公益認定の専門家
銀座の行政書士 齋藤史洋です。
いつもありがとうございます。
ご存じの方も多いと思いますが、公益財団法人日本ライフ協会(以下、ライフ協会)が高齢者の預託金を流用したことが、大きな社会問題になっています。
http://mainichi.jp/articles/20160206/k00/00m/040/094000c
高齢者から集めた預託金を流用した公益財団法人「日本ライフ協会」(東京都港区)=民事再生手続き中=について、内閣府の公益認定等委員会は5日、同協会の公益認定を取り消すよう安倍晋三首相宛てに勧告した。2010年7月に公益認定を受けた同協会は認定を取り消される見通しとなった。
私自身は、新公益法人制度が発足した当初から、一貫して公益認定申請に実務に携わっています。
簡単に言うと、「公益財団・社団法人を設立したい」という方のお手伝いを専門にして、約8年の経験があります。
公益認定を取得した公益法人に対して、コンプライアンス指導・研修等も行っています。
ですので、このように公益法人がからむ不祥事については、他の士業の先生から質問されたり、マスコミの方から電話で質問されることがよくあります。
公益法人と関わりの深い専門家の立場からは、今回のライフ協会が引き起こした不祥事には、実に様々な論点が含まれていることが分かります。
今回の不祥事を素材にして検討することは、現に公益法人として活動されている団体や、これから公益法人化を目指す非営利団体の方にも役立つことだと思いますので、時間があれば、何回か記事を書いていきたいと思います。
まず今回のライフ協会の不祥事は、
1.公益認定法の「枠内」の問題
2.公益認定法の「枠外」の問題
この2つに分けて考える必要があります。
前者は、公益法人として当然の法令遵守がなされていなかったという問題です。
ライフ協会は、公益認定法(を含む関連法規)を遵守すべきだったのに、公益認定法を無視した運営を行ったという問題です。
それに対して、後者は、公益認定法(公益法人を規制するスキーム)の問題ではなく、もっと大きな問題です。
つまり、
・高齢者の支援行う事業者に対する実効的な規制・監視のスキームはどうあるべきなのか?
・高齢者の権利を保護するスキームはどうあるべきなのか?
という類の問題です。
1.公益認定法の枠内の問題
今回の事件きっかけは、ライフ協会が、
公認定法に違反して事業内容を勝手に変えてしまったことから始まっています。
公益法人は、公益認定を受た際の前提となっている事業内容を勝手に変えることはできません。
原則として、事業内容の公益性に影響を及ぼすような変更については、事前に審査を受けて、行政庁から変更認定を受ける必要があります(公益認定法第11条第1項第2号)。
この変更認定という手続きは、公益法人にとっては面倒な手続きです。
最初に公益認定を受けたときの手続きと、ほぼ同様の提出書類が必要です。
私が顧問先の公益法人の事業内容を変えるために、行政庁への変更認定申請を行ったケースでは、その審査にだいたい3カ月~6カ月程度かかかっています。
審査に結構時間がかかっているようにも思えますが、プロの私がお手伝いしている案件なので、これでも素人がやるよりかなり審査はスムーズに進んだ方(「行政庁の担当者」談)です。
当然ですが、何か問題が発生しそうな変更であれば、そもそも行政庁(公益認定等委員会)は変更を認めません。
その意味で、変更認定申請手続きには、公益法人の不祥事防止について一定の効果があります。
ライフ協会は、財産の預託方法について、弁護士等の法律専門家との三者契約を締結するという前提で、内閣府から公益認定を受けていました(府益担第76号・平成28年1月15日内閣総理大臣からの勧告書参照)。
内閣府としても、弁護士等の法律専門家との三者契約が締結されるなら、資金が適切に保全されるだろういう前提で、ライフ協会に対して公益認定をしていたことが読み取れます。
しかし、結果的には、ライフ協会は公益認定法を無視して、行政庁からの事前の変更認定を受けずに、公益認定の前提となる事業内容を勝手に変更してしまいます。
ライフ協会は公益認定の前提となっている三者契約を行わず、高齢者からライフ協会が直接財産を預かる二者契約締結し、資金流用を行いました。
このような公益認定違反が、今回の事件の端緒となっています。
このような公益認定法軽視のライフ協会の姿勢は、公益法人としてあるまじきもので、弁解の余地はありません。
2.公益認定法の枠外の問題
しかし、仮に、ライフ協会が公益認定法を遵守した法人運営を行っていたならばどうでしょうか?
今回のような事件を必ず防ぐことができたのでしょうか?
私は違うと思います。
例えば、公益認定を受けた事業内容を変えずに、ライフ協会が弁護士等と三者契約締結して、弁護士等が独立して高齢者の財産を預かっていたとしたらどうでしょうか?
資金流用や横領は起きなかったのでしょうか?
そうでないことは、簡単に分かりますよね。
http://toyokeizai.net/articles/-/24004
「成年後見制度を悪用する弁護士が急増」
http://media.yucasee.jp/posts/index/13386?la=bn04
「弁護士会元副会長を逮捕、後見人から横領容疑」
http://www.asahi.com/articles/ASH7P45XQH7PUTIL02X.html
「成年後見人の元弁護士、再逮捕へ 1400万円横領容疑」
弁護士と契約していれば、それで高齢者の財産が守られるという根拠は無いです。
残念なことですが、
単なる弁護士ではなくて、弁護士会の会長や副会長をやっていたような、弁護士会を代表するような立場の弁護士が、高齢者の財産を横領してニュースになるような時代ですよ(笑)
確かに、ライフ協会の公益法人としての運営方法にも様々な問題があったことは事実でしょう。
しかし、今回のライフ協会の資金流用の問題の本質は、公益法人に対する規制あり方の問題ではないのです。
高齢者支援に関わる事業者に対する、実効的な規制・監視・監督の仕組みが、そもそも欠けているということが問題なのです。
「高齢者支援に関わる事業者がどのように規制・監視されるべきか?」
「高齢者の権利をどのように保護するべきか?」
このような法規制の問題についていえば、対象は公益法人に限らない問題です。
そのような観点から議論が発展していかないと、高齢者が被害者となる同じような悲劇がまた繰り返されるでしょう。
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