Nothing Compares 2 U. | あお色のたね、きん色のみ

あお色のたね、きん色のみ

A Blue Seed and a Golden Fruit
Subtle, Slight, Trivial Happiness of My Sweet Days
自分を受け入れる。自分を楽しむ。自分をゆるす。自分を愛するの日々。

80年代の終わり、

私の世代はいよいよ二十代の後半に

差し掛かろうとしていた。


世の中はバブル経済で浮き足立っていて、

そんな時代に二十代を生きるのは、

人生の何たるかを哲学する間も与えず

この時間が永遠に続くような、

そんな錯覚さえ抱かせるほどだった。


コンビニに行くと、

マガジンラックの横にCDが売られていて、

プリンスの半裸のジャケットが

何枚も置かれていた。

それを年上の友人と茶化しながら

笑っていたシワひとつない、

若いアホな私だった。


1990年の年明けとともに

オッコーナーのNothing Compares 2 Uが

リリースされ、瞬く間にヒットチャートを

席巻、一躍有名になった。

自分も街角でこれを聴き、

すぐにCDを買って何度も聴いた。

そんな思い出がある。


オッコーナーが亡くなった。

そう言えば、この曲を作った

プリンスも随分前に亡くなっているね。

もう、マイケルジャクソンもいない。


オッコーナーが亡くなったというニュースを

BBCで知って、思わず

Nothing Compares 2 Uを聴いてみた。

もう、アーカイブはいらない。

オンラインでSpotifyやAmazon Musicで

いつでも聴けるのに、

この人はもういないのだと思うと、

鮮やかにsillyだった若い自分と

年上の友達とが

プリンスを見ながら笑った日が

目の前に広がるようだった。

あの頃の自分は、

まだ私の中に残っているはずだけど、

でも、実際には60歳手前の私が

なんとか、なんとか、

その頃よりマシになろうと生きていて、

本当の本当はあの頃の私も、

もういないような気がする。


あの頃がいい日々だったのかは、

私にはわからない。

私自身にとっては、

色んな不具合を抱えながら、

それとは知らずに自分を憎みながら、

自分と生きるしかない、

そんな痛みが残る時代だったように思う。


改めて聴くと、悲しい歌だ。

メロディの良さだけで、

本当の歌詞の意味も知らないで

聴いていたんだな。

それは、その頃の自分の生き様と、

なんとなく、オーバーラップする。


色んな人がカバーしてるけど、

オッコーナーの声が一番合っている。


オッコーナーは、自分のある人だった。

どんな人生だったのか、

知る由もないが、

今が最も、魂のまま自由だといいのに。


そんな風に思います。