が出て、その後順調にスター街道を歩きました。甘いマスクの２枚目俳優として、５０年代からはかなりの人気者に。そして、美人女優ジャネット・リーとの結婚で、美男美女の鴛鴦夫婦としてハリウッドで話題を振りまきました。天才マジシャン、フーディーニに扮した『魔術の恋』などで夫婦共演もしています。女優のジェイミー・リー・カーティスがこの二人の娘だということはご存知の通り。

　私の頭の中では、何故だか、やっぱりトニー・カーティスと言えば、ジャネット・リーも一緒に浮かぶんですよね。私がこの二人を知った時は、もうとっくの昔に別れていたんですが。トニーは、その後『隊長ブーリバ』で共演したクリスチーネ・カウフマンと浮名を流し、遂にジャネットと離婚。クリスチーネも綺麗な人ですが、ジャネットみたいな美人で素敵な奥様がいながら、何故に…と思ったものです。

　その後も、私生活では派手な噂が多かった人みたいですが、役者としては『空中ぶらんこ』『バイキング』『成功の甘き香り』と、着実に階段を上っていき、５８年の『手錠のまゝの脱獄』ではアカデミー賞候補にもなりました。シドニー・ポワティエと、手錠で結ばれたまま逃げ回る逃亡犯。最初は反目していた人種的にも違う二人が、段々変わっていく様子がずしんと来ましたね。

　そして、女装した『お熱いのがお好き』。こちらでは、コメディセンスを如何なく発揮。かと思えば『スパルタカス』などの史劇の印象も強く、そういえば、トニー・カーティスと言えば結構どこか肌をはだけたような印象が（笑）。

　『グレートレース』も、とても楽しい映画でした。同じくジャック・レモンとの共演で、パリッとした白いスーツに身を包んだハンサムな、とてもわかりやすい役。

　やっぱりこの人は、ちょっとにやけた感じで笑っている役が多かった気がします。さもなくば、歴史もの。その後は、テレビに主な活躍の場を移し、『ダンディ２』や『マッコイと野郎ども』などで主演していました。８０年の『クリスタル殺人事件』では、エリザベス・テイラー、ロック・ハドソン、キム・ノヴァクなどと共に、往年の名スター勢ぞろいの姿を見せてくれましたね。

　こうして思い返してみると、子供の頃から慣れ親しんだ大スターでした。ちょっとにやけた感じがあって、凄く好きにまではなれなかったけれど、改めて若い頃の写真を見ると、やっぱりハンサムですよね。ジャネット・リーも、共演したジャック・レモンやマリリン・モンローやナタリー・ウッドも、みんな鬼籍に入ってしまい、改めて古き佳きハリウッドはどんどん遠くなっていくのだな、と感慨に浸ります。

ご冥福をお祈り致します。