190622
vatican shadow / contact
ヴァチカンシャドウというのはインダストリアルのテクノのアーティストでユーチューブかなんかでたまたま知った。
その時の映像は確かライヴかなんかでなんとくなく聞いていたのだが矢鱈とかっこいいので、このアーティスト誰よ?とか思って題名を見たら、vatican shadow、という名前が書かれていた。
これだけかっこいいライヴをやるのなら音源もかっこいに違いないと考えるのは自然の流れだと思うがどういうわけかしばらく放置していた。で、ある時タワレコに行くとヴァチカンシャドウの音源が棚に刺さっていた。
とかエピソードを綴っているうちにその文面の必要性に疑問を感じたので結論だけ書くと音源はかっこよくなかった。
3枚組のベスト的なやつでジャケットを開くと米兵かなんかの肖像が載っていてなんかジンクス的に嫌だったというのも無意識的に作用していたのかもしれないが、とりあえず音源は微妙であり、そのアルバムは一周だけ聞いてあとはジャケットにしまって二度と聞かない扱いになった。
そういうわけでヴァチカンシャドウは、ライヴはかっこよくても音源は聞かなくてもいいアーティスト、という位置に当方の中では収まっていたのだが、ライヴはかっこ良いのなら来日しないかなと、ふんわりと考えていた。
しかしマイナーなアーティストだし来ても情報を取り逃がすことは大いに考えられる。
それから数年経ち、あるときRAを眺めていると、vatican shadow初来日!という文字が躍っていた。
まあ行くよね。
来日告知のページに紹介文があったので読むと、なんとベルクハインでのライヴ経験があるとのこと。
おっとまじか、マイナーどころかわりとメジャーというかかなりの支持を得ているアーティストじゃないですか。
実際のところは知らないがベルクハインほどのクラブでなんでもないアーティストがライヴをやるというのは考えづらい。
サマソニのステージのトリに無名のアーティストが出るのは考えづらいというのと同じ。
よく考えたら当方が最初に見たヴァチカンシャドウの動画はボイラールームのものだった気がする。
そんなアーティストをマイナー扱いするというのはだいぶ間違いだよな。
そう考えを改めかけて会場に赴いたのだがフロアは微妙に空いていた。
スカスカというのではないが、わりと自由に移動できる感じ。
たとえばほぼ最前列で見ていてちょっとドリンクを買って戻ってきても普通にほぼ最前列に戻れるくらい。
やはりヴァチカンシャドウはマイナーなのだと思う。
日本と海外で知名度が大きく異なるのは結構あることで、それは例えばボノボの知名度が日本とカナダで全然違っていたりすることに象徴されると思うが、ヴァチカンシャドウはきっとドイツではかなり有名であるに違いない。
まあ、マイナーかと思っていたら日本でも超人気で入場規制がかかったアメリーレンズみたいな例もあるので単純な判断はできないけれど。
当方が会場に着いたのはだいたい1時半で、ヴァチカンシャドウはまだ始まっていなかった。
その時ライヴをやっていたアーティストの名前は忘れたが、とりあえずかっこよかったのはおぼえている。
四つ打ちを基本としながらもディレイをうまく使った16ビートぽいリズム感を演出して躍動感を出す一方で特殊なクワイアを使って曲の雰囲気を異色に染めてみたりしていた。
クワイアというのはつまりコーラスの音源で雑にいうと聖歌隊がやるコーラスのようなものなのだがこれで細かく音符を打つアーティストはほぼおらず、大抵は長尺のドローン的な使い方をする。
そういう使い方はよく見るのだがその時に見たそのアーティストは少し方向性が変わっていて、声楽的なクワイアではなくアラブ的なやつをクワイアとして使っていた。
そうすることでアラブ的というか、通常はキリスト教会のような雰囲気になるクワイアをアラブ的なものを使っていた。
真似してみたいのだがああいう音源は持っていないし、売っているにしてもそういうのはそんなに見かけないしだとするとヴァリエーションが少ないかもなとか、とりあえず今度探してみよう。
それはそれとして、そのアーティストは結構気になるので名前をおぼえたかったのだが忘れてしまった。
とりあえずローマ字みたいな名前だったと思う。HAKUSENとか(絶対違う名前だと思うが)そういうやつで、たとえ当方がその名前をおぼえていたとしても検索に引っかからない可能性が高い。
ピーターヴァンホーゼンのいるユニットでsendaiというアーティストがいるが、もちろんsendaiで引っかかるわけがない。ローマ字的な名前はおぼえづらいし検索できないからやめて欲しかったりする。
で、そのアーティストの出番が終わって拍手で称え、ヴァチカンシャドウが登場。
最初は控えめに始まって、すぐにフルスロットルに入った。フロアは俄かに熱狂しだした。
音楽のスタイルは直前のアーティストと似ていて、四つ打ちを基本としながら16ビートでノセてくるというもの。
単純なバスドラの四つ打ちと思わせておいて同じ低音域の隙間の部分の16ビートでドコドコ詰め込んでくる。
2拍目と4拍目にスネアを鳴らしたと思うとその上の音域に輪郭のぼけたハイハットが16ビートで鳴り、そのさらに上の音域に金物を16ビートで鳴らす。
音の空間密度が高まったところで四つ打ちのバスドラだけを残して他の音をすべて消し、同時にリバーブのほぼかかっていないハイハットを16ビートで鳴らすことでさっきまで遠い位置にいたハイハットとの距離が縮まった感じを出して雰囲気を一気にシフトする。
そう思うと今度は徐々にハイハットをぼかしていき高音域部分に金物の16ビートを予備動作付きで鳴らす。
予備動作付きで、というのは金物の直前にグリッチに近い金物の音を短いフェードインで鳴らして本体の16ビートの金物の音を際立たせるということで、こういうことをやるアーティストは他に知らないので今度真似しようかと思う。大抵のアーティストは16ビートにしても8ビートにしてもいきなり突っ込むのだ。
あとヴァチカンシャドウはノイズの使い方が特徴的で、ハイハット的に16部刻みで鳴らす一方で同時に違う音域でドローン的に長尺で鳴らしたりしていた。
あるタイミングではバスドラ以外がホワイトノイズで構成されていたが、そのノイズは空間を埋め尽くすように構成的に慣らされていてとてもカッコよかった。
ライヴで使われていた音はほぼドラムで構成されていたが音階のある音も少し使われていた。
使われている、と言ってもメロディはほぼ存在せず、リフがディレイまじりにループするかドローン的に鳴らすかで、音楽の雰囲気をスイッチするのに使われていた。
目立たないがしっかりと存在する。現れる時も消える時もしっかり存在感を主張する。
ヴァチカンシャドウはこういう感じで終始盛り上げに来るのだがこの人の盛り上げ方は他のアーティストとは一味違っていて、シャウトとともに懐中電灯を客席に向けてぶん回し、「オラこい盛り上がれ!」と実際そう言ってるかどうかは知らないがなんかを叫びながらめっちゃ煽ってくる。
もちろん客席はさらに盛り上がる。
その煽り方にはいくつかヴァリエーションがあり、機材を操作しながら煽ったり、ステージの端の方の機材を置いてないあたりに移動して煽ったり、それと一度だけ機材の乗っているあたりのデスクに乗って立ち上がり煽ってくることもあった。
あそこに乗って立ち上がるアーティストとか初めて見たわ。
そのいずれも懐中電灯を手に持ってぶん回していた。
ライヴは中盤あたりで少し落ち着いて、終盤で大きく盛り上がってギグは終わりを迎えた。
ヴァチカンシャドウをたたえる拍手の中で次のアーティストがライヴを始めた。
ヴァチカンシャドウの直後だったからかその音には特徴というほどの特徴は見えず、しかし安定してかっこいい音を鳴らすという、特徴を感じないのにかっこいいという珍しいアーティストで聴いていて普通に心地よかった。
このアーティストはヴァチカンシャドウとは少し趣向が違っていて、音階のある音でメロディを形作っていた。
しかしやはり特徴があまり見えなかったのでまた聴きたいとはあまり思わなかった。
また聴いた時も普通にカッコ良さを感じるだろうけれど。
ところで上の記述ではどのアーティストも、ライヴ、と記述したのだが実際はDJだったのかもしれない。
どっちかは知らない。
しかしどっちでもいいのだ。
「明らかに別の人の曲かけてるよね」みたいなタイプとか曲をつないでいるようにしか聞こえないタイプのDJはともかく、ベルクハインクラスのDJならばライヴもDJもそう変わらない。
どちらもクオリティは高いからだ。
あのレベルまでいくと他人の曲であっても自分の曲のように変質させるのであり、それはもうライヴと変わらないのだ。
もちろんそういうアーティストでもライヴはライヴで全く違う演出を見せてくれるタイプの人もいるが、電子機材をメインで使っているなら客席から見てライヴかDJかは見分けの付きづらいのであり、実際のところはライヴとDJの境界は結構曖昧なのだと思う。
その証明として、今日のヴァチカンシャドウはライヴかDJかはわからなかったが、どちらにしてもかっこよかったのだ。
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