mutek 2024 day1 /  11/23 o-east , womb

 

ミューテックはモントリオール初の電子メディアフェスでここ数年で日本版も定着してきている。

出演アーティストを知らなくても安心して行ける稀有なフェス。

電子音楽が好きなら前情報なしで突っ込んでも十分楽しめると思う。

 

当方はミューテックに毎年いっているが今年はややおとなしめでレジェンドクラスなど目玉のアーティストはいない。

その影響か当日券が出るほど前売りが売れていなかった。

期間も前は5日間開催だったのが様子だがいまは3日間で縮小傾向なので不安ではある。来年もあるといいが。

そんな感じでおとなしめな今年のミューテックだが、ミューテックの良さは知られていないつよつよアーティストを聴けるところにあるのでミューテックらしさはそんなに失われていない。

そんなに失われていない、というのはそういうアーティストは1日目のみで2、3日目は日本のアーティストが多いからだ。ラインナップを見る限りそんなに尖ったことをしている印象はないので国内ミューテックという感じ。

あまり惹かれないのでそっちは行かない。

むしろ期間中にヒカリエホールでやっている黒川良一の映像の方がミューテックらしいと思う。

深夜にwombで開催されるwombもミューテックにしては大人しめ。かっこよかったがあまりミューテックらしさはなかった。

けっこう前のmutekではwwwでやっていたことがあったがあの時の方がミューテックらしかったと思う。

 

以下それぞれのアーティストについての感想。

 

scuy(v0id)

主に轟く低音とノイズ+VJのライヴ。池田亮二をメロディアスにした感じ。

演者のいるテーブルには機材がいくつか置かれていたが何があったかはよく見えなかった。

が、デスクトップPCの本体が置いてあるのははっきりわかった。

デスクトップを置く人はまれにいるけどなかなかのインパクト。たぶんVJでAIを使っていたのでそれで必要だったと思われる。

最初はデジタルノイズがリズミカルに響く中で液晶を大写しにしたような映像だったが2曲目は不安定なシンセのリフにずぶといキックが不定期になって荒々しさを出してる中で映像は山が雲になったり雲が泡になったり泡が山になったりというのをAIっぽいモーフィング。

続く曲のVJもAIをベースとしたものが多かった。

あるいはどこかのマンションの廃墟をポイントクラウドで描いて分解、再構築を繰り返すなど別のアプローチもあった。

音はソリッドでアブストラクトなものでキックが激しくなっていることが多かったが規則性が掴みづらく踊りづらかったが後半はわかりやすいリズムになったから踊れた。

どうやらリズムはある程度わかりやすく予測可能な方が踊りやすいらしい。

一部キックの代わりに短いベースの音を使っている部分があったりと音の使い方が面白かった。

一方で数小節にわたるロングトーンのベース音もあった。

dawの音楽は実はロングトーンは得意ではないのでハードウェアのシンセを使っていると思われる。

あの轟音の感じはミューテックへようこそという一種の洗礼のような力強さがあった。やっぱりベースなんよ。

 

Milian Mori & Toru Izumida

二人組のユニット。

ずぶといベースとリズムにノイズをガリガリ鳴らす中メロディも挟まってくる。BRDGあたりに出てそうな感じ。

映像は視覚や線をリズムに合わせて動かしているだけのことが多く全編を通してテクニカルなことはしてなさそうに見えたが音は目がかなりうまいのでシンクロ率はかなり高くカッコよかった。

たまにテクスチャとして古文の文章が使われていたがかっこいいかどうかは微妙。大学生が好んでやりそうな演出だったが一周回って面白い。古文の出典が何かはわからないがテキストに灰燼とか公家とか令人とかでてきて戦乱とか起こってそうな内容なので平家物語のような気がする(自信はないが)。

前半はそういう感じの演出。

音は池田亮二をマイルドにして薄味にした感じ。

また池田亮二か、と思ったが、後半は吹っ切れたようにオリジナリティを出してきてめっちゃ踊れた。

キックのループがけたたましくなる場面もあればローの音を外してパーカッシブなシンセでリズムを刻んでくる場面もあり、前半のパクリっぽい雰囲気は消えてとてもいい感じだった。

後半の映像も前半と似た感じだったが古典要素は消えて白バックに黒い四角形が出てきたりパーティクルがリズムに合わせて発生したり広がってたり。

この書き方だと全く言いようには思えないのだがソリッドでアブストラクトな感じがとても良かった。

 

Grand River

ピアノとシンセ群のユニットによるアンビエント。

シンセのドローン系の音にピアノが断片的に鳴る緩やかなものがあったかと思うとキックのように聴こえるほど鋭いシンセが刻むパーカッシブな曲もあった。

ドラムはなかったと思うがシンセがリズムを刻んでいることが多かったドラムなしでもここまでグルーヴが出せるのかという良い見本だった。

今日のo-eastでは最も踊れるアクトだったと思う。

ビジュアルに関しては映像はなく中央からのスポットライトが上下するのみだが。スモークが撒かれている中に断面のわかるライトがあるとスモークの断面が見えるのでちょっとしたVJよりずっと面白いものになる。

激しい主張はないがパーカッシブな音楽とかなりマッチしていた。

今日のセカンドベストアクト。

 

Caterina Barbieri - Live with Ruben Spini

シンセ2台によるサウンドスケープ。

クレジットには二人分の名前があるが壇上にいたのは一人。

開始時は珍しいほどスモークが炊かれていて映像が隠れるほどだったがそれは狙いだったらしく、映像の光り方がスモークに照り映えて綺麗だった。

演者の足元にもスモークが漂っていたので雲の上にいるように見えた。

実際に空をモチーフにしているらしく、映像は雲間に見える光を表していたり途中で雷鳴のような音をシンセで鳴らしていたりして、ライティングも雷鳴のようにチカチカ光っていた。

機内で聴いたら不安になりそうな曲調だったがここは地上なので大安心。

主にアルペジオで音像が造られていたがアルペジオの要所要所で1オクターブ高い音を出したりしてメロディを浮かび上がらせていたり逆に1オクターブ低い音を部分的に足して音に厚みを出したりしていた。

いまこのアーティストのサウンドクラウドを開いたがほぼほぼそのままの曲をやっていた。

じゃあサウンドクラウドでよくない?という意見もありそうだがそうではない。o-eastという超いい環境で聴くのだから音の深さが全く違う。

ミューテックの一つのイベントのトリとしては地味だが、一方でミューテックらしいアーティストだと思う。聴けて良かった。

今日のベストアクト。

 

 

womb

老舗のクラブでいつからあるのかは知らないが25年以上あると思う。

クラブとしての立ち位置は変わらず良質の大箱でややチャラ箱寄り。

たまに今回のようなマニアックなイヴェントの会場になる。

当方がここに来たのはかなり久しぶりで10年以上ぶりかも知れない。が特に内装に変化はない。メインフロアの天井に二つのディスプレイが加わっていたくらいか。

まあそれはそれとして。

 

Makoto Inoue

低音がブンブンいいすぎてる四つ打ちテクノに立体フラクタルのVJ。

サブベースの音が聞いてて心地よくないのでけっこう辛い状況に。

フロアは盛り上がっていたので好きな人はいるのだろう。

映像に関して、フラクタルな構造の機械っぽい何かがぬるぬる動くVJだったがあの手の映像は3秒見てたら1時間後どうなってるか想像できるし実際その通りだった。

wombには腕利きのライティングアーティストがいるのでよほどすごい映像でない限りVJは消してライティングワークだけにした方が没入感は確実に上がる。

今回の映像はそのケースだったので映像はノイズだった。

止め絵ならいくつかかっこいい箇所はあるのだが動くと先が見えてしまう。

動いたところで変化は少ないし止め絵をタイミング良く変えていった方が絶対カッコ良くなるのに。

 

RISA TANIGUCHI & H2KGRAPHICS

腕利きアングラDJのプレイに売れっ子VJのライヴ。

開始時、当方ははフロア入り口横にある段でぐったりしていたのだが明らかに直前のアーティストより良かったので思わず耳をそば立てた。

周りにも同様の人がいたらしくプレイが始まると徐々に立ち上がりフロアに突っ込んでいった。

当方もフロアに戻ったししばらく踊っていたが低音がブンブンいいすぎてる部分がちょいちょいあったのでしばらく踊ってから椅子に戻ってしまった。

VJだが、残念なことにここはwomb、上でも述べたが腕利きライティングアーティストがいるのでこの人と肩を並べられるレベルでない限りノイズになってしまう。というかノイズになっていた。

映像は素晴らしいのだがVJとライティングが調和せずにぶつかり合ってる。

やるなら片方にしてほしかった。

 

Tasha

ロンドンの腕利きDJ。素晴らしい。

低音がブンブン言ってないがしっかりサブベースを効かせている。

低音がブンブンいいすぎてるのはwombの音が悪いのかと思っていたがDJの腕の問題らしい。

といってもここに出てるのは皆腕利きのはずなのでサブベースを綺麗に効かせるのはベテランでもかなり難しいのだろう。

緩急の付け方も素晴らしく、四つ打ちのキックからハイハットが加わり、シンバルが入って小節頭にパーカッションが加わり徐々にメロディらしき音がゆっくりと入ってきていいタイミングでキックが消え、すぐにキックが戻ると共にシンバルが消えて、などの展開が無限に続くので飽きさせない。

VJはあったしやはりライティングの邪魔になっていたのだが単体で見る分には面白かった。

クレジットはなかったのだが誰だったのだろう。

 

という感じで良くも悪くもいつものミューテックとは毛色が違ったように思えた。o-eastではいつものミューテックのマニアックなものが好きな層に向けてる感じがあっていつもよりミューテックらしさが出てる気がしたが一方でwombはテクノに振りすぎてて良質の一般イベントという感じだった。それは悪いものではないがミューテックらしさがもっと欲しかった。

ともあれ良いイベントだった。来年も来たい。

 

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