バックパッカーの様なことをして。いろんな国を渡り歩いた


《報告義務があるから》


仲介してくれたひとから。父の会社は人手に渡り。他の事業や財産も、泡沫の如く散ったそうだ


後のことは知らない



【ウォン。早いな】


先輩のバーテンに声をかけられる


【あのカクテル、教えてもらおうと思って】


あぁ。わかった。流れついたのは、遠く、西の端の小さな町で。たまたま入ったバーで、気に入られて。働くことになった。たまたまじゃないな。なんとなく呼ばれた気がした。バーの名前が《Last Resort》だったから


生まれつき浅黒い、濃い顔が功を奏して。英語を話していれば、アジア系には見られない。バーテンの真似事をしながら。メジャーなカクテルくらいなら、客に出せるようになった



【見ない顔だね】


訛りの強い英語。それよりも。その声...ひとを揶揄うような...


『お前...』


つい母国語が出た。数ヶ月話していなかった。言葉が


『何だ。ウリナラか』


人懐っこい笑顔。白い肌に派手な柄の解禁シャツを着て


『オレンジジュース』


ちゃんと絞ったやつね。戸惑いながらも、オレンジを半分にカットして。ハンドジューサーに挟んで絞る。その腕をすっとなぞる指...


『ねぇ』


俺のこと、抱いてみない?


『もう一回』


きれいな二重の目が。ぐにゃりと歪んだ



《完》


※シウォンとゆーとついセレブにしがちなので、セレブじゃないシウォンを書いてみたい←

※本日のラインナップ