ヒョクチェ side



『戸締り、忘れないようにな』


うん。気をつけて行くんだぞ。うん。ヒョクもね。洗い物をしているドンへに、声をかけた


やっぱり。落ちこんでるみたいだったから。しばらく、少し早く帰ったり。かまったりしてた


アパートなり戸建てなり。家を買うってのは先延ばしになるけど。ドンへひとりくらい、養えないわけじゃないし。いまは俺に定収入があるから。焦んなくてもいーんじゃないかなって。思ってたけど


自分で、短期のアルバイトを見つけて。行くようになった。今回は、展覧会のスタッフで。毎日でもないし。時間もきっちりしてるし。待ち合わせて帰ったり。それはそれで新鮮だ


節約のためにって、弁当をつくることもあって。ついでに俺にも持たせてくれる。チュモッパとケランマリとか。昨日の残りとか。簡単なものだけど


コンビニでラーメンを買ってきて。出来上がりを待ってる間に、弁当を開けた


『お。うまそうなもん、食ってんじゃん』


あ...弁当箱から。チュモッパがひとつ消える


『部長!』


いいだろ。ひとつくらい。キム部長が。咀嚼しながら、ケランマリもつまみあげる。ちょっと!


『うまいな。お前、自分で作ってんの?』


まさか。だよなぁ...部長...あ、そうだ、そうだ


『近いうち、メシでも行こうぜ』


え!部長とですか!何だよ。不服か。不服は...ないことはないですけど...でさ


『一緒に住んでるかわいい子も、連れてこいよ』


んぐっ...げほ...チュモッパ、詰まらすとこだった...


『な、な、な、何で...』


『自分でつくった弁当じゃないなら。恋人しかいねぇだろ』


いや...そーじゃなくて...


『いつも遅くまでこき使ってるからさ。感謝と慰労よ』


いや...そーでもなくて...


『んじゃ、よろしく』


え!ぶ、部長...はぁ...ほんとに嵐みたいなひとだ...


でも...ほんとに...それだけなんだろーか...


不安しかない...



《つづく》



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※きのーの最終更新です