あれから10年。
中田は会社を辞めて実家の家業を継いだ。地元では有名なチェーン店になって大成功らしい。
すごく嬉しい話だ。
俺はしばらく数年ほど会社にそのまま残って勤めていたが、退職した。
工業意匠設計の仕事は面白かったがどうしてもやりたいことがあった。
それは相棒の様な、友達のような、ロボットのような。。。
車を作ることだった。
事故も起きない、よっぱらっても迎えに来てくれて勝手に車庫に入ってくれて、目が見えなくても運転できて、話も出来て、かっとばせて、運転も楽で。
まるで夢のような車である。そう。今はまったくの夢物語。
でも仲間たちと一緒にそんな夢のような車を作る企画を立ち上げた。
ひげのおっさんの知り合いに、俺はよくわからないが不動産信託というもので一代で財を築いた立派な社長さんがいて紹介してくれた所、なんと投資してくれることになったのだ。
ひげのおっさんも先日定年退職を迎え、一緒に仕事することになった。
弟のジローはコンビニの子と付き合い、その子は看護婦さんになりジローをケアしている。そして二人は結婚した。うっすらぼんやりは目も見えるようになったようだ。先日ジローには子供も出来た。犬のコロ入れ替わるように、春先に桜と共に散ってしまった。
アキトはカトーにハーレーを譲り、印刷会社を立ち上げて社長になった。
トモヤンはバイトしていた雑誌社で大出世し、今はなんと副編集長だ。
一番出世したんじゃないかな?
意匠設計部の写真担当をしていた元会社の同僚が、中国出張でお土産買ってきたよーといってわざわざ持って来てくれた。
渡してくれた包みをあけるとジャスミン茶が入っていた。隠居した親父が陶芸に凝っているので冷やかしにいって、あのくねくねに曲がって下手なのかうまいのか良くわからない湯のみで飲んでやろうか。
ハジメはお気に入りのグレー色のキーケースを握り締めた。