"unknown words"とは?

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ある英語表現が「自然か?」とか「使われるか?」という判断をする際に、ネイティヴスピーカーの意見を仰ぐことが度々ありますが、その際に

「特定の誰かの意見を妄信すべきではない。」

ことを忘れてはいけないと、常日頃考えています。それがたとえ、教養があって信頼に足る人であっても例外ではないと思います。

日本で英語学習書を出版したり、英語教育について発言されてるネイティヴスピーカーは数多くいらっしゃいます。思いつくままに列記すると、マーク=ピーターセンさん、デイビッド=ワグナーさん、T.D.ミントンさん、クリストファー=バーナードさん、G. ワトキンスさんなどです。

これらの人の著作に書かれていることは、信頼できる内容がほとんど全部です。しかし「ホント?言い切っていいの?」と思わされる記述に遭遇することも、皆無ではありませんでした。

具体例ですが、T.D.ミントンさんの『日本人の英文法完全治療クリニック』という本に、次のようなことが書かれていました。

unknown=「知らない」の大いなる勘違い:「自分が知らない言葉」というつもりが、unknown wordsでは「一般に知られていない言葉」という意味になってしまう...

ミントンさんによれば、「自分の知らない言葉」は“words I don't know”と言わなくてはいけないそうです。

しかし、私はこれを読んだ時、「え!」と思わず声をだしそうになりました。なぜかというとTESOL関連の本の中で、unknown wordsが「自分にとって知らない語」という意味で使われているのを何度か見た記憶があったからです。

例えば“Learning Vocabulary in Another language”という第二言語での語彙習得に関する本には“the number of unknown words”が「知らない単語の数」のような意味で使われています。

著者のPaul Nation氏は、この分野では有名な研究者で、もちろん「教養のあるネイティヴスピーカー」です。この本を見てもミントンさんが主張するunknown wordsの定義が正しいとは、ちょっと思えません。

ただ、「『未知語』を意味するunknown words」は、もしかしたらTESOLのような特定の分野でのみ使われるのかも知れないと思い、知り合いのアメリカ人に質問してみました。回答は「unknown wordsは『一般に知られていない言葉』『自分の知らない言葉』両方の意味で使える。」でした。

類例ですが“new words”も、本来は“newly invented words”、つまり新しく作られた言葉、という意味になるはずです。しかし英語教育の場では、「新出単語」の意味で使われることがあります。unknown words についても同様なのではないかと思います。

...ここで紹介した例によって、ミントンさんの本にケチをつける気は毛頭ありません。それどころか、非常に学ぶところの多い良著だと思います。あくまで教養のあるネイティヴの意見でも、異論をはさむ余地があることを示す例として、参考に紹介させて頂きました。


賛同します
愛夢舎 佐々木 さん
ネイティブも十人十色ですよね。
その方の生まれ、育った環境、受けた教育・・・
などによっても色々な解釈の仕方があるみたいですし。
特に時代がめまぐるしく変わる昨今では、若者達が
色々な言葉を創作し、常識化してしまう。
きっと常に色々な人の英語(もちろん日本語もそうでしょうが)に触れていないといけないのでしょうね。自分の英語を見直すいいきっかけになりました。
ありがとうございます。 (Mar 13, 2008 03:09:28 PM)
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Re:“unknown words”とは?(03/12)
スー さん
「ひとりのネイティブの意見を鵜呑みにするな!」という意見を昨日読んだばかりです。常日頃、自分でもそう思っていますので、思わず「ガッテン!ガッテン!」のポーズをとりたくなりました。日本語でも同じことが多々ありますからね。昨日だったか、NHKで「二の腕」とは腕のどの部分を指すかを問題にしていました。私は「肩の付け根から肘までの部分」だと思っていました。広辞苑にもそうありました。しかし、肘から手首までの部分」と定義する辞書もあるそうです。
unknown wordsでは「一般に知られていない言葉」という意味だけしかないと思い込んでいました。とても勉強になります。実は、自分のブログで愛知県の高校入学者を対象としたテスト問題にイチャオモンをつけたことがあります。「知らない単語を)辞書で調べる」のうち、「知らない語」を unknow words としたら、「一般的に知られていない語」の意味なってまずいかと思い、unfamiliar words としたことを思い出しました。全体を look up unfamiliar words in a dictionary としました。
ミントン氏のように考える人は、相当数いそうな気がします。ひょっとすると、こちらが優勢かもと思ってもいます。そういえば、この間も、自分のブログでfamily を問題にしました。have a large family は、ほとんどの英和辞典には「大家族がいる」の意味としていますが、イギリスの辞典(OEDも含めて)「子供がたくさんいる」の意味として例文に挙げているようです。family を children の語義の箇所の例文として付しているからです。英和辞典でも後者の意としているのもあります。

(Mar 13, 2008 04:42:36 PM)
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Re:賛同します(03/12)
吉プー さん
愛夢舎 佐々木さん
コメントありがとうございます。確かに日本語における解釈の多様性を考えると、英語についてネイティヴが異なる意見を持つのも当然だ、という気になってきます。 (Mar 14, 2008 02:30:54 AM)
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Re[1]:“unknown words”とは?(03/12)
吉プー さん
スーさん
familyの記事拝見しました。『have a family of fourと言えば、普通は「4人家族である」というより「4人子供がいる」の意』になるんですか?正直初耳です。自分でも調べてみたいと思います。 (Mar 14, 2008 02:48:03 AM)
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