『ぁ...だめ...シウォ...』


え...いま...俺の名前、呼んだ...?名前、教えたっけ...こいつの名前、聞いたっけ...


何回出したかわからなぃ。我に還ると、そいつはぐったりと横たわったいて


『おぃ!しっかりしろ!』


身体を強請るとかすかに呻き声が聞こえた。いつのまにか俺のシャツで目隠しまでして。俺がやったのか。自分でしたのか。覚えてない。シャツをはずして頬を叩く。気を失ってるだけか...息してるもんな...


目元に涙の跡があった。煽られるまま、激情をぶつけてしまった。熱に浮かされた様に...さすがにくらくらする。タオルをお湯で濡らして絞って。身体を拭く。至る所に残る痣の様な痕と引っかき傷と。吸った痕ではなく、指の痕だと気づいて。我ながら引いた


顔も拭いてやると。子どもの様に顔をしかめて。イヤイヤと首を振る。仰向けに寝かせて。ブランケットをかけた。しばらく側にいて。呼吸と脈が落ち着くのを待った


大丈夫かな...とりあえずシャワーを浴びてこよう。後で目が覚めたら。こいつも浴びさせて。出血の手当てをしてやりたいし


冷蔵庫に水があったから、枕元に置いて。俺も一本飲み干した。熱いシャワーを浴びて。タオルを巻いてバスルームから出ると


え...ベッドからそいつの姿が消えていた。ブランケットはめくられたままで。触ると、確かにぬくもりが残っていた。服も靴も。水もない


気がついて。慌てて出ていったのか...

きついはずなのに...


俺が...遊ばれたのか...


それとも


俺に...ドン引きしたのか...



それから。店でそいつを見かけることはなかった



またどこかで。ああして誰かを誘ってるんだろうか...




薄れていく感覚を

咀嚼する様に




思い出でもいい

そう閉じ込めようとしたとき




思わぬところから。現実を突きつけられることになる



《つづく》


※本日のラインナップ