斎#10]能登半島地震に伴う災害派遣の自衛官の移動費及び代休取得に関する質問主意書 | NHKから国民を守る党(質問主意書、などなど。。。)

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第213回国会(常会) 質問主意書 質問第二五号
令和六年二月七日 齊藤 健一郎     参議院議長 尾辻 秀久 殿

能登半島地震に伴う災害派遣の自衛官の移動費及び代休取得に関する質問主意書

 令和六年一月一日に発災した能登半島地震に伴い、防衛省は、発災当日に金沢に駐屯する第十四普通科連隊を投入し、翌二日に統合任務部隊を編成してその対処にあたったが、その自衛官の帰隊費用及び代休取得などに関して、以下質問する。

一)発災時の令和六年一月一日は、多くの自衛官が冬期休暇を取得し、旅行や帰省などで部隊から離れていたと承知しているが、一月一日の能登半島地震発災に伴い多くの隊員が、災害派遣という自衛官の使命を果たすために速やかに部隊に帰隊した。これら自衛官は、帰省や旅行のために予め航空券等を自費で取得していたが、発災に伴い、事前に購入した航空券等をキャンセルし、あらためて航空券等を取得して部隊に帰隊した。災害派遣に参加するための航空券等のキャンセル費用及び航空券等の再取得費用は自衛官個人が自費で負担したものであり問題であると考える。

 令和六年一月二十四日の衆議院予算委員会において木原稔防衛大臣は、この問題に関して、国家公務員等の旅費に関する法律によって隊員の帰省等を私事旅行とみなし、公務出張には当たらない旨答弁しているが、帰省等の私事旅行を命令によって強制的に中断し、災害派遣に参加させることを私事旅行の範疇に含めるというのは法律の不備と言わざるを得ず、私事旅行先から勤務地までの命令による帰隊は公務出張に含めるべきであると考える。特に、災害はいつ起きるか分からず、通常の公務出張と比較すること自体が不適切であると考える。

 また、隊員の負担も大きいものがある。災害派遣に備え帰隊する場合、例えば航空券の再取得は、直前料金とならざるを得ず、事前に取得していた料金と比較して割高である。ましてや、今回は年末年始の繁忙期であり、航空券は通常期と比べて割高な時期であった。二士の隊員の給与が約十八万円である場合、手取りは約十四万五千円だが、その中からキャンセル費用及び直前の割高な航空券を再購入させることは、隊員の士気を著しく低下させていることにつながっているのは間違いない。参考として日本航空及び全日空は、約五十~六十%のキャンセル費用がかかるが、事前に取得していた航空券を二万円、再取得した航空券を三万円とした場合、キャンセル料と再取得費用の合計は四万円~四万二千円となり、二士のその月の実質的な手取りは約十万円となる。このような職に誰が就きたいというのか、現状を見れば明らかである。

 自衛官は特別職国家公務員であり、全国転勤をする職種だが、帰省を中断させられて帰隊する費用すら国が支出しないとなれば、自衛官の成り手不足の深刻化、更には国家公務員全体の希望者が不足することは明白である。そして、この帰隊費用自腹問題は、自衛官の全国転勤を阻害し、全国転勤希望者を低下させる要因となり、引いては防衛力、国力の低下に繋がる。

 任務のための移動を私事旅行の範疇に含め、自費購入をさせる慣例は大きな問題であると考える。災害派遣など職務上必要な部隊への帰隊費用については、国家公務員等の旅費に関する法律を鑑みたとしても、本来政府が支出するものであると考えるが、政府の見解は如何。
一について)国家公務員に対して支給される旅費については、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二十五年法律第百十四号)において定められており、同法第三条第一項において、旅費は出張した場合等に支給するものとされているが、帰省は私的な旅行であって同法第二条第一項第六号に規定する出張には当たらないため、在勤地と帰省先との間の移動に要する費用については、旅費は支給されない。
 また、私的な旅行について国費を支出することに係る他の根拠も存在しないことから、御指摘の「災害派遣など職務上必要な部隊への帰隊費用」について国費を支出することはできない。


二)災害派遣で使命を果たすために多くの隊員が平日だけでなく休養日も勤務していると認識しているが、その代休の取得状況は芳しくないと認識している。本来、自衛隊法施行規則によると休養日に働いた場合、部隊長等が指定して隊員は代休を取得できると承知しているが、業務の偏りにより代休が取得できない隊員がいると認識している。また、人事教育局長による隊員の勤務時間の運用について通知が出されており、その中では、代休の発生日から原則八週間以内に指定するとされているが、原則はほぼ無視されていると認識している。また、代休の付与には期限が設けられており、五十二週以内に代休を付与しない場合、その権利は失効するものと認識している。これまで、多くの代休が失効して、隊員に無報酬の長時間労働を強いている現状がある。年次休暇の取得どころか代休の取得もままならないとあっては、隊員の士気は高まらない。
 代日休養の指定が部隊長によって原則通りなされていないことは問題と考える。また、五十二週経過による代休の失効についても問題である。更に、人事教育局長が代休の付与に五十二週間で失効する期限を設けることは適切ではないと考える。そして、一部の隊員、特に幹部に代休の付与がなされていないと認識しており、これらは改善すべきと考えるが、政府の見解は如何。
二について)御指摘の「代日休養の指定が部隊長によって原則通りなされていない」及び「一部の隊員、特に幹部に代休の付与がなされていない」の事実関係について政府として全てを把握しているわけではないが、長時間労働が継続することは、心身の健康や福祉に害を及ぼすおそれがあることから、所属長(自衛隊法施行規則(昭和二十九年総理府令第四十号)第四十四条第十二項に規定する所属長をいう。以下同じ。)は、自衛官に対し休養日の勤務を命じた場合には、同令第四十三条第三項等に基づき、命じた勤務時間に応じて休養日以外の日に休養させることができることとしており、また、「防衛省における女性職員活躍とワークライフバランス推進のための取組計画について(通達)」(令和三年三月二十五日防人計(事)第四五号)において「休養日又は休日の勤務を命じた場合には、命じられた分に相当する代日休養又は代休日を指定するよう努める。」としているところであり、これを改めて周知するなど、御指摘の「代日休養」の取得促進を図ってまいりたい。
 また、御指摘の「五十二週経過による代休の失効についても問題である。更に、人事教育局長が代休の付与に五十二週間で失効する期限を設けることは適切ではない」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、先に述べたとおり、長時間労働が継続することは、心身の健康や福祉に害を及ぼすおそれがあるため、休養日において勤務を命ぜられた自衛官に対し「代日休養」を取得させることについての実効性を担保する観点から、一定の期間内にその期限を設けることは必要な措置であると考えている。


三)前記二で指摘した代休取得に関する問題は、自衛官の長時間労働を生む温床となり、近年の自殺率の増加や採用の悪化にも影響を与えていると考えるが、政府の見解は如何。
三について)お尋ねの「近年の自殺率の増加や採用の悪化にも影響を与えている」か否かについては、様々な要因が影響していると考えられることから一概にお答えすることは困難であるが、二についてで述べたとおり、長時間労働が継続することは、心身の健康や福祉に害を及ぼすおそれがあることから、所属長は、自衛官に対し休養日の勤務を命じた場合には、休養日以外の日に休養させるよう努めることとしており、これを改めて周知するなど、御指摘の「代休取得」の促進を図ってまいりたい。


四)自衛官の災害派遣手当は、派遣された職員の滞在に必要な実費弁償としての性格を有しており、日額千六百二十円、作業が著しく困難な場合は日額三千二百四十円とされている。東京都の災害派遣手当等の支給に関する条例を参照すると、災害派遣一日あたり、三千九百七十円(公用の施設又はこれに準ずる施設)又は六千六百二十円(その他の施設)となっており、単純に比較すべきではないと承知しているが、明らかに自衛官の待遇が悪い。自衛官は最前線で人命救助や生活支援に従事しており、最も厳しい任務にあたっていると言えるが、その待遇が他の公務員に比して悪いことは自衛官の士気低下に繋がる。災害派遣手当を増額し、自衛官の待遇を改善すべきであると考えるが、政府の見解は如何。
  右質問する。
四について)御指摘の「東京都の災害派遣手当等」は、災害派遣手当等の支給に関する条例(平成七年東京都条例第七十六号)第二条及び別表に定める支給要件を満たす場合に支給されるものと承知しているところ、自衛官に支給される災害派遣等手当は、防衛省の職員の給与等に関する法律施行令(昭和二十七年政令第三百六十八号)別表第五等に定める支給要件を満たす場合に支給されるものであり、これらの手当の趣旨が異なるため、その額について一概に比較することは困難である。
 いずれにせよ、自衛隊員の人的基盤の強化を図る上で処遇の向上は重要と考えており、適切な処遇の在り方について、引き続き検討していく考えである。