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llnagallのブログ

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仕事から終わって家に帰ると留守電が入っているのに気がついた。携帯には不在着信と表示されている。近所に住む弟からだった。めったに電話なんかしてこないのに、どーしたんだろう?
とりあえず、電話してみる。

「おう、どした。」

「あ、兄ちゃん?いや、なんかさあ、この間へビ坂で原チャリの族がうろついててさ、最近なんか原チャリ乗ってる他の奴を追っかけて遊んでるらしいよ。あそこしばらく通んないほうがいいよ。俺のダチがほら、いたじゃん、加藤ってやつ、あいつこの辺のヘッドだったじゃん。そんでこの間駅で久々会って暇だったから話したんだけどさあそんなこと言ってたから。聞いてる?」

「おう。そんだけか。」

「なんだよ、せっかく心配して言ってんだろ。そんでさあ、こないだ朝そいつら学校行く前に追っかけっこしてて、白バイに見つかって逃げてたらへビ坂ですっとんで、追っかけられてた奴も巻きぞいくってしかもトラックに轢かれてやばかったらしいよ。すげー事故だったって。」

「それいつだ、こないだって。」

「えー、2,3日まえだよ。たしか。」

んん?それってまさか、中田が事故った日か?たしかあの日はへび坂通るはずだったのに、いつもの抜け道使ってしまって会社に行って猫轢きそうになった…あの時かあ!

「おい、まじかよ。それ。」

「んだよ。だから行ってんだろ。兄貴、原チャリ乗ってるからぜってー狙われるって思って言ってんじゃん。」

「でも見た目はふつーだろ。だいじょーぶだよ。」

「いや、甘いなあ、見た目フツーとかじゃなくて、フツーの癖に乗り方おかしいじゃん。だから待ち伏せされんだよあいつら暇なんだから。」

たしかにそいつは巻きこまれたら面倒な話ではある。でも俺の乗り方、おかしいか?そんな。

「おお、ごチュウコクどーも。気をつけるよ。それだけか?」

「もう、まじであそこ通らないほうがいいよ、シカモ夜はね。もう加藤ヘッドやめてるから効果ねえし。気をつけなよ。」

「おう、どーもな。電話。」

電話を切るとなんか恐ろしくなってきた。それは、別に小僧の族に対してではない。いや実際追っかけられたりしたら怖いのは当然だが、そんなことよりも、あのヘビ坂を偶然にも通らないで済んで、助かったという事実とココ最近おこってる変なことがみごとなまでにいろいろと結びついていることである。いったい、なんなんだろう?

まじかよ。あの日はいつも通り、というか考えことさえしなければ、道を変えていたから確実にへび坂を通るはずだった。だけど今までずーっと通っていた抜け道をついついうっかり引き寄せられていつも通りに通っていた。つまりは…猫轢き損ねたとかそういうのではなくて…

俺自身の、事故を免れてたわけか?それにキズイタ瞬間驚愕した。
なんと、助けられたわけかあ。黒猫の方はたまたま偶然(なのかは分からないが)であって…
よくわからん。っが、しかし、助かっていたのは事実のようだ。

なんとはなしに、表に止めてる原チャリを見に玄関を開けて外へ出てみた。
見た目こそふつーではあるが、俺の乗り方は異常かな。
限界まですっとばして朝のタイムを勝負してるから、街乗りではヘタすると100ccの原付より早いこともあった。見た目が外観はいたってどこもいじってないどノーマルだけにみんな驚く。

しかし、なあ。そういうのに小僧どもはイラツクんだろうな。と思う。俺自身、まだまだハナタレ小僧のときは、やっぱりいきがったりしたもんなあ。分かるけど。もうお兄さん、っつーかおじさんの域に入ってる俺には、どーかからんでほしくないね。幽霊よか、現実に痛い目に会う方がやだもんね。

もしばったり出くわしたらまあ無視すっか、謝って、最悪はバトルでぶっちぎって逃げるか。それよか、これからは、なにごとも安全な電車通勤のほうがリーマンっぽくていいのかな。やっぱ。と考えてしまった。いやいや、寝坊すけの俺には無理な話だ。それよか、安全運転を心がけよう。と心に誓ったのであった。

翌朝、出勤すると、またまた会社の様子がいつもと違う。なんか静かである。
席に着くととなりの鬚のおっさんから

「回覧。」

っとボードをよこして来た。おっさんの目は珍しく厳しい。いつもその人柄の滲むやさしい目をしてるのだが…。

なんか目も赤くなってる。どしたんだ?

「どーもっす…」

回覧を受け取って読む。

「先日、事故に遭われた吉村 豊さんが亡くなりました。告別式は…」

嘘だろ…。とうとう死んじゃったのかあ…。
おっさんは重い口を開いた。

「おまえら、若いのは1000円くらいでいいよ。俺は同期だったから、もっとだけどよ。」

もちろん、香典の額の話である。

「よしさんとおっさん、同期だったんすか?」

「おうよ。あいつ見た目わけーけど、俺と同じよ。あいつずーっと車で遊んでて結婚遅かったし。」

「そうだったんだ。んじゃ。先輩はお通夜とか行くんですか。」

「そうだな。まあ、行くかな。お前は、仕事とか別に一緒にしたことまだなかっただろ。だからあんまし知らんだろ」

「はい。でも話したことくらいはありますよ。俺も行こうかな。お通夜。」

「ほんならまあ、いくんなら一緒にいくか?」

「ええ、そうします。」

お通夜には隣の鬚のおっさんと行くことにした。見たことある会社の面々。偉い人もちらほら。うちの部署の親分も見えた。あのひともいやみやきついこと言うけど、こういう面ではすごくいい一面を見ることができる。

まあ、家ではきっといいとうちゃんなんだろうな。なんてみてるとまた仕事の話切り出されそうなので、そそくさと離れておっさんと列にならんだ。不思議というか、会社の人でもあんまし馴染みはなかったせいか涙はでてこなかった。悲しい気持ちはあったのだが。

よしさんは実家で両親と共に住んでいた。ずいぶん大きな家である。今は引退されたが父親は大きな病院の院長だったらしい。どうりで。そんな家だったから車遊びもできたんだろう。

式は終わって帰り際、鬚のおっさんは「ちとトイレ。トイレ。」と言って奥に行ってしまった。
俺はぼんやりと受け付けテントの前で待っていた。おおきな庭にはガレージがある。

医者っぽい、大きなドイツ車の隣に小さなカバーを被った車がもう一台止まっている。
なんだろう?またまた好奇心が沸いてくる。悪い癖だ。みんなあちこちで会話してて、ちっともこちらを気にしてるようには見えない。

ちょっとだけ近寄って見た。大きなドイツ車のせいで小さく感じたが、全長に対して、ずいぶんと横幅が広い。

なんだろう?タイヤだけちらっと見えた。それはあのマシュマロマンみたいなキャラのマークのタイヤだ。

ホイールには0・zと書いてある。ピンと来た。よしさんのラリーカーだ。
見てーナー。でもいきなしカバーとって見るのはぶしつけにもほどがある。

もじもじしてると後ろから

「それ、オーロラだよ。ラリー用の。」

とおっさんが声をかけて来た。

「なんだ、脅かさないで下さいよ。ションベンもう済んだんすか?ってか、なんで知ってるんすか?」

「だってよ、俺のっけさしてもらったんだよ。こないだ。」

「ええ?」

「それ、こないだ出来あがってよ。あいつ、俺と違って子供いねーじゃん。しかもこんな家だしよ。金あるんだよ。んで、知り合いにたのんで作ったらしいよ。でも二年もかかったらしいけどな。ふつーじゃ、買えないよ。そんなん。」

「まさか、オーロラ、っつってもラリー用の!?あのWRCとかに出てた??」

「おうよ。それそれ、よく知らんが。すげーがくがくすんだよ。乗り心地。腰いてーってなんの。

こいつ出来あがってよ。俺あいつと輸出で一緒に仕事してる仲だしよ。入社してからの一番の友達でよ。こないだちょっとのるかー?って声かけてくれてよ。ナンバー無いのにそこら走しちゃったよ。まだ真っ白でよ。ふつーっぽいから、ばれんかったよ。まあ、おれは横乗ってるだけだったからばれてもいいんだけどね。はは。」

鬚のおっさんは笑って鬚をしごきながらそう言った。目にはうっすらと涙がにじんでいた。

「あいつ、これ乗って今度はでけーラリーに出るって張り切ってたのになあ。おしーよなあ。個人でここまで気合入ってやってる奴はそうはおらんだろうに。なんせ、プライベーターでもトミタのディーラーとくっついて出るとかなんとか言っとったらしいしなあ。」

そこまでいうとおっさんはタバコをフカシ始めた。こないだ止めたって言ってたのに。
まあ、いいか。今日は。そのおそらく真っ白なのであろう車は、薄汚れたシートに覆われてもう2度と帰ってこない主人を待っている。

「そろそろ帰るか。」

一服終わったおっさんはそう言った。
二人はガレージから狭いテントの脇を通り抜けようととした時ガレージから

パッ!

とライトのような閃光が走った。
おっさんと俺はびっくりして目を合わせた。
二人でガレージの方を見ると、ガレージ用のライトが点灯していた。
もうすっかり日が落ちて暗くなったので家の人が付け忘れたライトにスイッチを入れたようだ。
きっと帰りの人に気を使って忘れていた電気を付けたのだろう。玄関灯も増えていた。

「なーんだ、電気つけたんだよ。」

そうおっさんはつぶやいた。でも俺にはどうも府に落ちなかった。閃光が下からも来ていたように思ったからだ。でも見たわけで無いから良くわからない。
しばらくして、よしさんの大きな家を後にして鬚のおっさんと駅に向かって歩いた。
俺は電車の中で考えていた。おっさんはこっくりこっくりと寝ている。

俺はきっとあの車が挨拶してくれたんではないか?とずーっと思っている。
一瞬だけど、ヘッドライト光のように思ったからだ。
きっとおっさんもそう思ったはずだ。
だから二人でびっくりして見合わせたのである。
まあ、気のせいかもしれない。でも挨拶してくれた。

そう思ってるほうが面白いじゃん。そう俺は心のなかで思い続けた。
あのラリーカーと天国で思う存分、走り回って下さい。
そう思って心の中で合掌するとはじめて涙が出そうになった。

「ふわわ。」

大きなあくびをするふりしてごまかす。
横でおっさんはいつもとかわらないスタイルで居眠りをしていた。
俺もゆっくり目を閉じると電車のゆっくりした揺りかごのおかげでマドロンでいった。