出題者:七井翔子さん

Q1 黒・鍵・心
浮世の流行にどっぷり浸かって、乾いた言葉で世間を玩ぶのも良いだろう。
ノッてるねぇ、かっこいいぜ。
だが、世の中を変えた偉人の殆どが、隔離された遠いところから、誰よりも真剣に俺達の未来を思い続けた奇異な人々であったことを忘れてはいけない。


Q2 夏・君・赤
はじめて一緒に歩いた日、君は淡い色のワンピース姿で、素足にサンダルを履いていたっけ。
穴だらけの東南アジアの裏道、足元に気をつけて歩け、と諭したにもかかわらず、君はとてつもなく無頓着だった。
君の瞳は遠くの綺麗なものばかり見ているから、君の足元の危険は俺が見ていなければならなかった。


Q3 四角・未来・優しさ
再開発でにぎやかになった場所には、お年寄りが居ない。
連れてきてあげよう、と思う人が居ないのだろう。
本当はお年寄りだって生まれ変わった街を見たいと思っている。 俺のばあちゃんなんか93歳だけど、夜のお台場が大好きで、ひなびた温泉場に行くよりも、キラキラしたパチンコ台みたいでワクワクするって言ってたぜ。


Q4 無機質・風・貫く
世の中が悪くなるのは全て俺達大人のせいだ。
「悪い世の中になりましたねぇ」と他人事の様に言う人がいちばん罪深い。


Q5 自然・束縛・小さな手
役小角が葛木山の一言主を幽閉してどの位の時間が経ったのか、つたの絡まる谷底から、一言主の小さな手が、今でも「たすけて」と叫んでいる。
役小角と一言主のエピソードを思うたび、ヒーローが必ずしも正しいとは限らない事を痛感するのさ。


Q6 時代・生命・限りない
こうやって日々同じ様に安穏と暮らしているとサ、おサルさんに毛が三本生えた日から、人間なんかこれっぽっちも変わっちゃいねぇんだなぁ、って思うねぇ。


Q7 蝶・夢・孤独
灼熱の夏、売れない営業マンとして苦悶していた頃、俺を励まし勇気付けてくれたのは、ひらひら舞い飛ぶ蝶々たちだった。
気が付かなかったけど、夏になるとホントたくさんの蝶々が飛んでいるものだなあ。
外回りする様になって、ようやく気が付いたよ。


Q8 喜び・遠い・涙
近所の床屋のおばちゃんは、病魔と戦いながら床屋を続けた。
半年振りくらいに髪を切りに行った時、疎遠になってしまって申し訳ないな、と思っていたら、顔に出たのか、俺の心を見透かす様に
「元気な顔を見せてくれるだけで、おばちゃん幸せよ」
って言ってくれたナ。
亡くなっちゃったけどな。


Q9 愛・終わり・アルバム
嫌いじゃなかったけど、別れた方がお互いのためだと決断し、それでもやっぱり俺は愛していたのだ。
本当はどうすれば良かったのか今でも分からない。
分かったところで今さら時間が戻る訳でもないヵ。


Q10 見えない・境地・忘却
自分が世界の中心なんだから、自分の事は自分で何とかしろ。
自分の事をしっかり出来れば、次に何をしたらいいのか見えてくる。
・・・と、お釈迦は言いたかったんじゃないかなぁ。


Q11 プレゼント・蒼・過去
薔薇を一日一本、10年間プレゼントし続けた俺は、彼女とどんな会話をしたのか、忘れた。
何の為にプレゼントし続けたのだろう。


Q12 二次元・デジタル・都会
ブラウザの向こう側には、ぺヤングを流しにぶちまけ、自転車のサドルにコンビ二の袋をかぶせ、慌ててホームに駆けのぼるけど電車が居ない、吐き捨てられたガムを踏んづける、地元の友達を大切にする、ちゅーをすればドキドキする、転べばひざっこぞうから赤い血の出る、そんな普通の人々が居る事を想像し続けなきゃダメだぞ! 想像し「続ける」のだ。


Q13 溢れる・雨・消える
うちの近所には武蔵野線のアンダーパスがあってね、そこには「冠水時通行禁止」って書かれた看板が設置してあるんだ。 で、何年か前の夏、ものすごい集中豪雨の晩だったな。何も知らない自動車が水の中に消えて行ったのを目撃したねぇ。
ありゃア凄かった。


Q14 月・冷たい・破片
俺はお月様が大好きだが、お月様が俺の事を好いてくれてるかは分からない。


Q15 温もり・二人・約束
何が幸せって、女の子と布団の中に居る時が一番幸せなんじゃないかな。甘い囁きとかしてさ。
で、その時話したことをけろっと忘れて、後で怒られるんだよ。






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