ザッツ・ダンシング | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

 『ザッツ・ダンシング』はMGM映画ながら、他社の映画も網羅したことが大変新鮮でありました。名ダンスコンビといえば、何と言ってもフレッド・アステア&ジンジャー・ロジャース。その彼らの全盛時代である30年代のダンスが堪能出来ます。とにかくこの二人の踊りは優雅なのですね。当然ながら息もピッタリあっています。軽やかに踊るアステアと、ロングドレスの裾をひきながらアステアに手を取られてクルクル回るジンジャー。40年代終わりに名コンビの幕を閉じてしまったことは大変残念でした。タキシードを着て踊る姿が印象に残っているエリノア・パウエルも、とても女性らしい人だったようです。


 50年代以降のダンスを象徴するのは、アステアと共にジーン・ケリーだったでしょう。『巴里のアメリカ人』で見せたバレエを基調としたダンスの世界は見事でありました。バレリーナ出身のレスリー・キャロンがとてもキュートで、その魅力を全開させました。世界で一番美しい足の持ち主だと思っているシド・チャリシー。『バンド・ワゴン』や『ブリガドーン』で美しいダンスを披露します。背が高くてスラッとして、そしてあの美しいおみ足。大人の女性の美しさと落ち着きを体現した人だと思います。


 嬉しかったのは、『ウエスト・サイド物語』が出てきたこと。ミュージカル、そしてダンスと言えば、やはり欠かせないものでしょう。タッカー・スミスの「♪クール」はとにかく格好良いのです。ただ、冒頭のジェット団やシャーク団が段々踊り出すところや、チャキリスの‘あの’シーンはやっぱり登場させて欲しいものでした。


 そこから、突然80年代に飛ぶのにはちょっとびっくり。その間は編集でカットされた??『サタデーナイト・フィーバー』(これは70年代ですが)や『フラッシュダンス』なら、最近の映画として認識してしまいます。そして、トリはマイケル・ジャクソン。例の裁判のすぐ後だけに、やや複雑な気分になるのでした。


 楽しい時、何故か人は歌い出し、次には知らず知らず足がリズムを取りだしてしまうことがあります。歌とダンスはやっぱり切っても切れない関係にあるのかもしれません。見ているうちに、自然に足が踊り出してしまう映画でした。勿論、ダンサーたちのように踊れる筈もありませんが。