田宮二郎と『白い巨塔』 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

 NHKBSの『お宝TVデラックス』で、『白い巨塔』の名シーンが放映されていました。テーマは、田宮二郎演じる財前と、山本學演じる里見のライバル対決というものでしたが、もの凄く懐かしい思いで見ました。この『白い巨塔』は、子供の頃ですが見ていた記憶がしっかりあります。他にも、『白い滑走路』の何とも格好良い機長姿も見ていた記憶が。今思えば、母が好きだったんでしょう。そして、これまた思い出のクイズ『タイムショック』。毎週見ていたこの番組で司会を務めていた田宮二郎は、私には素敵なおじさまに見えました。おじさまなんてご免なさい。でも、子供から見れば、ある程度の大人はみんなおじさまなんですよね。余談ですが、商品の扇雀飴一年分というのに憧れましたねえ。

 

 

 『白い巨塔』の財前五郎は、天才的外科医ながらも野望の塊で、教授への道をひたすら昇ろうとします。端から見たら、有能だけれど人間性が感じられない嫌な人。悪役と言っても良いくらいの役を、田宮二郎は渾身の力を込めて演じました。とにかく、キッと睨む眼孔の鋭さには、その辺の人ならすくみ上がりそう。撮影が始まる直前まで、ロケする病院が決まらずスタッフが困り果てていた時に、田宮本人がロケ病院を探して了解を取ったそうです。60年代に映画版で主役を演じた田宮はまだ若くて、財前の全てを演じきれなかった。だから、今度は異様なくらいの熱意で、このドラマに臨んでいたという気概の表れだったのでしょう。田宮の鬼気迫る熱演と共に、ドラマ撮影は終了しました。

 

 

 

 1978年12月28日、田宮二郎は自宅で猟銃自殺を遂げました。享年43歳。大スターの突然の訃報に、世の中は大騒ぎになりました。当時のショックは私も良く覚えています。色々神経を病んでいたという話も聞きます。財前五郎役にあまりにのめり込みすぎたとも言われています。他にも色々な噂があったのでしょうが、子供だった私にそれ以上知る術もなく、素敵な機長さんであり、素敵な『タイムショック』の司会者であり、冷徹な医師でもあった田宮氏は、永遠にこの世を去りました。

 

 

 

 背が高く(180cm)、理知的で、クールで、今見ても本当に格好良い人です。この人に子供心に素敵だわあ、と思っていた私って如何にませていたかってことでもありますが。

 

 

 

 絶頂期にあまりにショッキングな方法でこの世を去ったことで、田宮二郎はますますカリスマになったかもしれません。そして、『白い巨塔』のラストを改めて見て、田宮二郎は財前五郎と共に散っていったのかもしれない、とも思うのです。『白い巨塔』の最終話の放映を待たずして、彼は逝きました。全てを出し尽くした脱力感。改めて、財前五郎の死を見たくないという思い。彼の心にその時、去来したのは何だったのでしょうね。生きていれば、72歳。どんなロマンスグレーになられていたことでしょうか…。
 

 

 

 

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