用語を三つに分けておきます。全剃毛はドナー部をまるごと刈る方法。部分刈りは、細い横線や上の髪に隠れる箱の形で一部だけを刈る方法。完全無剃毛は、どこも刈らずに既存の髪を残したまま採取する方法。呼び名は各所で違いますが、この三つで整理できます。
部分刈りの定義には、実は採取範囲の条件が含まれています。刈った部分だけが露出する、ということは、採取できるのも刈った部分だけということです。残りの領域は長い髪に覆われていて、手が入りません。定義を素直に読むとそうなるのですが、説明されるときはたいてい「隠れる」という結果のほうだけが語られます。
ここから帰結が出てきます。同じ本数を採るなら、狭い範囲から採るということです。ドナー部全体ではなく、その一部分から。つまり、その一部分の密度が集中して下がります。
分布が問題になるのは、ドナーが有限で再生しないからです。広い範囲から均等に採れば、目に見えて薄くはなりにくい。同じ本数を細い帯から採れば、その帯はかなり薄くなり、周囲は手つかずのまま残ります。取り出した総量は同じで、残されたドナー部の状態が違う——という結果になります。
完全無剃毛は、定義上この制約から外れます。採取範囲が「刈った場所」に依存しないからです。線も箱も作らずドナー部全体から分散して採れて、その間ずっと見た目は変わりません。ただし髪が残っている状態で作業するぶん時間がかかり、術者の負担も大きいので、対応できるかはクリニックによって変わります。
というわけで、診察では二つを分けて聞いてみてください。「来週ドナー部は見えますか」と「ドナー部のどの範囲から、どのくらい均等に採りますか」。前者は部分刈りが答えるために作られた質問で、後者はそれとは別の質問です。両方聞いて初めて、終わったあとの状態が見えてきます。
ひと目で比較
| 用語 | 刈る範囲 | 採取できる範囲 | 分布 |
|---|---|---|---|
| 全剃毛 | ドナー部全体 | 全体 | 均等にできる |
| 部分刈り | 線・箱の内側 | 刈った部分のみ | 狭い帯に集中 |
| 完全無剃毛 | 刈らない | 全体 | 均等にできる |
よくある質問
Q. 部分刈りは隠れるのだから問題ないのでは。
A. 隠れるという点では有効です。別の論点として、採取が刈った部分に限られるため、同じ本数をより狭い範囲から採ることになります。
Q. 完全無剃毛は誰でもできますか。
A. 髪の長さやドナーの状態など個別の所見によりますし、施術する側の負担も大きい方法です。
Q. 均等に採るとなぜよいのですか。
A. ドナーは有限で再生しないため、広い範囲から均等に採るほうが薄さが目立ちにくく、残る状態も変わります。
