191123
plaid/vent
plaidは言わずと知れたアーティストなのでどういうアーティストかをここで詳細には説明しない。
90年代初頭から活動していること、warp所属のidmの重鎮であること、もともとブラックドックプロダクションズという3人組のアーティストのうち離反した二人がつくったユニットであること、そして今なおカリスマであること。これだけ分かっていれば後の説明は不要というもの。
そのプラッドが来日するというのなら行くだろう。
ただ、このアーティストは来日に変則的なところがあり、来日の情報が広く知れ渡らない場合が結構ある。
このクラスのアーティストであれば通常は来日する数ヶ月前に公知されチケットが売られて程なくソールドアウト、という流れを組むと思うが、ここ数年はそうではなく割とひっそりと公表される。
プラッドはwarpのアーティストなのでアルバムが出たときは、そのうち来日するだろうからどうせビートインク(日本でのディーラー。warpの本によるとビートインクはwarpの日本支部らしい)あたりが大々的に宣伝するだろう、と思った。
なのでちょいちょいビートインクのページをチェックしていたのだが一向に公表される気配がない。
代わりにwxaxrxpのイヴェント(warpのアーティストによるdjのイヴェント。超よかった)の情報をゲットできたりしたがプラッドの情報は全く来ない。
もしかして来日しないのか?とか思っていたところ、RAの人気イヴェントのリストの中にしれっとplaidの文字を発見。
ちょっと待とうか。
なんでこのクラスのアーティストをそんなにあっさりした紹介で済ましてしまうの。
もっと広く宣伝してよ。
数年前のcontactに来日したときそれで観れなかったんだけど。
まあどこでどう発表されようが知った以上に即買い以外の道はない。
そんなわけで来日の2週くらい前にチケットを買って、今日突撃してきた。
会場は安定のVENT。一時頃に着いたのでほぼ並ばずには入れた。
最初に演っていたのは知らないDJだったが見た目的にそこそこ年齢がいっている感じなのでベテランなのだと思う。
そのベテランのプレイは最初の方は結構だるかった。
ベースを鳴らさずにバスドラを4つ打ちで鳴らしている状況を長くキープしているので単調な印象があり退屈な感じだったので早く終わらないかなと思っていた。
が、ある時点でエイフェックスツインのサイロの曲をかけたあたりから風向きが変わった。
細かく展開を変えてベースをうまく鳴らしたりしてフロアは俄然盛り上がった。
単に曲が良かっただけかとも思ったが曲の展開も計算されたように進み全体的に目まぐるしく移り変わる音像がかっこ良かったので腕がいいのだと思う。これがあるからベテランとしてなお活動を続けていられるのだと思う。想像だけど。
演出として幾つか面白いものがあった。
アシッドサウンドは高音域の主張が強いので、徐々にリバーブをかけていく一方でハイハットを入れて混ぜていく。そうすると高音域でアシッドとハイハットが混ざって、そこでフェードすると綺麗に移り変わる。
それとスネアの代わりにアシッドサウンドを入れることでアップテンポ部分に特殊な音を感じさせたり、ベースに関してはバスドラのリリースタイム、あるいは短めのリリースで長いリバーブ、ベースで低音部を主張するとかあるいはベースが鳴り続けている間はバスドラを外しているとか。
そういう演出は参考になるので今度真似しよう。
締めはlusineの曲(多分)。
この人のdjを聴いていて思ったのだが、エイフェックスツインの曲はDJ向きではないと思っていたけれどやり方によってはかなりかっこよくなるらしい。ルークヴァイバート先生以外で使ってる人はあんまりいないけど。扱いが難しいのかもね。
で、そのベテランDJを讃える拍手の中でplaidが登場。
プラッドは二人組だが3人現れた。
3人のうち一人はバイオリンを持っている。
ゲストか?
当方は実はプラッドの二人の顔を知らないのでバイオリンの人が何者なのか、あるいはプラッドの片方なのかはわからなかったが多分ゲストなのだと思う。
ただバイオリンといっても聴こえてくる音は基本的に電子的なもので、バイオリンを弾いているのを見ていなかったならバイオリンが使われていると気づかないと思う。
稀にバイオリンの音が現れるがリバーブが深いのでクラシック的なバイオリンとは結構遠い。
ほかにもフィドル(同じ楽器の弾き方違い)として指ではじいたりするので音としてバイオリンが欲しいのではなく音をドライブするためのデバイスとしてバイオリンを使っているように見えた。
それと、プラッドのライヴでは毎回そうであるように今回もオーディオビジュアルのライヴらしいのだが、この人たちのオーディオビジュアルは一般に言うオーディオビジュアルとは若干違う。
それも悪い意味で違う。
通常のオーディオビジュアルとは音と映像の結びつきが緊密で、あの音が鳴ったからこの映像、この要素が絵として加わったからあの音が、みたいに音と映像が相互に依存しているものが多い。例えばミューテックでは映像付きのライヴは大体オーディオビジュアルで、そういうものがたくさん観られる。
一方でプラッドのものはオーディオビジュアルというよりVJで、音との関わりでいうなら、実は連動してます、ぐらいのものしか感じられなかった。
いちおう音一つ一つに反応している感じはあるのだが映像にグルーヴ感は特になく、連動性は感覚的にというよりプログラム的には実は連動している、ぐらいのものだった。
プラッドの作品にgreedy babyと言うオーディオビジュアル作品があるのだがこの半分以上はオーディオビジュアルな作品だった。(特にsuperpositionという曲は素晴らしい)
が、あれと同じレベルのものをライヴで求めてはいけないらしい。オーディオビジュアルとしてのプラッドはかなり微妙だと思う。
ただ一つだけ弁護をすると、映像の使い方が少し面白かった。
通常はスクリーンいっぱいに一つの映像を流すのが一般的だが彼らはスクリーンを縦に4つに割り、四つの縦に伸びた帯状のスクリーンに見立てた一つの映像を四つに分けられた映像として個別に動いたり連動したりしていた。
たとえば左端とそのすぐ隣の映像は空間的に別の扱いになっていたかと思えば、別の時には四つのスクリーンが不連続的につながった映像として振舞ったり。
映像として面白い要素はそのくらいだった。
一方で音の空間的な扱いはすごくうまかった。
彼らの音楽は音響的に完璧で、手前から聴かせたい音は手前から、奥から聴かせたい音は奥から聴こえてくる。
音は固定された位置からだけではなく移動すらする。
右のほうで聴こえた音が壁に反射して左に飛んでいく感じとか、手前で鳴った音が奥のほうに響いていったり。
ハイハットは緻密に鳴っていてもリバーブはほとんど効いていないにもかかわらず意識の前面には迫ってこない何気なさを保っていたり。
音で空間を満たしているみたい。
ローパスで削った丸い音が16分刻みで鳴る中に鋭い金属質の音が壁に跳ね返るように響くとか。
そういう、音が空間を満たしている感じはライヴが始まったあたりからずっと続いた。
たまに高音が響きすぎて耳が痛くなるときもあったが、音はスピーカーからというより空間全体からなっているように思えた。
いい意味でサウンドスケープ的な色合いが強い。
この人たちはスクリーンで映像を使うよりも音で空間をつくったほうがいい。
演奏された曲は主に新しいアルバムからで、聴き覚えのあるイントロが鳴るとフロアが湧いた。
音楽に関してはやはりプラッドなのでめっちゃよかった。
彼らの音楽は緻密なドラムと不穏なメロディが特徴的だと思うが、ライヴで聴くとドラムはさらに緻密なので旋律音がなくても聴いていられる。
音源でも十分に緻密なのだがライヴだとその緻密さが一層際立つ。
ライヴのある部分では2分以上同じリズムパターンが繰り返された時があったが全く怠くならなかった。
他のアーティストがそういうことをやったならば、どうしよう別のフロア行ったほうがいい?みたいになるのだがプラッドにそういうのはない。
そこにメロディアスな音がかぶさってきたのだが、ただかぶさってくるというより、上に述べたように空間を満たすようにかぶさってくる。
こういうドラムの緻密さと空間を満たすメロディはプラッド以外では滅多に感じることができない。
彼らのアルバムは何度となく聴いたが、今回のライヴのような空間性と緻密性は感じたことがない。
つまり、彼らの音はアルバムに収まり切っていない。
ライヴの空間でやっと姿を表す。
初期のブレイクビーツ色が強いプラッドもいいけれど、ここ数年のサウンドスケープ的なプラッドもかなりいい。
そういうキラキラした音の中で終幕。
万雷の拍手で称えられた。
でもアンコールは無し。間髪入れずに次のDJが。
クラブだとこういうのが残念だと思う。
unitとかwwwとかだとやってくれてたのに。
次のDJは普通にかっこよかったのだが音が妙に平面的だったり表面的だったり感じた。
が、直前がプラッドなので、まあ、それは仕方ない。
普通にこの音を求めてクラブに来る人もいそうなのだし名前をチェックしようとしたが無理だった。
なぜならここはVENTだから。
フライヤーを見ればわかるのかもしれないが見ていない。そもそも当方はプラッドの名前以外は確認していないのだ。
タイムテーブルを公表しないという方針なのだと思うが、DJのためにも名前ぐらい張り出してもいいと思う。
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