ドンへ side

『何だよ、お前。あのバスキング、知らなかったの？』

休み明け。学校で顔をあわせた、ヒョクチェに呆れられた。チョ・ギュヒョンが加入してから。ジョンウン先輩は、キュヒョンとの練習にかかりっきりで。バンドとしてのステージもまだだった。前みたいに。漢江でギター弾いたりしていたとき。SNSに拡散された動画で。先輩が。キュヒョンとふたりで、バスキングをやったことを知った

もちろん。告知もしてなければ、名前も出してない。ふたりとも、キャップにサングラス姿で。でも。先輩の、特徴のある声は。すぐにわかるし、話題になった

特に。中盤でうたった。日本のバンドのカバーが人気で。ピアノとギターだけってゆーアレンジが、ジョンウン先輩の声をひき立てていた

知らされていなかったことも、悔しかったけど...俺...入る隙ないんじゃ...それだけ。ふたりとも、完ぺきだったし。かっこよかった

『お、ドンへ』

ヒョン。ジョンウン先輩から。声をかけられた

『そろそろ。三人でステージやろう』

あいつ、主だった曲はおぼえたから。あ...うん...曖昧な返事しかできない自分に、嫌気がさしたけど...久しぶりのステージなのに。待ちに待ったステージなのに。こころは晴れなかった

《つづく》

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