がくがくしながらも、国道246に入り、家の方へ向かう。まだマニュアルに慣れてないせいで右折の時、止まりそうになる。怖い。うーん、これはしばらく乗って慣れないと、とてもじゃないがスカイマークなんかおっかけらんないなあ。
と思いつつ、手に汗を握りながらその目撃者でもあり、ジローとなんらかの関わりがあると思われる人がいるコンビニへと急ぐ。それにしても、浅はかだったなあ。そーなんだよ、いっつも。
ギアをセコ~サードへ入れる。
なんで目撃者とか探したり、周辺を聞くとかそういう調査とかに向かわないんだろう。おれはほんとバカだ。としみじみ思った。それに比べて、あの大男、アキトはすばやくそこら辺に気付いて迅速な行動に移している。しかも遠回りと思える事だけど聞きこみまがいのこと地道にしてるし、なんせ本気で捕まえてやろうという気持ちもわかった。
「あいつは頭もいいし、だてに小僧どもを占めてたわけではないな」
と思った。しかし、ジローは何を世話したんだ?あいつに。まあ、そういう誰とかあまり人嫌いせずに、誰にでも困った時に優しく助ける気持ちをもっているのんびりした奴だったもんなぁ。ジローは。俺にも電話して気をつけろなんて言ってくるくらいだし。
それに比べてなあ。おれは。激怒して暴れにいってしまっては、問題が解決するだけでなく、余計ややこしくなってしまう。おまけにその犯人と同じレベルになってしまうではないか?そんなことを考えてしまった。
落ちはよくわからんまま動いて、相手を間違えてるし。まったく。車という、密室空間は人を違う次元に、気持ちまで運ぶ。そして不思議な事に落ち着くこともできる。
それにしても…
警察はあてになんかなんない。もちろん調べてもらったり、実際つかまえて欲しいし、邪魔するつもりもない。だけど探偵なんか雇うったって、莫大な金いるし…1週間じゃ嫌がって駄目だろう。なんか警察には不信感というかあてにならないような気がしていた。
やっぱ、これは急いで、足と頭を使って冷静に、探して捕まえねば。
そうハジメは心で誓った。
「俺がぜってーつかまえてやる。」
そうこうしてるうちに、コンビニに着いた。果たしているのかな?その例の子は。
ドアを開けて中に入る。レジを見るとせわしく動いている店員は男だった。いないなあ。っと店内を見まわす。あ!いたいた!!その子は店の奥の弁当のところで棚卸の男といっしょになんかしている。
「すいません、あのう、…」
後ろから声をかけると振りかえって、こちらが誰か気が付いたようだ。
「あ、お、おにいさん…ですか?ちょっとまって下さい。」
女の子はすばやく手にしていたものを男の店員に渡し、すこし休憩しますと告げる。
男の店員は怪訝そうにこっちを見てから、すぐもどってくれといってオッケーを出した。
二人で店の前の駐車場で立ち話を始めた。彼女は切り出した。
「あのー最初に言っておかなければならないことが…」
「ん?」
「実は、ほんとは警察の人に言われたんですけどぉ…。誰にも事故のことはしゃべってはだめだって。なんか、被害者?と加害者?のどちらにも接触して話たりとか関係してない人にむやみに事故や事件の事をはなしてはならないっていう法律があるらいんです。私、だからもうあんまし話せない…で、でも、もし、犯人捕まって、どこか、裁判とかで話さないといけないとか、そーいうのあったら、絶対、私話しますから。そのときは絶対、証言とか、そーいうの、しますから。」
また涙目でまるで訴えかけるかのように話す。
「でもこれだけはおにーさんに言わなきゃと思てって。おにいさん、車とか好きそうだから。あの私見たの。あのあと、車を。キキー!って言った後、ころちゃんワンワン吠えてて、おかしいなあ?ってお外に飛び出したら車が急に走って行って。黒い車だったの。スカイマークって書いてあった。ちょっと古っぽかったけど…」
「もしかして救急車とか呼んでくれたの、君なの?」
こくりと小さくうなずいた。
「そっか。おれはそういうの知らなかった。しかも話しちゃだめなのね。車もわかったし。もういいよ。ありがとう。じゃあ、もう話さなくていいから。あともし逆に犯人とかが君の存在を
まあ、知らないとは思うけど、知ってしまって。その、脅すわけじゃあないけど、なんかあったら、その時は絶対連絡して。これわたしとくから…」
名刺を差し出した。
「あ、ありがとうございます。でもたぶんそういうことなら、カトウ君やあのアキトさんもいるし、大丈夫です。で、ジロー君、大丈夫ですか?」
「ああ、まだ、寝てるけど、大丈夫だよ。きっと…。そうだ、んじゃあ、最後にこれだけきいてもいいか?」
「はい?」
「あの、さ。単刀直入に聞くけど、君はジローの彼女か、なんか…なの?」
「…え、ええ?ってゆぅか…まだ、付き合ってないってゆぅか…。昔、中学の時に一緒のクラスとかで…。んで、久しぶりに最近知り合って、こないだ、ジロー君にコクられてぇ…。こんどデートに行く話とかしてぇ。」
女の子はもう泣き出していた。
「わかった、ごめん、ごめん、いいよ。今度、行ってあげてくれ。デートに。っつーか、見舞い、来てやって。ね。」
俺も泣きそうになっているのをごまかしながら、っじゃ。といって車に乗った。
家に戻るまで車の中ではやはり
「その犯人をぶっころしてえよ。」
と思ってしまった。しかし、だめだ。そんな事、思っても、まずは冷静に落ち着いて犯人探さないと。しかも、犯人と同レベルでは…そして、車も、いじらんといかんなぁ。と考えていた。
しても、いったい、日本はなんて国なんだ!?っと怒りは収まらない。
なんで、被害者の家族が事件の目撃者、しかも助けてくれた人の接触も本来は駄目だと言うのだ。今回もたまたま、こういう知り合いとかでなければほぼ間違い無く事件が解決するまではうまく会うことなどできなかったであろう。日本の法律はどうかしている。悪い奴等は、その網目を逆に利用している。
しかも加害者の人権。んじゃ、被害者の方はどーなんだよ。守ってくれもしない上に、犯罪者の弁護まで。んなら、こっちも目には目を。そのくっだらねー融通のきかねえ法律にかまわず、守るもんはきっちり守る。っと思ってしまった。これはまるでいけない事なんだろうか?
家に着いてから、まず、最初のプランからとりかかった。昭和61年型、トミタ、コロネGT-R2000クーペ。4WD。超希少車。今は86全盛時代だが、ハっきり言って相場が高い。おまけに全部、ほとんどが事故車でたまにキレイなのが出てきても、高い上にすぐ納車は無理である。予約してる人が多いのだ。それに比べて、この車は超マイナー。しかしデザインは86よりも良い上、グレードも当時、格上だった。
エンジンもターボではないが、当時ラリーに出ていた、エリカと同じ、3S-G型式2リットル直4エンジンが乗ってる。
シャーシや素性も良い。しかもワンオーナーで大事に乗るおっさんが多いのか?程度はかなり良い率が高い。この車もそれにすべて当てはまっていたようで、すこぶる調子が良くまだまだいけそうだった。
だが…
相手が国産最強と言われるスカイマークGT-R。同じGT-Rでもわけが違う。
向こうはグループA仕様のレースで開発されちゃったのがそのまんま市販されちゃってるみたいなもの。とんでもない化け物。排気量も上、ターボ、足回りその他、ノーマルでもすごいレベルである。
ちょっと古いと聞いても、安心などできない。
それに比べて、こっちはNA。せいぜい150馬力くらい。うーん。しかし負けるわけにはいかない。
高速でなくて、下道での勝負なら…
一般道路で、混んでいれば、スピードやパワーよりも、足回りバランスと出足、あとどの域でも回せるNAにスーパーチャージャーチューン。それかエリカのターボを無理やり組みこんで付けるとかもあるかな?
つまりはラリー仕様。そしたら2?0馬力くらいでバランス取り。
これだったらいける、「かも」しれない。あくまでも「かも」。
戦闘力をあげても、腕が。無い。まあ、最悪は体当たりだなあ。車はこっちは元が中古だし。
別にぶっけて壊してもなんとも思わんし。ぶち当ててでも捕まえる。
とにかく、始めよう。パーツ探しから始まった。つくっちまえば、あとは作戦だ。
今の時代はインターネット全盛時代。パーツはすぐさま、そういうスキモノネットワークから速攻で揃える。そして、トモやんに連絡をつけた。こないだとは理由けが違う大物の改造。おまけに夜中からの制作。しかし、トモやんは快諾してくれた。トモやんにすべてのわけを話して晩飯を一緒に食う。
近くのラーメン屋で飯を奢った。
そして製作はトモやんの知り合いの修理屋ですることに決めた。開始時間夜の10時から。
なんせ与えられた1週間のもう1日が過ぎてまうのだ。
フロントとリアのタワーバー、バネ交換、シート&内装はがし、足回り組みこみ、エアクリーナ交換その他できそうなことは俺とトモやんですべて取りかかる。
問題のエンジン、マフラー、コンピュータ書き換え、蛸足。あとアライメント調整など専門の事は、トモやんの友達にお願いする。明日の朝の即金、現金払い&上乗せで話に乗ってくれたのだ。朝、もう空が白んできたころ、ライトチューンのコロネは出来あがった。
3人はもうヘトヘトだったが、新聞配達のカブが走りまわる道路に車を出す。
ホントは気合でいろいろ他にもやりたかったけど、なんせ時間が無いので一番効果的にパワーを搾り出し、足回りのバランスの取れる方法を取った。消耗品は1週間もてばいいので、今回は無視。
ぶわわわーん。柿木製ステンレスマフラーから搾り出される乾いた音が朝から響く。
ちっこんちっこん。ウインカーを出して試走してみる。
この車はもう法規を無視しているので素晴らしく良い音が車内に響き渡る。
1週間戦闘仕様。
きゅいーーん。ポン付けターボの音が鳴る。そう、86お約束、4AG用のを流用でポン付けしたのだ。かきん!っとTDR純正シフトが決まる。第3京道路の下道の直線でリミッター解除されたエンジンのチェック。
そして河川敷道路に出る。またストレートでパチンっとスイッチをオンに入れてメーター下の
ボタンに手を伸ばそうとして、止めた。これは実戦で、数回しか使えない。
このアイデアはそのともやんの友達だ。うまくすれば…追いつけるかもしれない。。
だけど、この改造でこの車はもう駄目だ。かわいそうだが。
おっと、赤信号だ。急ブレーキ。ブレーキもパットだけは交換して正解だ。エンカイ、ヨコハマのホイール&タイヤもすこぶるバランス、愛称よし。セッティング出しもばっちりだ。
これでいけるかもしれない。もうへとへとで朦朧としつつもそう確信した。
そして修理屋へ戻る。
「うん、いいぞ。これならいける。あとは俺の腕だけかな。」
苦笑いした。
「いやあ、峠でこいつは目立ちますよ。なかなか。」
と修理屋の兄ちゃんは微笑む。修理屋の兄ちゃんはてっきり走り屋と勘違いしてくれてるのである。しばらく仮眠して朝いちで銀行に行って金を下ろし修理屋のお兄ちゃんに払った。貯金0円。
これでもうまた数年は厳しい生活だ。ほんとは新車ほしかったんだがなあ。ま、いいか。
帰り際、トモやんはネムそうな顔で呟く。
「俺もすかんねん。そのスカイマーク。」
「なんだ?」
「いっしょに探すわ。その話、のったぁ。」
「おいおい、ええんか?ってまきぞいにはできないよ。いくらなんでも。そこまではいいよ。この車だけで十分だよ。」
ともやんはいわゆる、フリーター。こないだまで勤めてた会社を辞めて今はブラブラしている。
たしかに暇な時間はあるんだろうが、今回はかなりリスキーな上、金にも名誉にもならない。どっちかーつうと犯罪者よりかもしれないのだ。だから、巻きぞいにはできない。
「いや、なんとなく、かもってみてーんよ。そのGT-R。どんくらい速いかなあ?」
ニヤリと笑った。この男も本気だ。しかもあのホソダのブレードバードとかいうでかいバイク。
あれなら間違い無くスカイマークでも逃げられるまい。たしかに頼りにはなる。
「まじで、いいのか?」
もう一度尋ねた。
「おう。ええねん。んで、どうするよ。」
「おれちっと考えがある。アキトのアイデアではちょっと時間かかるし。でも良いヒントにはなったよ。」
「へえ。どんなん?」
「それはあとで話すよ。とりあえず帰って寝よう。もう死にそーだ。」
「そだな。」
すっかり陽はのぼり明るくなっている。仮眠をとったが、まだくたびれてる。
ともやんを家に送ると急いで自分の家に戻る。さて起きたらまた探偵ごっこ開始である。
寝る前に、疲れを癒すためにビタミン剤を手にする。冷蔵庫からお茶を出す。
ふとテレビをつけるとニュース。奥様向け番組。なんか健康についての番組らしい。
「食べ合わせは気をつけないといけません。春先の旬のものには…」
食べ合わせねえ。なにげなくお茶で薬を流しこんでから、ふと思った。
「薬ってお茶とか、あんましよくないんだっけかなあ…?…ん!?」
おれは、なんとなく恐ろしい事実にキズイてしまった。どうも、ビタミン剤を前は普通のお茶や水で飲んでた。
でも、こないだからはこの…ジャスミン茶だ。ペットボトルを見つめる。
「そして、そのあと、不思議な事が起こっているもんなぁ…」
なんなんだ。これは…
「普段、体に良いと思っていても、その組み合わせ次第ではたいへん逆効果になるんですよ。」
番組ではなんか料理の上手まそうなおばさんがそんな事を言っている。
もう、飲んじゃったよ…。
中国4千年の歴史のお茶と、現代医学のサプリメント。この組み合わせが、こないだからの出来事なのか!?とりあえず、寝て、またなったら考えよう。
疲労困憊の俺にはもうどーでもよく、とにかくぐっすり寝たかった。ベットで横になると、あっという間に落ちて行った。