190830

atomtm & tobias / vent

 

atomtmに関してはこのブログで前にも述べたので詳しく繰り返す気はないが、簡単に述べるとラスターノートン系列のミニマルテクノの使い手でベルクハインを熱狂させる腕を持つカリスマアーティスト。

ちょいちょい来日するしその度に行っているので当方がこの人のライヴを観るのは多分4回目になると思う。期待を裏切ることのない間違いのないアーティストなので次に来た時も行くだろう。

ただ今回はatomtm単独ではなくtobiasというアーティストとのコラボらしい。

atomtm以外のアーティストが混ざるというところに不安は感じ得るが、しかし心配はいらないだろう。

超人と同じステージに立てるのは同じく超人のみなのだ。

実際に超人だった。

見た目的にも結構な年齢なので当方が知らなかっただけでドイツでは大御所クラスなのだと思う。

 

会場はventで、激混みというほどではないが結構混んでいた。

当方が着いたのは1時頃だがそのときは前座の人がdjをやっていた。

音圧を出してくるdjで普通にクオリティは高かった。

映像もいいかんじだった。変形する球体に光源による反射が色収差を加えた上で煌めいている。素材はatomtmと同じだったと思うので同じ人だったのかもしれない。(今調べたらvj cowboyという人だった。)

 

前座の人の出番が終わるとクラウドはその演者を拍手で讃えた。

そのまま流れでatomtmとtobiasが登場。

見た目は二人とも禿頭のおじいちゃんという感じだがもちろんこの2人は只者ではない。

まずリバーブの長い矩形波が等間隔に2拍ごとにソナーのように鳴り始め、16分刻みの高めの金属的なハイハットが続いた。

そこにくぐもった長いベース音が入るが、そのベース音はくぐもっているためにドローンのように聴こえる。

しかしよく聴くと割と短めの音だとわかる。

そのベース音はやがてエッジを立て、また元のくぐもった音に戻りつつもまたエッジの立った音になる。

一方で主張しないストリングスの和音が2種類交互に長めに鳴りホラーのような雰囲気を出す。

そこでベースが主張し始めたと思ったら図太いバスドラが2拍ごとにフロアを揺らす。

バスドラの次はやや低めの金属的なハイハットが16分で入り、上のハイハットが消えると同時に別のハイハットが裏拍で刻みだす。

これがイントロで、続く展開で無限に盛り上げていった。

うしろから「やばい、ちょういい、、、」というつぶやきが聞こえた。完全に同意する。

彼らの音楽はこのように始まったが、これを含め多くの音の入り方はさりげないもので、一瞬で空気を変えることが少ない代わりにいつの間にか盛り上げられている。

ちょっと前まではっきりとしたバスドラはなかったのにいつの間にか床や壁を揺らすほどのバスドラがごんごん響いている。

少しづつ音量を上げたのかもしれないが、それよりも、彼らの抑揚のつけ方がうまいからいつの間にか盛り上げられている状況を作り上げることを可能にしていたのだと思う。

つまり、全体を通して常に抑揚がある感じでベロシティを変えないとか平坦になるような箇所はなかったと思う。

小節中には常にテンションの上昇か下降(ほぼ上昇)がある。

4小節ごとに一旦ベロシティをリセットしている感じ。

単純な16分刻みのハイハットでもなんらかの抑揚がついている。もしかしたらその次の小節も全く同じ抑揚のときもあったのかもしれないが小節内の抑揚がうまいせいか全く気にならない。

当方がモーツアルトを弾こうととした時に先生から「どの音も同じ強さでは鳴らさずに上昇か下降かするように」と言われたのだが、それをテクノでやっている感じ。

四つ打ちのバスドラも同じで、全く同じ音程や強さで2つ以上続くことはなかった。

どの音も意識を向ける精度が高い。

こういった抑揚をつけられるアーティストはそうそういないと思う。

その逆説的な例として彼らの次にステージに立ったアーティストが挙げられる。

このアーティストの音には小節内での抑揚はついてなくて小節を追うごとに変化するというようなものだった。つまり、音符刻みで抑揚があるのではなく小説刻みである、というように。

なので、音は非常にかっこよかったのだが、そういう抑揚だったせいかatomtm & tobiasほどテンションは上がらず。

あと、書き忘れていたが機材について。これはよくわからず、とりあえずmacbookとミキサーがあったのは確認できた。

 

それとvj cowboyによるvjもすごくよかった。

何かの映像を原型が分からないように加工したものをフレーム単位で切り替えていくというもので、それを色を全く使わずコントラスト強目のモノクロでストロボのように黒画面の合間に見せていく。

脳の処理がギリギリで追いつくぐらいの速度で映像が切り替わるのでその速度感によって軽い酩酊感を味わえる。

ここ数年は全く見かけていない映像ドラッグを数年ぶりに観たように思う。

atomtmとtobiasのベルクハインのド直球のテクノとは完全にマッチしていた。

スタイルとしてはおそらくあらかじめ用意していた画像をリアルタイムで2次元的に操作するというもので、vjの主流とは少し外れているかもしれない。

vjの主流は当方の感じるところによればリアルタイム生成で、そうなったのはおそらく6年くらい前からだ。

がその流れによってvjとしての面白さはむしろ低下しているとしか思えない。

クラブでvjを使うアーティストが(当方の印象では)激減したのは偶然ではないだろう。

なので今回のvjはかなりイケていた。

グッジョブですvj cowboy!

 

ところで今回の彼らのライヴは3時間セットで、金曜の週末ということもあって当方は途中で体力が尽きかけていた。

最後まで観たいが体力は持つのか?と思ったがそんな心配は無用だった。

気づいたらライヴはフィニッシュを迎えていた。すごいぞatomtm&tobias。

atomtm単独のときよりも良かった。

このデュオのライヴはまた観たい。

 

(以下は音楽とか映像を作らない人には興味のない話だと思うので純粋なリスナーの人はスルーでいいと思う。)

音楽的に参考にしたいというか真似したいもので以下のような部分があった。それを箇条書きで。

サステイン短めのシンセをアルペジエイターで16分の上昇するメロディを鳴らし、4小節目ではサステインをフルにする。1小節目に戻るとまた短めになる。

アシッドでハイがきつめの音を4拍目に突っ込んで次の小節からハイがきつめのハイハットを16部で鳴らす。

16分のハイハットは結構多用してた。ハイハットの音程を幾つかに分けてそれだけで幾つかのレイヤーを作ったり。ただし平坦に鳴らすことはない。16分の中には必ず起伏がある。

あと3拍目の頭だけ音がハイハットに似ているスネアに変えたり。

音楽のスタイルは基本的に四つ打ち。

初盤の途中からは四つ打ち全部にバスドラを突っ込んでいたが最初の方は2と4拍目だけとか、それか最初の二拍は強めで次の二拍は弱め、とか。

4つ打ちのバスドラに別の音色のバスドラを入れ替えたりしてた。

メロディは奥の方から鳴らすことが多かった。つまり、ドラムはリバーブ浅めな一方でシンセ音は強目のリバーブで遠くから響いてくる感じ。

とか。

 

映像に関しても珍しいことに参考になった。これも箇条書きで。(草稿に近いので以上の内容と一部かぶる。)

映像の任意の縦一列のピクセルを横に引き伸ばして横縞のジブラ模様を作った上でそれを縦に歪めたり右半分だけそれをやったり同じことを縦縞でやったり。

幾つかの動画か静止画のセットがあってそれを高速で切り替えてたり白黒を反転して素材の数を印象の上で2倍にしたり。

縦縞以外にも回転する同心円や上から下に落ちるビームのような筒がサイズを変えてめまぐるしく変わっていった。

元になっている映像は多分タッチデザイナーかなんかで作ってあって、ミラーボールの面が個別に飛び出したり引っ込んだりするものだった。この映像は前座の人にも使われていたが加工の仕方が違った。前座の人の時はカラフルに色収差を交えて。atomtm&tobiasではモノクロにしてストロボ的に断片的に。

リアルタイムものの演出ではもう一つあって、多量の粒がある一点を追いかけるものがそれ。

maxmspのjitterのチュートリアルでよく見るやつ。しかしmaxmspを使っているかというとどうだろう。同じことは別のソフトでもできると思う。

見え方としては飛び回る鳥の群れを遠くから見ている感じ。

それがキューブの内側で収まるように飛び回っていて、キューブの面に当たると面の形に広がって、また他の点群に戻っていったり。

リアルタイムで生成されていた3d映像は多分そのくらいで、多くの映像はあらかじめレンダリングされたものを2次元的にその場で加工していたのだと思う。

それは現在のあるべきdjとしては最高水準のものかもしれない。

vjはここ7年くらいでリアルタイム生成に傾いているがそれ以前はあらかじめ作ってきた映像を切り替えるというスタイルが主流でありそっちの方が面白かった。

リアルタイムのvjがそうではない映像に比べて優れているのは全く同じ画像を見せる瞬間がほぼ全くないというただ一点に尽きるのであらかじめ作られた映像の方が面白いのはある意味当然と言える。

リアルタイムはマシンのgpu的スペック以上のものは作れないが、プリレンダの映像はそれに加えてcpuの限界まで作れる上にレンダリング時間はそれほど気にしなくて済むからだ。

作業時間の制約がある点では変わりがないがマシンスペックの制約がかなりゆるくなるのでクオリティはだいぶ違う。

ハイエンド系のゲームと映画では映画の方がクオリティが高いのだが、リアルタイムとプリレンダの関係はそれと全く同じ。

というか原理が同じ。

で、今回のvjにもそういうものがちょいちょい含まれていた。

累々と続く山脈を上空から舐めていると思ったら山脈が形をうねうねと変形している映像があった。もちろんcgなのだがテクスチャとかちゃんと貼られている上にモノクロなのでリアルに見える。

本物の山脈みたいなのに本物ではありえないようなぐねぐねとした動きがあるので脳がいい感じに理解を間違う。

たぶんhoudiniのheightFieldとか使っているんだと思う。

それとか、人の顔を横から眺めていると思ったらその顔が真ん中から綺麗に分裂するものとか。

あとクリスカニンガムのラバージョニーのような、人間だったものがうごめいているようなものとか。

他にもあったと思うが、途中から体力が尽きたのであまりおぼえていない。金曜の週末に体力が残っているわけがないだろう。

というかんじ。

vjに関してもまた観たいと思った。

彼らのホームページをというかyoutubeチャンネルを覗いてみたがあまり同じようなテイストのものは見つからなかった。ライヴで活きるアーティストなのかもしれない。

 

あと今回のライヴを再確認するためにatomtmで検索したらなんと当ブログがヒット。

これを読んでくれてる人はいいねの数から察するに片手で足りるほどだと思っていたのだが結構読まれているのだろうか?

あまりにも読者が少ないとブログがモチベーションによってフェードアウトしてしまうので足跡的なものを残してもらえると嬉しいです。

 

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