mutek_jp 2025 day1 www shibuya
mutekはかつて盲目的に肯定していたので迷わずフルパスを買っていたが、あるときからクソアーティストを混ぜてくるようになった。
なので警戒してちゃんと見たいと思わせるアーティストがいないなら行かなくていいかという感じになっていた。
それでここ数年のmutek_jpは1-2日分だけ買っていた。
だが今年は久しぶりに全日程で見たいアーティストがいたのでフルパスを買った。
出演者にalvanotoにnonotak,kyokaにnosaj thingがいたらそりゃ買うだろう。
ただ初日の今日はアーティストの名前だけでは特に惹かれなかった。
しかし出演者のひとりMartin Messierの動画が良さげだったので行くことにした。
後述するようにそれは大正解だった。
また、このライヴは夜のものだが昼間の時間帯にはカンファレンスが別の場所で行われた。
そのひとつにalva noto(カールステンニコライ)がしゃべる。さらに京都で発表した作品wave weaveも観れるという。
まあ行くよな。
alva noto (カンファレンス)
ヒカリエのホールでカールステンニコライがコメンテーターの人と話し、ラストに京都でお披露目した作品wave weaveを上映した。
トークの内容はカールステンがここ18年くらいずっと取り組んでいたzeroxというプロジェクトに関して。
zeroxはcdで5枚に及ぶ連作で当初は数年で終わる予定だったがなんやかやで18年かかったという。
なぜそんなにかかったのか、という質問に対しては「わからん」とのこと。
まあそういうものだよな。
zeroxの音楽の中身はカールステン流のアンビエントでビートは少なめの中で轟音のドローンが展開されるもの。
ちゃんと聴いたことはなかったけどトークの間にいくつか架けられたものを聞く限りかなりかっこいい。
トークは1時間ほどだったので色々しゃべっていたのだが会話が英語だったのとラストの映像が素晴らしかったのであまりおぼえていない。
映像は京都の西陣織の制作過程を高精細なカメラで撮った映像にカールステンがzeroxでやってたみたいな音をあてたもの。
この説明だけだと大してよくなさそうに聞こえると思うが実際はすごく良かった。
西陣織は無数の糸を機械で編むものらしく動きが規則的で膨大な数の糸が機械によって機械的にできていく。
行ってみれば工場なのだがそこで編まれているのは繊細な糸で、機械的なものと有機的なものが完全に融合した動きを見せる。
そこにカールステンの音が乗るのだが、この人の音は機械的なものとの相性が完璧なのでこの映像も音ハメものの映像として完璧だった。
機(はた)が降りるタイミングで重いキックが乗り、機械なので常に轟音のドローンが鳴り響く。
西陣織に音を乗せる、というと西陣織のプロモーションに使えそうな気もするが音的に無理っぽい。
観たらわかるが西陣織のメイキングにあんな重い音が乗ってはダメだろう。
逆にカールステンの映像作品として観るなら完璧。
観れて良かった。
Eiko Ishibashi, Jim O’Rourke & Joe Talia (vj : line katcho)
あまり期待していなかったがめっちゃ良かった。
石橋英子は結構前に見たことがあってそんなに心に刺さらない感じのピアノを弾く人でジムオルークとよく一緒にライヴをやっているという印象がある。
ジムオルークは京都在住(だと思う)の電子音楽家で一般受けするかどうかはともかくマニアックな音を鳴らす人。
事前にチェックしていたのはこの二人だけだった。
それと当日にタイムテーブルをチェックしてvjとしてLine Katchoがいることを知った。
Line Katchoはオーディオビジュアルの人でmutekの常連にしてtouchdesignerの使い手。
いつもは轟音にグリッチーな映像で魅せてくれるのでこのライヴは音楽が微妙だったとしても最低限Line Katchoの映像は楽しいだろうと思っていた。
その考えは結構間違っていた。
良い意味で。
この三人ともう一人、未チェックのアーティスト Joe Talia 、この人はオーストリアのジャズ寄り(たぶん)ドラマーで、この人がいたからこのライヴは最高だった。
ライヴはジムオルークの(いつもどおりの)怪しい音から始まった。
別の時に見たライヴでは木の箱に入った自作デバイスでミニマルな電子音楽を奏でていたが今日はマックブックを使っていた。
マックブック使っていたからと言って普通の音になってるかというとそこはジムオルーク、全然そんなことはなくちゃんと怪しい音を鳴らしていた。
どういう道具を使おうがジムオルークはジムオルークなのだ。
きっとジムオルークのファンは大満足だったろう。
そこに石橋英子のフルートが乗り、静かにドラムが入ってくる。
背景にはLine Katchoのvj。雲間から月が除くような映像で、最初は実写かと思ったが月だと思った光の球が時計の秒針並みに速く動くのでリアルタイム映像だとわかる。
ジムオルークの怪しい電子音に石橋英子のフルートが時々乗り、ドラムがビートを刻む背後でvjが彩る。
ライヴは終始こういう感じだったが決して単純ではなくむしろ起伏が激しくめっちゃかっこよかった。
特にドラム。
最初こそ遠慮がちに入ってくるような静けさだったが徐々に激しくなり場を支配した。
当方の説によるとジャズドラマーはスキルカンスト勢が多いがこのアーティスト、ジョータリアもその一人らしい。
そこに乗るジムオルークの電子音ともかなり相性がいい。
個人的に生ドラム+電子音の組み合わせは大好物でハズレなしだと思っているが当方のこの説を補強するクオリティだった。
というかこのライヴの中心は間違いなくドラムだった。
石橋英子は合間合間にフルートを吹いていたが吹いていない時は多分だが空間系エフェクトを触っている。
ドラムが緩い時は他も緩くなり激しい時はそれに呼応して他の音も映像も激しくなる。
一瞬も飽きることはなかった。
また観たい。
Noémi Büchi
やや微妙だった。
スイスの女性アーティスト。
卓上に2台ノーパソが乗っていたのでおそらく自分で映像もやっている。
映像は実写でタンクトップの女性がなんでもない動作をしているのをいろいろな角度から撮っているだけ、と思ったが実はフルCGで途中から腕が何本も生えたり首筋から液体になって散ったり液体が固形の破片となって飛んで行ったり。
クオリティ的に見てたぶんリアルタイムではなくあらかじめ作成したものを切り替えてる。
CGで作るとしたらかなり大変でもしあれをやってとか言われたらマジですか?と思うようなものだったがところどころ変形がフルCGとしてはおかしいのでAIを併用してそう。
AIを使っていたとしてもぱっと見わからないので良い使い方だとおもう。
とは言ったがそんなに面白い映像ではなかった。
音楽もリミッターの設定がおかしいのかどこか広がり切らない音響で映像の方が主で音楽が従のような印象を受けた。
音はシンプルなリズムにエレクトロニカっぽい音が乗ったもので、たぶん音源として自宅で聴いたらいい感じなんだろうけどライヴで聴くと微妙。
それとステージ上にライトがあってタイミングに合わせて光っていたが、眩し過ぎ。
あまり眩しいから途中まで目を瞑って聴いていた。
光の強さといい音の感じといいwwwでは合ってないように思えた。
たぶんだけどo-eastで鳴らした方がハマる。
Martin Messier
やばかった。
ジムオルークらとその次のアーティストの間には10分くらいセットチェンジの時間があったが、そのアーティストとこのアーティストのマーティンメシアとの間には40分のセットチェンジの時間があった。
なぜなら準備に時間がかかるから。
準備に時間がかかるなら最初にやればいいような気もするが多分後片付けの方が大変なのでこの順番で間違ってない。
なぜ準備に時間がかかるか?
マーティンメシアの今日やるライヴでは水を使ったオーディオビジュアルだからだ。
ステージ上方には横一列に15個のライトがありそれぞれのライトに水を垂らす装置がついている。
その装置をステージ中央のデバイスから操作する。
水は等間隔で落ちるようになっているがその間隔を広げたり縮めたりしている。
水が落ちるのと合わせて真下を向いたライトが点灯し水を照らす。
これによって暗闇の中で落下中の水滴が照らされる。
ステージに他の照明はないため、照らされた水滴は一筋の線のように見える。
水滴はいくつもあるので一筋の線ではなく破線のようにもなる。
水滴の落ちる間隔とライトで照らす間隔を調整することによって空中の白い線が伸びたり縮んだり下に向かったり上に向かったり一本の線のようになったりして見える。
水を一滴づつ垂らそうとしてもどうしても飛沫が散るらしく、そのため単純な線ではなく周りにうっすらと飛沫による線が見える。
それが床につくと飛び散るが軽く照らされながら明滅して綺麗に散る。
これを15個のライトそれぞれでやっているので単純な線だけとはいえ立体映像のようになる。
しかしその照らし方は曲の箇所によって見せ方が変わる。
ある時は右半分のライトは短い線、左半分は長い線になっていたり端から順に水滴を落としたり、一つおきには線、直線、波線と交互にしたり16部音符のタイミングで破線の長さを変えたりとバリエーションはかなり多い。
水滴が床に落ちる音でその頻度がわかるが、こんなに細かく正確にタイミングを制御できるのかってくらい等間隔になる。
映画とかでよく聴くマシンガン並みの速さでトトトトトトトと鳴っている。
その音と別にアブストラクト寄りの音楽も鳴っている。
ビートとしては単純だが重さのある音をごんっ、ごんっ、と鳴らし、それとは別に地鳴りのような音が常に鳴っている。
以上のような方法で音と空間を構築していた。
イントロが特に印象的で、音楽はまず重いキックがドスドス鳴り、次にさらに重いキックが重なって、次は金物系の音が、次は電子音が同じ感覚でなって重なっていくが一つ音が足されるたびに2列づつ水滴による白い線が上から下に走り、ついには全15列で白い破線が上と下を繋いだ。そこから曲とビジュアルが展開していったが、それはもう圧倒的な演出だった。
他のアーティストなら映像でもそこそこ魅力が伝わるがこのアクトに関してはおそらく映像では1/10も伝わらない。
いや映像でも十分かっこいいのだが、生で見ると本当に情報量が違う。
音の情報はもちろん削れるが、映像の情報は実物と比べてかなり削られている。
映像の精度は高くて1秒60コマだが実物はそれどころではない速度で点滅しているので比較にならないほど高精細になる。
おそらく今年のmutek_jpで最も生でみるべきアクトはこれだろう。
他は映像(あるなら)で代用可能だがこれに関しては不可能だからだ。
良いものを観た。
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