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一番最後を走る僕は二人の背中に向かって話した。

「でも俺は…俺は、きっちりけじめをつけたいんだ。」

アキトもともやんも聞こえたのか、聞こえないのか無言で走り続けた。

「俺はケリをつける…」

そう心に言い聞かせた。そうしないと、足下が揺らいでまっすぐ走れない気がした。

車の側に行くと3人はほぼ確信めいたような気がした。3人は誰一人として疑う事は無かった。
それはあまりにもあのアスキーアートの「似顔絵」にそっくりだったからである。

例のクラブオーナーは息をきらせながら近寄る3人に怪訝そうな顔で見つめる。

「あのー、その黒いスカイマーク、譲ってもらえませんかねえ?」

いきなしアキトは取り繕うように話しかけた。俺はそのスキをついて全周をぐるりとチェックする。左後ろフェンダーの上に凹みキズがある。が外観はほぼ問題ないくらいきれいでアフターパーツもふんだんに付けている。かなり手が入っていた。

男はようやく口を開いた。

「なんだ、いきなり。車は売る気はないが。何の用だ。」

そのねちっこい眼光は3人を捕らえて舐めまわすような視線を送る。なんとなくタダモンではないなこいつは。っと俺は直感した。普通ならいきなり話かけられれば大概、動揺のそぶりが絶対でるのであるがこいつはそれが無い。あきらかに色々な「場慣れ」をしている雰囲気を感じたのである。

アキトもひるまず畳み掛けるように話を続ける。

「いやー、なんとなく綺麗なRだったんで。この形のRを今欲しくて探しているんですよ。いやーほんとコノ車、綺麗ですねー。どうしても声かけずにはいられなかったんですよ。すぐは無理でも売りたくなったら僕に声かけてくれませんかねえ?ここら辺に住んでるんですか?」

「いや。この先をちょっと行った所だ。まあ近いといえば近いが。」

少し気をよくした男はそう答えた。

「この先をちょっと?っじゃあの事件で有名なヘビ坂とか通りますぅ?最近R好きでは話題なんですよねー。」

「いや、その事件の話は知らんし、ヘビ坂は通らないが、ヘビ坂の名前は知っているよ。」

「あっそーなんですか?Rで最近悪魔のようなのがいて、ヘビ坂でちょくちょく出るっつー噂、この辺りでは有名ですよ。怪事件が起こる魔の32Rって。こないだも轢かれた話あったしなー?」

トモヤンと俺は話の展開がイマイチ掴めないが黙って頷いた。

「だから、そんな話あってここいらの不良はみんなR憧れなんですよ。不良っぽいかっこいいイメージあって。俺も欲しいんですよねー。ヘビ坂ではRを待つギャラリーまで現れるくらいなんですよ。知らないんですか?」

「ほぅ。そんな話が若い奴の間では流行っているのか?ではそのヘビ坂に俺も今度行って見るかな?」

男の眼光はさらに鋭く光り、不気味な目の据わった笑みを投げかける。正直すごく気味が悪かった。

「今日なんか三日月出てるし、不気味な感じしていいかもしれないですよ。わはは。」

アキトも面白くもないのに作り笑い。話に必死なのがなんとなく分かる。俺も話を盛り上げようと思い切り出した。

「綺麗な車なのに後ろに凹みキズあったりしますね。まさかその魔のRだったらカッコイイですね。わはは…」

すると男は今までの笑みがさっと消え俺を睨みつける。

「いったい何の用で話に来てるんだ?車売って欲しい話なんだろ。お断りだ、売る気は無い。じゃあな。」

俺はしまった!余計な事を口走ってしまった!
こいつはもうかなり厳しい展開だなと感じた。
これ以上話ができる状況では無い。アキトも俺を睨んでいる。

「余計な事しゃべりやがって!」

という顔だ。


もうこれ以上追求すればおかしくなる。いったん引こう。そう思った時、突然

「あれ、犬の毛が挟まってるなぁ?」

っとアキトがバンパーに手を触れた瞬間、

「気安く触るんじゃねえ!!」

男はアキトの手を蹴り上げて突き飛ばした。
あまりの素早い動きで、いくら大男のアキトも転がってしまった。ヤバイ!とっさに俺は横から男を突き飛ばした。すると今度は男はたじろいで態勢が崩れたが、すぐ立て直して俺の首を掴もうと腕を伸ばした。それと同時にアキトが男の膝に思いっきり蹴りを寝転がった状態から繰り出した。男はガクンっと膝が抜けて崩れる。が、車のドアを素早く空けると中に入ってしまった。

ともやんは電話をしている。何やってんだ!?あいつは??アキトは猛然とバイクのある方角にダッシュしている。そうだ!俺も取ってこよう。後を続いてダッシュする。




男は膝が痛いせいでクラッチが切れない。車の中でしばらく膝を擦って考えた。

「あいつらはいったい何だ?警察と同じような事いいやがって。しかも犬の毛だ?こないだ全部チェックした時見逃したか?ちくしょう、痛えや。この後の仕事はキャンセルだぜ。でかい山の仕事だっつーのによぉ。くそー、まじでいてえ。クラッチ切れるのかよ。こういう時困るぜ。ミション車はよ。だからベンツとかにしろって社長に言ってるのによ。とりたて行くのにふつーは
そういう車だってのによー。逃げやすい車はこれだとか言いやがって。てめえでは運転できねえから俺雇ってるんだろ。まったく、ああ、いてえ。しかしとんだ災難だぜ。とりたての帰りの逃げ道でガキ轢いたのはよ。しくじったな。あんな隅に人いるかなんてしらねーぜ。俺も焼きまわってきてんなあ。ついてねえ。今まで上手くいってたのによぉ。あんな無理な取りたてすっから他のシマを当てにしてる業者から追われるんだよ。くそ!社長のせいだぜ。まったく。のんびりクラブオーナーの仕事できるっつーから入ったのに実体はこういう裏家業で凌いでるなんて知らなかったぜ…はやく俺も足洗わねえとなあ。今日はとりあえずキャンセルだ。。。」

男は携帯を取り出してボタンを押した…


アキトはノーヘルで猛ダッシュして発進する。バーンナウト気味で濛々と煙をあげて向かう。俺もあとを追い掛ける。ヨコハマのスリップ跡と焦げ臭い焼けた匂いを残しているはずなのだが、今の俺にはそんな事にかまってられない。
いつのまにかともやんは消えていた。あいつは何やってんだ?まったくよ。全然役にたたねえじゃんかよ。くそー。

あと一つ角を曲がればRの所だ。その角を曲がった瞬間黒いRは猛然とダッシュして発進した。男は膝が痛いのが治ったのか?

アキトはもうすぐで轢かれそうになるのを横に飛びのけてまたハーレーに戻ると急発進した。
俺はアキトのサイドについて手で合図。

「ミギサイドマワリコメ。オレハヒダリマエデテキュウブレーキスル。マキコマレルナ。ゴー!」

暴れまわっていた小僧時代の合図。
道行く人はみんなこの3台の異常な走行に驚いて、好奇心の目を向ける。が、誰も何も言わないでただ見ているだけだった。小さな橋を抜けて細々した道をRはどんどん抜けて行く。このまま抜けると246に入りこみ逃げられてしまうか?やばい。

Rは信号が黄色で猛ダッシュして左折した。神奈川方面だ。
俺も赤でぎりぎり左に抜ける。アキトはピタリとRの死角に入ってくっついている。

運が悪いせいか、今日は道ががら空きだった。Rは猛然と逃げ切りダッシュを開始し始めた。くそー。オレは汗ってきた。早くこいつを推さないと。Aピラーに貼りつけた赤い大きなボタンを叩きつけた。そしてアクセルを踏みこむ。ドカーン!鋭いダッシュ。

NOSのパワーでこのおんぼろでは信じられない加速。びったりとRに食い付いて行く。しかし追いぬくのは厳しい。畜生。やっぱ無理か??ほんのちょっとした直線でRはすでに160を軽く超えている。アキトは風で顔面を叩きつけられてゆがみながらも歯を食いしばってクライついている。タンクにびったりと体を添わせて腕はハンドルの振動を抑えこむのに必死だ。

大男で根性ないと絶対耐えられない風圧と振動である。
でもこれが限界である。ハーレーではいくら根性と気合が座っていても物理的にこれ以上の速度域でのバトルは無理なのである。それでもアキトは諦めなかった。

くそー。だからトモやんに頼んだのに。俺はかなり汗っていた。
Rとの距離もこのままだと開けられてしまう。もういっかいNOSのボタンを押したが駄目だ。効かない。やっぱ自分で付けて、回転数に合わせたデータ知らないで勝手にやっただけなので、全然無駄だった。最初の加速だけだ!くそー!終わった…

っと怒りはじめたその時、俺の両サイドに光の塊が数台通りすぎて…
運転席側のサイドに黒い塊が。
真っ黒のトモやんの登場であった。窓ガラスをコンコンっと叩くとアットいう間に加速してRの前に飛び出した。そして数台の大型バイクがずらりと2車線すべてを横に並ぶべるとハザードを焚いてスピードを落とし始める。
9R、X4、ニンジャ、GSX、その他国産、外車問わず大型バイクが集結して横一列でハザードを焚いてスロースピードになる。まだまだ、続々とバイクは集結しはじめ、俺らの周りには数十台の大型バイクが取り囲む状況となった。一瞬族か?と見間違えるほどである。

Rは無理やり道の端に追い込まれ停車した。その後を続いて俺とアキトは停車する。
数十台のバイクも取り囲むように停車して他の車の交通整理をするため道を1本空けて車を流すようにしていた。

トモやんは

「遅くなってごめんなぁ。」

っと関西弁で謝るとにっこり笑った。俺もそれに挨拶をして急いでアキトとRに向かった。
男は車から出てこなかったが、スモークの窓を下ろすとふてぶてしい顔をして

「なんじゃ、こらぁ。」

っと怒鳴る。
この後に及んでも、まだ足掻いている。

「おっさん。こんだけいてもまだ暴れるの?いい加減にしときなよ。」

「うるせー。事務所くっかぁ?おらぁ。落とし前つけるぞ!」

「はいはい、それはまた後で。それよか、あんたこのにーちゃんの弟さん、こないだ撥ねたっしょ?轢き逃げ。やっちゃったでしょ。素直に答えときなさい。」

アキトは笑いながらも脅しかける。

「うっせーな。だからなんだ。あんなガキちょいとカスったくらいで。どーもねーだろ。んでなんだ、そんだけか?」

オレの心の何かが弾け飛ぶ。後部座席に置いていた日本刀を俺は素早く取り出して
男の所に走り寄る。みんなが「やめろー!」という言葉がスローモーションのようになり景色が流れている。

「やろぉー!そんだけとはなんだー!言う事が他にあんだろー!てめー。覚悟しろ!!」

そのまま突きたててやりたかったが、とっさにミネで顔面を叩きつけた。窓ガラスをメチャクチャに叩き割って息をアゲタ俺をみんなは黙ってじっと見つめていた。

誰も止めるものも居なければ、声をかける者もいない。呆然と俺は立ち尽くして、みんなはそれをじっと悲しげに見つめている。そんな状況だった。

男は恐怖と叩きつけられて腫れた顔でこちらを見ると突然車を急発進させた。
右前に置いていたバイクが1台倒されたが立っていた乗り手は偶然Rに轢かれずの避けられ避難した。

ばぁあああああああ、ばぁあああああああああん!!!!

ものすごいクラクションが鳴り響いて、大型トラックが急ブレーキをかけたが間に合わず、ドオーーー、ガシャーン!!っという金属音と共にRはぐしゃぐしゃにひき潰されてしまった。

すべて一瞬の出来事であった。

左側に止めていて突然発進したせいで右に滑ってしまい、リアがながれ横向き状態でスライドしたため、トラックには運転席側が直撃、運転座席側はぐしゃぐしゃになり無残な事になっていた。トラックはフロントが潰れていたが、ドライバーは無事である。
トラックの運転手は飛び出してきて俺らも駆け寄った。

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その夜の出来事は新聞に載った。ただの交通事故で。
とっさの仲間の判断で、日本刀をバイクで運びさり、隠してくれて逃がしてくれたおがげで助かった。数台のビックバイクの乗り手が目撃者となり後に残ってみんなで嘘の証言をした。


Rは勝手に急に路肩に止まって、俺等はハザード出して停まり、その後急発進してトラックとぶつかったと。


Rの乗り手は運が悪くシートベルトをしないでいた為ハンドルなどにあちこち叩きつけられた後開いた窓とトラックに頭を挟まれ、即死。

しかも住所不定、無職、いわゆる裏家業の人物だった故、即座に警察の処理で闇に葬り去られる事件となった。すこしばかり証言おかしくても面倒だと思ったらしく、あっさりと闇に葬られた。

突き飛ばされたバイクもただ転がったくらいでカウルは割れたけどその他は無事だった。

俺は車を売り払い、わずかばかりの金をバイクのライダーに見舞い金として支払おうとしたが
弟さんに使ってあげてという男気に負けてしまった。
泣いて詫びを入れた。

その夜の事件はあっという間に終わってしまったのだった。

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俺は仕事を早く切り上げて病院へ向かった。
弟が意識戻したよと連絡が入って夕べのせいで仕事もしたくなかったので速攻で向かった。
部屋に入ると家族みんないた。

「おう!げんきかー!!」

「ん?にーちゃんきたんか?」

「おう。お土産はさー急いでたからなんもねえ。ほら。」

ヨーグルトを会社で買ったのを持っていたのでそれをあげた。

「ん?何?何くれたの?」

手探りでヨーグルトを触っている。

「なんだ?おまえどうした…」

「おれさー。じつは目みえなくなっちゃんだよ。わはは。なんだ、これ、食い物なん?笑」

俺はワッっとなりそうなものを必死でこらえて勤めて平静を装ってほら、ヨーグルトだよ。食うか?と開けてあげた。が手がぶるぶる震えて容器をうまく開けられない。

そんな様子を見かねてかあちゃんが手をだしてくれて弟に食べさせてあげた。

「トイレちょっと行くわ。すぐ戻る。」

耐えられなくなった俺はすぐ部屋を出てあてども無くトイレを探したがぼやけてよくわからなかった。

しばらくして心が落ちついて、部屋に戻ってまた話始めた。

「まーよかったよ。意識もどってよー。まじ心配したぜー。」

窓を開けながら俺は弟を見ないで話した。

窓の外からはちょうど蕾になった桜を見下ろす事ができて爽快だった。
まだ咲いてはいないが、あったかい陽気とその風景は心を平静に保つだけの何かはあった。

「釣りいきてぇな…」
弟はそう呟いた。

「おう。いこな。コロと俺が連れていってやるからよ。」

窓の外の空に向かって心の中で突然こう誓った。

「俺のやりたい事は決まったよ。おじさん、おばさん。すぐは無理だけど。いつか。」

空には偶然にも飛行機雲は見えないかな?なんて思ったがまったく青空一枚だけで晴れ晴れとしていた。風はまだ薄ら寒くおれはゆっくりと窓を閉めた。

そしてベットの周りにいる家族の方へ、ようやく歩み寄った…