医療・介護の経営誌『日経ヘルスケア』は、9月号の特集「空床時代の医療・介護経営術」で、空床時代に突入しつつある背景を医療と介護の分野別にまとめるとともに、各病院・施設の現状や対策を紹介しました。病院や高齢者施設、住宅に変化が見られます。
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空床・空室リスクが高まり稼働率低下が顕著に
病床や居室の稼働率が低下する病院、介護施設、高齢者住宅が目立ちつつあります。厚生労働省の「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」では2015年の全病床の利用率は80.1%で、2010年の82.3%から2.2ポイント下がりました(図1)。
長期入院が一般的で安定的に高い利用率を保ってきた療養病床は、2010年の91.7%から2015年に88.8%に落ち込み、一般病床より大きな下げ幅となりました。
病院コンサルティングを手がける(株)メディチュア(東京都世田谷区)代表取締役の渡辺優氏は、「以前は病床が空くのであれば、在院日数を延ばすなどの対策を取りやすかったが、近年の診療報酬改定でそれが大きく規制されてきた」と指摘します。
また「地方でも都市部でも、空床リスクは一様に高まっている」と渡辺氏。高齢者人口の伸びが頭打ちになり、病床過剰地域が多いといわれる地方と違い、都市部は入院患者の確保がしやすい印象が強いですが、「思っているほど高齢化は進んでおらず、ベッドが空く病院も目立つ」(同氏)といいます。
介護施設や高齢者住宅にとっても、対岸の火事ではありません。実際、厚労省の「介護サービス施設・事業所調査」を見ると、介護保険3施設の利用率は年を追うごとに低下(図1)。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)は2010年の98.3%から2015年には97.4%へ、介護老人保健施設も92.2%から89.2%へ下降しました。国の施策で特養の整備が進む一方で、介護人材を確保できずに長期にわたって施設をフルオープンできない例も見受けられます。
サービス付き高齢者向け住宅など、バブル的に増えた高齢者住宅でも空室リスクが顕在化しつつあります。介護事業の経営コンサルティングを手がける小濱介護経営事務所代表の小濱道博氏は、「住宅メーカーや建設会社など、高齢者住宅や介護事業の運営ノウハウを持たずに参入した企業の苦境が目につく」と語ります。
病院や介護施設、高齢者住宅にとって、空床・空室リスクへの対応が大きな課題になってきたのは間違いありません。
今回の特集記事では、「空床・空室時代」に突入しつつある背景を医療と介護の分野別にまとめると同時に、各病院・施設の現状や対策を紹介しました。
詳細は日経ヘルスケア9月号でご覧ください。
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